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「マリアベル・リヴァイア。遠く離れた異世界で、よくぞ国への忠義を果たした。お前の帰国を歓迎しよう」
マリアが女王の御前で跪いている。
式典用の真っ白な騎士服が、マリアの美貌をいっそう際立たせていた。
「感謝いたします」
即位したばかりだという、裕翔と年齢の変わらない若い女王は、可愛らしい顔を引き締め、王としての威厳をもってマリアへ言葉を掛けていた。
「お前のこれまでの献身に報いたい。そこで、お前に騎士伯の称号を与える。また、魔眼のアルベルトを討ち果たした報奨金もある。受け取るがよい」
ざわり、と謁見の間の空気が揺れた。
居並ぶ臣下たちが、小声で何かを囁き合っている。
あらかじめヴェッダーニア公爵から、おそらくこうなるだろうと聞かされていたが、女性が騎士伯に叙されるのは建国以来初めてらしい。
マリアが静かに顔を上げた。
「陛下、恐れながら申し上げます。魔眼のアルベルトを討ったのは私一人の力ではございません。私は最後の一撃を与えただけです。先輩方が命を懸けて弱らせてくださらなければ、決して敵いませんでした。どうか報奨金は、あの戦いで命を落とした騎士たちのご家族へ、等しくお分けください」
いかにもマリアらしい、欲のない願いだった。
「相分かった。お前の願い、聞き届けよう」
「ありがたき幸せ」
(……ああ、俺の番が来てしまう)
緊張で心臓がうるさいほど鳴っている。
誰かから表彰されるなど、医学生の頃、電車内で倒れた乗客を救護し、自治体から感謝状を受け取って以来だった。
もっとも、その日は行方不明者を発見した功労犬も一緒に表彰され、宏一の存在感は見事にかき消されていたのだが。
今日も同じだ。
主役は美貌の女騎士マリアだ。
裕翔に「向こうで偉い人に会うかもしれないから」と言われ、慌てて買った吊るしのスーツは明らかに場違いだが、気にする必要はない。
犬が美女に変わっただけで、あのときと同じだ。誰も宏一など見ていないはず。
そう思うと、緊張もいくぶん和らいだ。
「コーイチ・ハシモト殿。遠き異界より、よくぞ我が国へお越しくださった。我が国の勇者とその庇護者、ひいては我が国、そしてこの世界は、そなたに大きな恩義がある。心より歓迎する」
宏一は深く一礼した。
跪くべきかとも思ったが、これまたヴェッダーニア公爵から、自国の礼で構わないと教えられていたため、日本式の礼を選んだ。
「このたびは貴国へお招きいただき、誠にありがとうございます。私の世界にはないものばかりで、昨日から新しい発見の連続です。素晴らしい経験をさせていただいております」
公爵に練習に付き合ってもらえて、本当に良かった。
でなければ、今ごろ頭の中は真っ白だっただろう。
「それは何よりだ。ハシモト殿、そなたを本日より我が国の名誉市民とする。また、レイムンド外国人勲章を授けよう。どうか滞在の間、この国を心ゆくまで楽しんでいただきたい」
女王の従者が赤いクッションを捧げ持ち、その上に載せられた金色の勲章を宏一の前へ差し出した。
「ありがとうございます。謹んでお受けいたします」




