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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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初対面

 新人がやって来る日。いささか緊張する。

久しぶりの新人担当に不安を覚え、昨日はよく眠れなかった。


 会社にある指導者用の研修動画も見た。

「最近の新人はすぐ辞めるので怒ってはいけない」など、

昔ではあり得ない指導方法を伝授される。


 時代だな〜……俺はちゃんとやれるだろうか。




 その新人が皆の前で挨拶をする。

渡瀬部長の子供ということは事前に知れ渡っているようで、名前を聞いてもこれと言って驚く者もいない。


 大学を卒業したばかりの青年。

やはり見た目やスーツの真新しさからも若々しさが溢れている。


 いいな〜新鮮な感じ。 心なしか輝いて見える。

これはもう自分にはないものだな。



 不意に高橋が俺を紹介する。

「今日から成瀬に君を指導してもらう。

しばらく一緒に行動してもらうから、わからないことは何でも成瀬に聞いて」


 「わかりました」と返事をし、俺の方に軽く挨拶する。



 事務所内の案内、一日の仕事内容などをざっと伝える。

 で、ふと気付いてしまう。


 あれ?そういやメモしないな、と。


「メモとかしなくて大丈夫?」


 スマホをさっと見せられる。

「必要な事はこれに入れるし、難しそうなのは録音もしますから。録音したやつを文章にしたり、まとめたりしてくれるアプリがあるんですよ」


「へえ……」


 世の中の進み具合についていけてないのを感じる。

便利な世の中になったな。

 ああ、だから時々スマホをいじってたのか。

そりゃ理由を知らない上の連中はイラッとするだろうな。

話の途中にスマホを触られれば。

俺だって良い気はしない。

 スマホを触っているからか、なかなか目が合わないな……



「それに、わからなくなったら近くにいる人に聞きますから」

「あ、そう……」


 実践してみて動くということか。

体験した方が覚えるし身に付くこともあるだろうけど。



 ちょうど昼休憩になったので声を掛ける。

「どっか一緒にメシ食いに行く? 

ここらの店知らないなら……」


 言い終わる前に返答が来る。

「あ、気を遣ってもらわなくて大丈夫です。

自分で調べて行きたい所に行くんで」


「そっか。じゃあ、また後で」




 ……とりあえず喫煙室だな。


 煙草に火をつけながら考える。


 距離感まだ掴めないな……

俺はだいぶ様子伺いながらやってるけど、向こうはどうなんだろ。

言いたいこと言ってる感じだけど、気を遣ったりしてるのかな。


 俺って初対面の奴と話す時、いつもどうしてるっけ……

新人指導ってことで肩を張ってる所は確かにある。

あるけども……




 午後からも同じように関わり、終業時間30分前になる。高橋に「絶対に時間通りに帰せ」と所長命令を受けているので時間を小まめに見ながら行動していた。


 椅子に座らせ、自分も横に腰を下ろす。

「今日一日、慣れない環境で疲れたろ?

もうすぐ終わるけど、何か聞きたい事とかある?」


「なんでもいいですか?」

「ああ、いいよ」


 やっと目が合い、渡瀬が口を開く。

「成瀬さんが新人指導をするメリットってなんですか?」

「……え?」

予想だにしない質問で返答に詰まる。

何でもいいとは言ったが。


「新人指導の担当になると給料が増えますか?」

「いや……手当てとか特にないから給料は変わらないけど……

 渡瀬君が仕事を覚えてくれたら、この部署の一人当たりの仕事量が減って、みんな助かるかな」


「それは、みなさんが楽になるために俺が仕事を覚えないといけないということですか?」

「うーん……なんだろう。その言い方だと語弊が……」


 同じ内容を言ってるし、同じ方向を見てるはずなのに別問題になるというか……


「人の為に働くのは嫌か?

人が増えれば売上増にも繋がるし、会社の利益も増えるからそれもメリットの一つではあると思う」


 今まで新人を始め、様々な人と仕事をして来たが、こんなことを言われたことはなかった。

だからこそ、きちんと向き合う必要があると思った。


「いえ、嫌も何もそれが仕事ならやります。

ただ聞いてみただけです。

 あと、こうやって一対一でやる意味があるんですか?

 コスパもタイパも悪いと思うんてすが。

新人に時間を割くより、新たな契約の為に営業に行ったりする方が有意義じゃないでしょうか?

新人の指導なんて、手が空いている人がその時その時ですればよくないですかね?」


「そうだね……

元々、新人指導って新人の子が気軽に聞きやすくする為とか、それによって不安を打ち明けやすくする為、

一対一の方が事細かに指導出来るようにって始められたんだ。俺が新人の時はなかった制度だしね」


 渡瀬の様子を伺いつつ話を続ける。

きちんと目を見て話を聞いているのを確認する。

「だからさ、新人の為に作られた物だから、君がいらないと思うならやめていいと思う。

 不要と思ったらいつでも言ってくれていいよ」


「わかりました……」


 その時、ちょうど終業のチャイムが鳴ったのでお開きとなった。

 渡瀬は迷うことなく挨拶をして颯爽と帰って行った。







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