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「うむ、よく参られた。我こそはヴェッダーニア公爵である。我が一族の子が大変世話になったと聞く。すなわち、お客人、そなたも今日から我が一族の一員である! 己が家と思って、ゆるりと滞在されよ」
突然、一族の一員として迎えられ、握手でも交わすのかと思い宏一が手を差し出しかけた、その瞬間だった。
グワシッ、と筋骨隆々の体に抱きしめられた。
(く、苦しい……)
「お心遣いありがとうございます。ぐぇ……」
筋肉の中でもがいていると、ようやく解放された。
「おお、マリアベルよ。お主もよく帰ったなぁ。益々綺麗になったじゃないか!」
ヴェッダーニア公爵が両腕を広げる。
マリアは片膝をつき、静かに頭を垂れた。
「マリアベル・リヴァイア、ただいま戻りました」
「うんうん、よく戻った、よく戻った」
ヴェッダーニア公爵は何度も頷くと、一瞬だけマリアの父親へ視線を向けた。
まるで牽制するような眼差しだったが、何も言わず再び向き直る。
「全身全霊でユートを育ててくれたことは聞いている。本当に苦労をかけた。ヴェッダーニアの当主として、君の帰国を歓迎する」
「ありがとうございます……」
それでも、マリアの表情は最後まで硬いままだった。
「ユート兄ちゃん! 異世界のお話して!」
「えー、この前の冒険の話の続きがいい!」
待ちきれなかった二人の男の子が裕翔に飛びつく。
「わかった、わかった。でも、その前にちょっと休ませてくれ」
「お庭にお菓子用意してあるよ!」
「あるよー!」
「あなたたち、ユート様を困らせてはいけませんよ」
ヴェッダーニア夫人に促され、子どもたちは裕翔の手を引いて庭へ駆けていった。
「あいすまぬ。子どもらには礼儀を厳しく教えておく」
「いえいえ。子どもはあれくらい元気な方がいいですよ。仕事柄、病気や怪我をした子どもばかり診ていますから、元気な姿を見ると嬉しくなります」
「うむ。コーイチ殿は、あちらの世界で治癒師のような仕事をされているとユートから聞いている。今度ぜひ、うちの治癒師とも話をしてやってくれ。異界の知識を学びたいと頼まれておっての」
「それはぜひ! 私こそ学ばせていただきたいと思っていたんです!」
宏一のテンションは一気に上がった。
だが、その隣でマリアだけは静かなまま、自分の家族へ向き直る。
「父上、母上、兄上。ただいま帰りました」
マリアが深く頭を下げた。
しばしの静寂。
「家門の恥が、よくもおめおめと生きて戻ってこれたものだな」




