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十年間、異世界の女騎士に片思いしている33歳医師、告白の瞬間に勇者帰宅。  作者: 有栖賀馬頭(TL名義は朱里雀)


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3


「おい、あんたっ!!!」

 腸が煮えくり返るあまり、咄嗟に言葉が出てこず、二の句が継げない。

 思わずマリアを引き寄せようと手を伸ばしたが、マリアは一歩下がって、それを避けた。


「いいんだ、コーイチ。父上のおっしゃることは、ごもっともだ」

「そんなわけあるか! マリアがどれほど、どれほどっ!」


 マリアが護るはずだった裕翔の母親は、死の間際、マリアと裕翔を地球へ飛ばした。

 裕翔の母親が魔族に害されたり、人質にされたりしないよう護る。それが本来のマリアの任務だったにも関わらず。


 そうだ、マリアは任務に失敗した。


 宏一の家へ転移してきたマリアは、無傷の裕翔とは対照的に、全身血まみれで傷だらけだった。

 それでも、剣を構え、強い意志を宿した瞳で前を見据えていた。


 そして、帰る術もない異世界で、たった一人、裕翔を育て続けた。


 どうして責められる。


「コーイチ殿、どうか落ち着かれよ。リヴァイア家は誇り高き騎士の家系。護るべき者を護れなかった以上、大手を振って歓迎できぬのは、仕方なきこと」

 諭してきたヴェッダーニア公爵を、怒鳴り返しかけて踏みとどまる。


 マリアが、小さく肩を震わせていたからだ。

 それに、周りが見えなくなるほど若くもない。

 それでも悔しくて、拳を強く握り締めた。


「大声を出してしまい、申し訳ありません。ですが――」

 宏一はマリアの父を真っ直ぐ見据えた。


「マリア……いえ、お嬢さんは、地球で立派に裕翔を養い、育て、教え導きました。そのうえ、私へのささやかな恩返しだと言って、生活が楽ではない中、毎日温かい食事を作ってくれていました」


 一度だけ深く息を吸う。

 礼儀だけは崩すまいと努めながらも、怒りで拳は震えていた。


「私は、お嬢さんほど素晴らしい女性をほかに知りません」


 しばしの沈黙。

 やがて、マリアの父は静かに口を開いた。


「……娘は赦されぬ失敗をした。それでも、そちらの世界で少しでも役に立てたのならば、何よりだ」

 マリアの父は静かに涙を流していた。

 娘が帰ってきて嬉しくないわけではないのだ。

 それでも、抱き締めようとはしない。

 宏一には、その価値観だけは理解できなかった。


 異世界に来たのだと、宏一は改めて強く感じた。


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