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十年間、異世界の女騎士に片思いしている33歳医師、告白の瞬間に勇者帰宅。  作者: 有栖賀馬頭(TL名義は朱里雀)


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「うむ、よく参られた。我こそはヴェッダーニア公爵である。我が一族の子が大変世話になったと聞く。すなわち、お客人、そなたも今日から我が一族の一員である! 己が家と思って、ゆるりと滞在されよ」


 突然、一族の一員として迎えられ、握手でも交わすのかと思い宏一が手を差し出しかけた、その瞬間だった。


 グワシッ、と筋骨隆々の体に抱きしめられた。

(く、苦しい……)


「お心遣いありがとうございます。ぐぇ……」

 筋肉の中でもがいていると、ようやく解放された。


「おお、マリアベルよ。お主もよく帰ったなぁ。益々綺麗になったじゃないか!」

 ヴェッダーニア公爵が両腕を広げる。

 マリアは片膝をつき、静かに頭を垂れた。


「マリアベル・リヴァイア、ただいま戻りました」

「うんうん、よく戻った、よく戻った」

 ヴェッダーニア公爵は何度も頷くと、一瞬だけマリアの父親へ視線を向けた。

 まるで牽制するような眼差しだったが、何も言わず再び向き直る。


「全身全霊でユートを育ててくれたことは聞いている。本当に苦労をかけた。ヴェッダーニアの当主として、君の帰国を歓迎する」

「ありがとうございます……」

 それでも、マリアの表情は最後まで硬いままだった。


「ユート兄ちゃん! 異世界のお話して!」

「えー、この前の冒険の話の続きがいい!」

 待ちきれなかった二人の男の子が裕翔に飛びつく。


「わかった、わかった。でも、その前にちょっと休ませてくれ」

「お庭にお菓子用意してあるよ!」

「あるよー!」

「あなたたち、ユート様を困らせてはいけませんよ」

 ヴェッダーニア夫人に促され、子どもたちは裕翔の手を引いて庭へ駆けていった。


「あいすまぬ。子どもらには礼儀を厳しく教えておく」

「いえいえ。子どもはあれくらい元気な方がいいですよ。仕事柄、病気や怪我をした子どもばかり診ていますから、元気な姿を見ると嬉しくなります」

「うむ。コーイチ殿は、あちらの世界で治癒師のような仕事をされているとユートから聞いている。今度ぜひ、うちの治癒師とも話をしてやってくれ。異界の知識を学びたいと頼まれておっての」

「それはぜひ! 私こそ学ばせていただきたいと思っていたんです!」


 宏一のテンションは一気に上がった。

 だが、その隣でマリアだけは静かなまま、自分の家族へ向き直る。


「父上、母上、兄上。ただいま帰りました」

 マリアが深く頭を下げた。

 しばしの静寂。



「家門の恥が、よくもおめおめと生きて戻ってこれたものだな」



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