079 ステータスとアーネスト
「休みの日にわざわざ来てもらって、ごめんなぁ」
「いいよ。休みの方が僕も落ち着いて操作できるし、昼食代も浮くからね」
今日は月末のマジカ支払いのため、トルトに店に来てもらっている。
少し早いタイミングではあるが、定休日でもないとゆっくり時間が取れないからだ。
だいぶレベルも上がって出来ることも増えているだろうし、落ち着いて話しながら今後の事を考えたい。
「それじゃあ、支払いから始めるよ」
「ああ、よろしく」
俺とトルトはセルフレジの前に立ち、マジカの支払いを始めた。
≪来月活動分のマジカを受領します≫
音声アナウンスが流れ、自動でレジのドロアーが開く。その上空にはいつもの、異空間のような穴が開いた。
そして六十万マジカが、穴の中に吸い込まれていく。
……十分稼いではいるんだけど、毎月大金が吸われていくのは緊張するな。
≪マジカの受領完了≫
≪いたりあ食堂ピコピコ 活動を継続します≫
無事に支払いが終わると、レジのモニターにリザルト画面が表示される。
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ダンジョンマスター:天地 洋
マスターレベル:51
ダンジョンレベル:23
店名/ダンジョン名:いたりあ食堂ピコピコ
この店/ダンジョンは、ダンジョンマスターの魔力により顕現・活動する。
店内において、一切の暴力は無効化する。
店内において、ダンジョンマスター及び来客に対して悪意・敵意を持つ存在は入店が拒否される。
店内で悪意・敵意を持った場合は、強制退場となる
店内において危険行為を行った場合は、速やかに無力化される。
マスターレベルは、レシピに登録されたメニュー数及び来客数に応じて上昇する。
ダンジョンレベルは、継続年数に応じて上昇する。
→【SLv.UP】スキル『バックヤードへの扉』(消費MP1/30分)を獲得しました。
→【DLv.UP】イサナ王国への扉(消費MP1/60分)を獲得しました。
→【DLv.UP】ドワーフの里への扉(消費MP1/60分)を獲得しました。
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「最近全然確認してなかったけど、だいぶレベル上がったなぁ」
「仕事の合間にやってると、疲れて読むの億劫だしねぇ」
正直、店の経営が安定してしまって、これといって変更することも無いんだよな。
バックヤードの消費MPがかなり減って、常時設置できる扉の枚数は増えたけど……これと言って設置する場所も増えないし。
「拡張画面もかなり項目が増えてるみたいだよ」
「どれどれ――」
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→箱庭拡張:3000万マジカ
フロア拡張に伴う活動必要マジカ:+1000万マジカ/月
→簡易店舗(箱庭)拡張:500万マジカ
→東屋(箱庭)拡張:200万マジカ
→トイレ(箱庭)拡張:100万マジカ
→花壇(箱庭)拡張:50万マジカ
→池(箱庭)拡張:50万マジカ
フロア拡張に伴う活動必要マジカ:+300万マジカ/月
→二階フロア拡張:500万マジカ
フロア拡張に伴う活動必要マジカ:+20万マジカ/月
→休憩所拡張:100万マジカ
→ダム拡張:20万マジカ
フロア拡張に伴う活動必要マジカ:+10万マジカ/月
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「箱庭ってなぁに? 桁が違い過ぎてコワっ……」
「うーん……ドワーフの里の、狩場みたいな場所が作れるのかも」
「いやぁ、作れたとして管理が無理だろう」
いよいよピコピコも食のテーマパーク化か!? って、言いたいところだけど。
今ぐらいの店の大きさが、身の丈に合ってて一番経営が安定するんだよ。
そんなに維持費のかからない二階席だって、拡張するかどうか。
商売は下手に手広くするものじゃない――と、元社畜は思う。
≪カランカラーン≫
「ん……あれ……?」
突然ドアベルが鳴り、定休日の店内に人が入ってきた。
客のいない店内を見渡して呆然と立ちすくむのは、風呂帰りのアーネスト。
彼の姿を見て、トルトが真っ先に声をあげる。
「げっ……なんでアーネストが……」
「どうしたんだ? 今日明日は定休日だけど」
「定休日? いつからそんなものが?」
「いや、ずっと前からあるから。アーネストの来る日がいつも違う曜日だっただけだよ」
「…………そうか……」
ぶっきらぼうなトルトの返答に、アーネストは思考の沈黙。
しばらくして納得した様子を見せたが、今度は困った様子で悩み始める。
「……もしかして、カルツォーネが欲しかった?」
「ああ」
食事に来たとき、アーネストは毎回カルツォーネをテイクアウトしていく。
そして休息と準備を終えた翌日から、下水道の壁画の研究に潜るというルーティーンになっている――と、以前トルトがぼやいていたな。
きっと何かの理由で予定がずれて、定休日に店に来てしまったのだろう。
「今はピザ生地が無いから用意できないけど、明日の朝でよければ作ろうか?」
「……そうしてもらえると、助かる」
「ええ……休みの日はちゃんと休んでよ、店長さん」
トルトに小言を言われながら、カルツォーネの注文伝票を書き始める。
伝票を書き込む俺の手元を見て、アーネストは他の料理も注文してきた。
「ついでに、何か野菜や果物もつけてくれ」
「構わないけど、珍しいな」
「……最近、余計に腹が減るんだ」
「もう! 店長さん、甘やかしちゃダメだって!」
「いいじゃないか、これも商売だよ」
書き終えた伝票をキッチンに貼る俺に、トルトは呆れながら恨み節を述べる。
「休日料金ってことで、倍の金額を請求するべきだと僕は思うね!」
「むっ……」
「それはさすがに悪いよ……そうだ!」
良い機会だし、下水道の壁画を見せてもらえないだろうか。
ラディルがアリエスと旅立ってから、俺にも何かできないかと色々考えていて――その一つに、壁画の確認がしたいと思っていた。
ゲームシナリオ的に重要な話のはずなんだけど、いまいち設定を憶えてないんだよな。
今後のためにも、アーネストの考えも含めて聞いておきたい。
「アーネストって下水道の壁画を研究してるんだろ? よかったら案内してくれよ」
「なんで?」
俺の提案に対して、思っていた以上に冷たく返される。
そんなに、触れてはいけない内容だっただろうか?
でも、これから世界が崩壊するかも、なんて言えるわけもないし――
「その……どんな研究してるんだろうって、純粋に興味があってぇ……なんか、スミマセン」
「ふぅん」
軽くあしらうような、ため息をもらすアーネスト。
「わかった。魔導学園の教授として、義務を果たそう」





