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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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自分の実力

 パソコンでの事務作業をしていると、また気配を消して事務の主任、立石がやって来た。

毎回静か過ぎて気付かないので驚いてしまう。

流石にそれはダサいし失礼なので、顔には出さないよう気をつけている。


 立石は書類を手にしていた。先日から俺の仕事になった分のものだとひと目でわかった。


「成瀬さん、ここ間違ってます」

その言葉を皮切りに、どこがどう間違っていたのか、どうすれば間違わないかなど滝のように説明を受ける。


 隣の席に腰掛けて話せばいいものの、立ったまま座っている俺に延々と話している。


 話が終わったので立石の顔を見上げる。

「すみませんでした。以後気をつけます」


「い、いえ……」

 明らかに驚いた表情を浮かべられる。

俺が謝るとは思っていなかったのだろう。

それはそれでショックだが。


 こう見えてちゃんと謝るよ? 

副所長になった時に業務が増えたが、その時もいくつかミスをしてしまった。


 再確認はしているのだ。でも慣れていない仕事だとどうしても抜けが出てしまう。

 基本的に他の奴より仕事は早い。要領もいいと思う。

 だが、新しいことを覚えることや慣れるまでに実は時間がかかる。

 でも仕事は慣れてからが長いので、最初の短い期間のことは皆忘れてくれる。 

だからなんでも仕事がデキると勘違いされる。


 ただ、一度したミスは二度としない。

……ようにしている。


 あーーもっとスマートに仕事出来ればなぁー……

カッコいいのにな〜……


 新しい仕事覚えるまでは、

頭の中の「す」を押せば、

予測変換で「すみません、以後気をつけます」が出てくる状態。

情けねえなぁ……。



 ふっと渡瀬が顔を出した。

「成瀬さんでも怒られることあるんですね」

不思議そうな顔を向けられる。


「そりゃあるさ〜俺も人間だし」

「それより、これなんですけど……」


 話をすぐに変えられる。

俺のことなど大して興味ないんだろう。

隣の席に座り、資料を見せられる。

「こんなの紙に印刷しないでアプリで見れるようにして、各自で見てもらった方が早くないですか?

その方が印刷代も紙代も、その準備する時間だって浮くし。

 ほんとコスパもタイパも悪いんですよね、この会社」


「まあわかるけどな〜。一定数いるんだよ、紙がいいって言う人間が。俺もどっちかって言うと、パソコン開かずパッと見れる紙のが使いやすいしさ。

特に年くってる程その傾向にあるから、なかなか変わらないわけよ」


 渡瀬が明らかに不服そうな表情を浮かべる。

あれから少しずつ感情を出すようになって、関わりやすくなってきた。


「だからさ、お前たちの世代になったらそうなるだろうね。今もいきなりじゃなく、少しずつ変えていけば浸透しやすくなるかもしれないな。

 ほら、ここの部分だけアプリ使って……とか」

資料を指さしながら説明する。


「そうですね……

何も働きかけないより、少しずつってことですね……」


「コスパ重視だよな、お前」

「え? まあそうですね。

でも俺だけじゃなく、周りの同期もそんな感じですけど。

ここの営業所は特にコスパが悪い気がします。

メリット少ないのに無駄に時間使ってるとことか」


「そうだな……ここの連中は、あんま自分のメリットを考えて動いてないかもな。

 例えばさ、目の前で小さな子供が転んだら自然と手を出すだろ?

 その時に『この子を助けたら母親からお礼をしてもらえる』とかを考えるまでいかない。

そんな感じ」


「ここの人たちはそんな感じですね。

まあ、俺は目の前で子供が転んだら自分で立ち上がるの待ちますけど。その子の為にも。

その方が強くなりそうだし。

それに、話しかけて不審者と思われたくないです」


「ハハ……お前と話すと勉強になるわ。

いろんな考えの人間がいるんだなって」


 立ち上がりながら渡瀬の肩に手を置く。

「いつか、一度でもいいから自分に得かどうか考えられないくらいやりたいことに出会えたらいいな」


「……それっていいことなんですかね?

そんなことあるのかな〜」


「あ、そういや今日、渡瀬部長来るよ」

「え!? そうなんですか!?

親父と全然連絡取ってないし、大学入った時から一緒に住んでないんで何も知りませんでした」


「会いたい?」

ちょっと意地悪そうに笑って言ってみる。


「いや〜……会いたく……ないですね……」

「そっか。会いたいなら部長来た時に呼んだ方がいいかなと思っただけ」


「聞かないんですか? なんで会いたくないか」

「まあ、そういうの色んな事情あるだろうし、

お前は話したくなったら話すだろ」


「はい」

渡瀬は小さく頷いた。






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