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十年間、異世界の女騎士に片思いしている33歳医師、告白の瞬間に勇者帰宅。  作者: 有栖賀馬頭(TL名義は朱里雀)


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【叶わぬ】異世界医療無双。〜異世界転移した俺、馬鹿にしてきたヒールしか使えない治癒士たちに本当の「治療」ってやつを教えてやるよ〜【夢】


 世界の境目にある長い次元断層を抜けると、異世界であった。


(川端康成よりもだいぶ遠いところに来てしまったな……。うぷ、吐きそう)


 次元間移動は最悪だった。

 裕翔が人体科学者レストレーという、なんだか物騒な渾名を持つ男と開発した次元服。

 宇宙服のようなそれのおかげで、一生涯祖国の地を踏めなかったはずのマリアは、あっさりと帰ってくることができた。


 そして今、車酔いならぬ次元間移動酔いの酷い宏一の背中を擦ってくれている。


「吐いてしまった方が楽じゃないか? どれ、口を開けろ。指を突っ込んでやる」

 医師としても、恋する男としても到底承服できない、軍隊式らしき優しさに宏一は手で×を作ってチラリとマリアを見た。


(あ……)

 マリアの顔色もまた悪かった。


 それでようやく気づく。

 ここは、宏一の家と座標が同じ場所。つまり、マリアにとってここは、この世界で最後にいたところ。

 護るはずだった裕翔の母や仲間を亡くした場所なのだ。

 今はしっかり掃除されていて、血の跡など何もない綺麗な屋敷に見えるが、それでもきっと思い出すのだ。  

 昔、酒に酔ったマリアが仲間の死体を踏み越えたと譫言のように言っていた覚えがある。


(しっかりしろよ、俺!)

 マリアに心配を掛けている場合ではないだろうと、せり上がってきている胃液を飲み込もうとした。


「Kvaみ루Tëあ」

 裕翔が宏一とマリアに向かい、呪文を言った。

 すーーーーーー、と胃が落ち着き、はーーーーーと息を吐く。

「助かった、ありがとう。これで俺がこの世界を汚染する心配はなくなったんだよな?」

「うん、回復魔法と清浄魔法をかけたから大丈夫ですよ」


 沖縄旅行に誘うかのごとく軽い感じで異世界旅行、及び、異世界帰省に誘ってきた裕翔に、宏一は当初、医師として反対した。

 未知の病原体を異世界に持ち込んだり、逆にかかったりするのではと。

 だが、裕翔の魔法でどうにでもできてしまうようだ。


 つまり、異世界に旅行に行くと決まってからずっと妄想していた『異世界医療無双。〜異世界転移した俺、馬鹿にしてきたヒールしか使えない治癒士たちに本当の「治療」ってやつを教えてやるよ〜』は、現実になることはないのだ。


「ユート、Fzらvëナ빛qAzel루もしてやってくれ」

 裕翔の前なのでマリアが務めて平気そうな顔をしている。

「ああ、そうでしたね」

(Fzらvëナ빛qAzel루ってなんだ、一体何をされるんだ)

 身構えていると、再びユートが宏一に魔法を掛けた。

 ふわり、と体が内側から光る。


「よし。これで宏一さんもうちの国の言葉が話せるようになりましたよ」

「そうか、ありがとう。助かる」

(この魔法さえあれば、センターのリスニング、死ぬ気でやらずに済んだんだろうな……)


 今度は何かが変わったという感覚は全くなかったが、それでも裕翔が出来たと言ったのなら出来たのだろう。

 マリアと裕翔が地球に転移してきたときも、魔力が込められたバッテリーのような水晶玉を用いて、同じ魔法を使っていたのだから。


 あのときは不思議な玉に頼らなければ出来なかった魔法も、こっちの世界ではちょちょいのちょいのようだ。


「さてと、宏一さん。折角こっちに来たんで、乗りましょう、竜!」


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