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3.1話

人が死にます

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第一王子視点


 してはならない事をしてしまった。

 例え星の有事だとしても異世界人の召喚には面倒な手続きが必要だというのに、見栄だけで異世界人を召喚し続けた。


 第一王子、ユーリスの母親は異世界人で、聖女と呼ばれる存在だった。苦しくても気丈に振る舞う人だった。体は健康体そのもの。言い方は悪いが幾つの命を産もうともその異世界からの渡り人の体は丈夫で、壊れようのないものだった。


 母親と父上は寿命が違った。母親がお隠れになった時、父上はそれは酷く落ち込んだ。多分愛し合っていたのだと思う。恋のような感情はなくとも家族や友人に向ける愛はあったと思う。


 でも、ユーリスは母親の気持ちを聞いていた。自分のいた場所とは違う星を眺めて、泣く姿を見ていた。


「帰りたい」「あの人に会いたい」「お別れを言いたい」


 自分達まで産んでしまって、完全に戻る気はないのだろう。それでも帰りたいのだと啜り泣く姿を見ていた。


 弱い人だった。弱さが罪とは思わない。けど、強い人ばかりが周りにいた幼い頃は、両親や大人が人なのだという当たり前すら理解出来ずに泣いていた。


 自分では足りないのだと。



「次の聖女が終わりを告げることを感じるの。お願いよユーリス。聖女になんて頼らなくても、この星は大丈夫よ。私が祝福をあげるから」



 そう言って母親は身体の骨も魂すら明け渡して、星に加護をかけた。母親の慈愛は自分達にも、次の聖女にも向いていた。


 兄弟の中で母親の1番近くにいたのがユーリスだ。だから、1番人に寄ってしまった。王になるには軟弱すぎた。優しすぎた。正しさと道徳心だけを教え込まれた。自分の罪を呑み込んで、清廉潔白だという面をして人を導くことが出来なかった。


 王族としての覚悟なんて芽生えないうちに、叔父上が聖女を召喚してしまった。

 

 本来ならば聖女すらも操って罪に塗れて国のために全てを捧げるのがユーリスの産まれた意味だ。だが、ユーリスはそこに生きる意味を見出せなかった。


 終わりを告げる聖女なんて言うからどんな化け物が出てくるのかと思えば、普通の女の子だった。綺麗で、優秀な。魔法陣を破ってでも、魔法を打ち込んででも、止めなければならない事だった。

 自分だけはその兆候に気がつけたはずなのに、止められなかった。

 3人が話している姿も、急に増えた魔道士も、見覚えのある魔法陣も。気がつけたはずだった。

 弟妹達に気付く事は無理だ。あの子達は、父上が政治から遠ざけた。何も気がつく事はできない。


 聖女はとても綺麗で、寂しそうに笑うひと。それが母上と重なってしまって、いつか必ず外に出そうと思った。今代聖女にはまだ、ここに縛り付けるものはないから。


 やれる限りのことをした。できる限りの助力をした。それでも、分かってしまった。聖女は救いを求めていない。求めているのは側にいるべき人達だけ。彼女の深くを知ってあげられる理解者だけ。


 そして、ユーリスはそれにはなれない。そうなるには、彼女に母親がダブらないようにするしかない。彼女を通して母親を見ているユーリスは所詮、彼女の求めるものになる資格すらない。



 ルーカス様と連絡が取れた。彼女の弟妹達は儚くなったそうだ。その結末に、ユーリスですら拳を握りしめたのだ。きっと彼女はその拳は振り上げ、全てに向かって降すだろう。


 この城にいる弟王子や王女達は死ぬ。彼女に殺される。それは仕方のない事だ。その恨みは見当違いなものではないから。


 死にたくはない。けど、母親に似た彼女に死んでほしくない。苦しんでほしくない。きっと、言葉だけじゃ足りないから。

 母親の孤独を癒せなかったように、彼女の寂しさを埋める事はできないから。だからユーリスは命を使った。己の持てる全てを使っても届かなければ、仕方ながないと思えるから。


 聖女の暖かさと、微睡の中で祈った。


 どうか、生きてほしい。

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