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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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同期飲み会

「あれ〜? なんか成瀬元気なくない?」

阿部が顔を覗き込んでくる。


「ねぇ高橋〜、成瀬どうしたの?」

「ああ、失恋したみたいな感じ」

「え! 佐伯さんと!?」

「いや新人の子と」


 今日は三人で久しぶりに居酒屋に飲みに来ていた。

落ち込んでいる俺を高橋が気遣ってくれたのは言うまでもない。


「いや、その言い方やめて……なんか浮気してるみたいじゃん」

とりあえず否定する。


 高橋が店員にメニューを注文し話し出す。

「あの新人指導の奴が他の営業所に異動になって寂しがってるんだよ」

「ああ! あの問題児……!

成瀬、大変だったろう?」


「そんなことなかったよ、俺と違う考えをいっぱい持ってて逆に勉強になった」

力なく笑う。


 高橋もそれに続く。

「コスパタイパ重視だったけど、うちじゃなくもっと厳しい営業所に行きたいって言い出してさ。

うちにいた方がコスパ良かったろうに……」


「へえ……変わったんだな」

「それに本人が気づいてるかはわからないけど」


 ビールを飲みながら阿部が笑いながら話し出す。

「あいつ、新人オリエンテーションの時に凄くて、

『何のために仕事をするか』を一人一人言わせた時に、

『仕事は金を稼ぐ手段でしかない』って堂々と」


 想像してつい笑みがこぼれる。

「あいつなら言いそう……。

しかも、他の奴が言わないようなことを敢えて言って目立とうとするタイプじゃないから本音なんだろうな……」


 阿部がニヤけながらこっちを見てくる。

「そんな凄い新人を成瀬は手なづけるなんて、

仕事デキる奴は違うね〜」


 だが高橋が間髪入れず言う。

「この落ち込み見てみい?

こりゃ手なづけたんじゃなく、手なづけ()()()んじゃない?」


「ハハ……! 確かに! 大型新人に完敗かぁ〜」

阿部が嬉しそうに笑っている。


「次はどこの営業所に行くんだろうな〜……」

遠くを見ながら呟くと高橋がそれに答える。

「如月さんの営業所だよ」

「え!? マジで!?」

俺より先に阿部が反応する。

そしてボソッと呟く。

「ありさ大丈夫かな……」


「え!? ありさって誰!?」

初めて聞く名に食いついてしまう。


「あ……、如月の名前だよ……」

「そんな可愛い名前とは……」

俺が言うと笑いながら高橋が続ける。

「わかる! なんか麗子みたいな名前だと思ってた」


「どんなイメージだよ……」

阿部が不貞腐れた顔を見せる。


「それより……」

高橋が酒のグラスを持ちこちらに近付けてくる。


「おめでと」

「え?」


「十年かかったけど、新人指導やっとやり遂げること出来たな」

「……ああ、ありがとう……」

グラスを持ち、高橋のグラスに軽くぶつける。


 あれから十年。あっという間だった。

俺は少しは成長出来たのだろうか。

 だが何があっても、たとえ何回新人指導をしたとしても、あの出来事を忘れることはないだろう。



「えー! 俺も入れてよ〜! 

ていうか、二人が涙目だと俺もつられて泣きそうになるじゃん!!」

阿部が無理矢理グラスを俺たちに軽くぶつけてくる。


「さ、飲もう飲もう〜!!」



 

――――――



 スマホの音で目が覚めた。

メッセージが何件かきてるようだ。


 高橋からのメッセージを見て昨日のことを思い出す。


 そっか、昨日飲み過ぎて潰れて、高橋が家まで送ってくれたのか。今日が休みで良かった。

高橋には今度お詫びに何か奢ってやろう。


 メッセージには、昨日の介抱がどんなに大変だったか笑い混じりに書いてあり、最後にちゃんと体調を心配する文面も添えてある。


 ほんといい奴……



 飲み過ぎたせいで頭が痛いし吐き気もする。

要は二日酔いだ。

 こんな時は酒は本当に身体に毒なんだと思うし、

もう酒やめようと誓うが、体調が治る頃にこの決意も消える。


 こういう時は一人が楽だな。

子供いると二日酔いでも構わず起こされるし、吐き気あっても動かなくてはならない。

相手しないと嫁も機嫌悪くなるし。


 一人がいい。


 ちょっと寂しいけど。

ずっと独りだったらここまで孤独を感じなかったのかもしれない。

 ただ、家族の温かさを知ってしまった今は、

それとどうしても比較してしまう。


「良いことなのか、悪いことなのか……」

 一人ぽつりと呟いてしまった。


 さあ、起きたぞ。今日は休みだ、何しよう。

とりあえず、熱めのシャワーを浴びて気合いを入れよう。

 仕事で嫌なことがあった日は熱めのシャワーを浴びる。

すると気のせいだろうが、その熱さが嫌なことまで流してくれる気分になる。

気のせいにでもすがりたい時もある。


 今日は気合いを入れるために熱めのシャワーにした。

けど……まあやる気はおきないので、とりあえずサブスクで適当に映画2本位見れば夜になる。

 で、「ああ休み終わるな」って焦る。

で、本当に終わる。



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