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「お前がそんな辛気臭い顔したらマリアが安心して送り出せないだろ? 俺がマリアを幸せにする! だから何の心配もしなくていい。しっかり、あっちで戦ってこい! 男と男の約束だ! ……でしたっけ?」
地球へ帰還した裕翔が、異世界の装備のまま古い日本家屋でじとーっと宏一を見ていた。
宏一は俯くしかできなかった。
一語一句、違っていない。
裕翔を送り出すとき、自分が口にした言葉だ。
(記憶力良すぎだろ……医学部に来てほしかった)
ついさっきまで、三人で涙が枯れるほど抱き合っていた。
なのに泣き止んだ途端、
「僕、ずっとマリアさんの唐揚げが恋しかったんだ」
と裕翔が可愛く甘えたものだから、マリアは任せろと、上機嫌で買い物へ飛び出していった。
――そして現在。
宏一は裕翔と膝を突き合わせ、説教を受けていた。
「僕が帰ってくる頃には結婚くらいしてるかなーって思ってたんですけどねぇ。あれぇ? 付き合ってすらいない感じですよねぇ?」
「いや、その……言おうとはしたんだぞ」
「それで?」
裕翔が旅立ってからしばらく、マリアは眠れず、食べられず、毎日顔色も悪かった。
そんな彼女に、自分の恋心をぶつけるのは違うと思った。
半年ほどして、ようやく笑えるようになった。
だから今度こそ。
そう思っていた。
だが――
「……無職で告白するのもどうかと思ってな」
宏一は病院で上司と衝突し、じわじわ追い詰められ、最後には職を失っていた。
裕翔が盛大なため息をつく。
「どうせ患者さんを庇って、真正面から理不尽な上司とぶつかったんでしょう?」
「……はい」
「もう三十三なんですから、根回しとか覚えてくださいよ」
「すみません」
「僕に謝られても」
裕翔に呆れたように笑われた。
「……まあ、いいです」
「いいのか?」
もっと怒られると思っていた。
異世界から来たマリアと付き合いたいのなら、いざというときしっかり養えるよう、もっとしっかりしろと言われる覚悟はできていた。
けれど裕翔は穏やかに笑うだけだった。
「あの、裕翔さん?」
その笑顔が妙に怖い。
そのときだった。
「ただいま! ユート、鶏肉いっぱい買ってきたからな! すぐ作るぞ!」
玄関から元気な声が響く。
マリアのエコバッグは食材でぱんぱんだった。
久しぶりの唐揚げだ。
加齢で胃が弱くなった宏一のため、最近は揚げ物を控えていた。
それでも今日は違う。
裕翔の帰還祝いなのだから。




