3.6話
町民A視点
確か、聖女様が召喚されたと号外が出たはずだ。城下ではパーティーをしたり、凱パレードをしたりで大忙しだったようだが、城下に住まない町民達には関係のない事だ。
だが、聖女様がいれば暮らしが良くなるかもしれない。
そう、思っていた。
「号外!ごうがーい!」
こんな辺境にまで、新聞が来ることは珍しい。
それほどまでに大変な何かがあったのかと見てみれば、聖女様が城中の人を殺したと書かれている。
隣で覗き込んでいた奥さんが膝から崩れ落ちる。そういえば、この人が息子は近衛兵になったと、嬉しそうに話していたことを思い出す。
昔、キャッチボールをして遊んだ子。大きくなって、必ずお母さんを守るのだと言っていた幼い子。
違う。違う。違う。聖女とは、救いを与えるものではなかったのか?泣いている人がいる。苦しむ人がいる。
それは違う。
領主様は確か、第四王女殿下の幼馴染だったはずだ。呆然としながら車に乗って行ってしまわれた。
これが、許されていいはずがない。
そのはずなのに、聖女の粛清と銘打って、王族派が勢いを増したと聞いた。
領主様は貴族派として王族派と対立し、暗殺されてしまわれた。第四王女殿下の命の使われ方に納得がいかなかったのだろう。
他星と戦争になり、村の人の大半が死んだ。隣の奥さんも、畑を手伝ってくれていた子供達も、この街のマドンナだった少女も。
いまだに、自分を呼ぶ声がする。
「永さん、お裾分けはいかがかしら?」
「永おじさん!これってなんていうの?」
「永さん、いつも美味しい野菜をありがとう」
全ては聖女召喚から、いや、聖女の粛清から始まった。あそこから全てが狂っていった。
これだけの命を踏みつけて何がしたいのか分からない。
嫌いだ。大嫌いだ。
それなのに、貴族様達は聖女を悪にしない。
信じられない。嫌いだ。嫌だ。
だから、どこか遠くで死んでしまったと聞いた時口の中でつぶやいた。
「ざまぁみろ」
つぶやいた言葉は空気に溶けて、男は剣を握って立ち上がった。




