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十年間、異世界の女騎士に片思いしている33歳医師、告白の瞬間に勇者帰宅。  作者: 有栖賀馬頭(TL名義は朱里雀)


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7

「マリアベル・リヴァイア。遠く離れた異世界で、よくぞ国への忠義を果たした。お前の帰国を歓迎しよう」

 マリアが女王の御前で跪いている。

 式典用の真っ白な騎士服が、マリアの美貌をいっそう際立たせていた。


「感謝いたします」

 即位したばかりだという、裕翔と年齢の変わらない若い女王は、可愛らしい顔を引き締め、王としての威厳をもってマリアへ言葉を掛けていた。


「お前のこれまでの献身に報いたい。そこで、お前に騎士伯の称号を与える。また、魔眼のアルベルトを討ち果たした報奨金もある。受け取るがよい」

 ざわり、と謁見の間の空気が揺れた。

 居並ぶ臣下たちが、小声で何かを囁き合っている。


 あらかじめヴェッダーニア公爵から、おそらくこうなるだろうと聞かされていたが、女性が騎士伯に叙されるのは建国以来初めてらしい。

 マリアが静かに顔を上げた。


「陛下、恐れながら申し上げます。魔眼のアルベルトを討ったのは私一人の力ではございません。私は最後の一撃を与えただけです。先輩方が命を懸けて弱らせてくださらなければ、決して敵いませんでした。どうか報奨金は、あの戦いで命を落とした騎士たちのご家族へ、等しくお分けください」

 いかにもマリアらしい、欲のない願いだった。


「相分かった。お前の願い、聞き届けよう」

「ありがたき幸せ」


(……ああ、俺の番が来てしまう)


 緊張で心臓がうるさいほど鳴っている。

 誰かから表彰されるなど、医学生の頃、電車内で倒れた乗客を救護し、自治体から感謝状を受け取って以来だった。

 もっとも、その日は行方不明者を発見した功労犬も一緒に表彰され、宏一の存在感は見事にかき消されていたのだが。


 今日も同じだ。

 主役は美貌の女騎士マリアだ。


 裕翔に「向こうで偉い人に会うかもしれないから」と言われ、慌てて買った吊るしのスーツは明らかに場違いだが、気にする必要はない。

 犬が美女に変わっただけで、あのときと同じだ。誰も宏一など見ていないはず。

 そう思うと、緊張もいくぶん和らいだ。


「コーイチ・ハシモト殿。遠き異界より、よくぞ我が国へお越しくださった。我が国の勇者とその庇護者、ひいては我が国、そしてこの世界は、そなたに大きな恩義がある。心より歓迎する」

 宏一は深く一礼した。

 跪くべきかとも思ったが、これまたヴェッダーニア公爵から、自国の礼で構わないと教えられていたため、日本式の礼を選んだ。


「このたびは貴国へお招きいただき、誠にありがとうございます。私の世界にはないものばかりで、昨日から新しい発見の連続です。素晴らしい経験をさせていただいております」

 公爵に練習に付き合ってもらえて、本当に良かった。

 でなければ、今ごろ頭の中は真っ白だっただろう。


「それは何よりだ。ハシモト殿、そなたを本日より我が国の名誉市民とする。また、レイムンド外国人勲章を授けよう。どうか滞在の間、この国を心ゆくまで楽しんでいただきたい」


 女王の従者が赤いクッションを捧げ持ち、その上に載せられた金色の勲章を宏一の前へ差し出した。


「ありがとうございます。謹んでお受けいたします」


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