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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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映画デート

 佐伯さんと映画を観に行くことにした。



 職場でも会うが、俺はスーツで向こうもそれに準じた服装なので、私服を見ると未だにドキッとしてしまう。髪型やメイクまでいつもと変わると、人混みでは見つけることができないんじゃないかとさえ思う。


 娘と子供向けの映画に行くのが好きだった。

内容は正直どうでもいい。

 子供は感情をそのまま出してくれるので、

子供客が多いと、感動や驚きの声が映画館内に響き渡り一体感を感じるので、感情が増幅するような気になって気持ち良かった。



 大人向けの映画を観に行くのはいつぶりか。

子供が産まれてからは確実に行ってないから6年近くなるんじゃないかな。


 今日は映画館前で待ち合わせ。

やはり休日となると人が多い。この中から探し出さねばならない。

 せめて待ち合わせ場所は人が少ない所にすれば良かったと思うが、時すでに遅し。


 あれでもない、これでもない……と辺りを忙しく見回す。


 あ! 見つけた!

背が低いのもあって人混みではすぐに消えてしまう。

人の壁をかき分けて近付いて行くが見失ってしまった。


 でも確かこっちの方……


 次に見つけた時、誰かと話している様子だった。

相手は……男? 親しそうに話している。

 俺が近くに来ていることすら気づかない。


 相手が知らない奴なので話しかけづらい。

話し相手が仕事関係である可能性も否定出来ない。

隠れて付き合っていると、こういう所で不便が出てくる。


 今の事務所の奴ではないから、異動先の知り合い?

それとも学生時代とか?

 本当に仲が良さそうに見える。

前の彼氏とか、はたまた兄弟や親戚パターンもあるのかな。

 メッセージを送ったけど読んでもらえない。


 男性と別れるとすぐ目が合い、こちらへ駆け寄って来た。

「もう始まる時間ですね! 急ぎましょう!」

と足早に映画館の中へ向かう。


 どんな関係なのか聞きそびれてしまった。

その後もギリギリ上映時間で余裕がなかったため、そのまま鑑賞を始めた。

 だが、さっきの男が気になってちゃんと映画の内容が入ってこない。



 映画を見終え、外に出るともう暗くなっていた。

佐伯さんは感想をあれこれ話し出した。相槌を打ちながら駅まで歩く。

 人通りが多く、ぶつからないように気をつけながらも話し続ける。次々に人が行き交うので、話の内容が人の耳に止まらないのもいい。


 話が一通り終わったので疑問をぶつけてみた。

「……あの男の人って誰?」

「え? ……映画に出てた人ですか?」

「いや、映画館に入る前に話してた人……」


 佐伯さんは考える様子を見せて歩調が遅くなる。


 ウザいと思われた? 

こんな年になってガキみたいに他の男のこと聞くなんて……


 目を見開いて俺を見上げてくる。

「ああ! 前の職場の同期です!

会うの1年以上ぶりでつい話が弾んでしまって……」


 また歩き出し話し続ける。

「なんだ〜見てたんですか〜。

話しかけてくれて良かったのに〜……」


 だが突然足を止め、いたずらっ子のような表情をして見つめてくる。

「もしかして、ヤキモチですか〜?」

「え! いや、その……」


 慌てて目を逸らして溜め息と一緒に小さく呟く。


「そうかも……」



 佐伯さんがフッと笑い、腕を握ってくる。

「嬉しい」

頬がほんのり赤くなっているのが可愛い。


 大通りを抜けると、人の流れが一気に少なくなる。

ぽつりぽつりとしか歩いておらず静かになる。


「成瀬さんは私のことをどう思ってるのか気になってました。

 私ばっかり想いが強くて、優しいからそれに付き合ってくれてるだけなのかなとか……

 私のこと可愛いと思ったことないんだろうなって……」


「え……」

思わず足を止める。


 そう言えば元嫁にも感情表現が足りないって言われてた。


「思ってるよ、可愛い……とか。

もう付き合う前から数え切れない位思ってたし……」


 佐伯さんが腕にしがみつき、食い入るように俺の顔を見てくる。

「本当ですか!?」

「え……うん……」

恥ずかしくてそっぽを向いてしまう。


「良かったです。死ななくて」

「え?」

「あ、いや、死のうとしてた訳じゃなくて、

 生きてて良かったなって。

成瀬さんに可愛いって思われたことない、って思ったまま死ななくて良かった」


 また歩き出し、前を向いたまま会話を続ける。


「そういうところも……可愛いと思うよ……」


 もう恥ずかしくて顔を見れない。

自分で顔が赤くなってるのがわかる。

夜の暗さに救われている。これが昼間ならどんなに恥ずかしいか。

 何やってんだいい大人が、と自分にあきれてしまうが悪い気はしない。


「やっぱり優しいですね」

顔を見なくても笑っているのがわかった。



 そしてその夜は今でで一番盛り上がったのは言うまでもない。





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