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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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デート

 佐伯さんが夕食を作っている間、暇なので近くに行って話をする。

 たぶん邪魔だが、そんな素振りを見せず具材を切ったり煮込んだりしている。目線が合わないのがちょっと淋しいけど気にするまい。


「事務の主任ってどんな人?」

基本的に仕事とプライベートはきっちり分けるのだが、目の前に職場の人間がいるとどうしても仕事の話をしてしまう。


 新卒で同期と付き合った時は、当時の彼女から「仕事の話しないで!」って怒られたものだが、佐伯さんは嫌な顔一つせず答えてくれる。


「凄い人ですよ、仕事ができる人ってこんな感じなんだなって思いました」

「そうなんだ……」


 佐伯さんがあいつを褒めるとモヤモヤする。


すると、パッと顔を上げ目を合わせてきた。

「そうでした! 聞きましたよ!

成瀬さんが立替金入力してくれるって!」

「ああ……その人に頼まれて……」


「最近、土日出勤したり残業増えたりしてたから本当に助かりました!!

 掛け合ってくれた主任はヒーローみたいな扱いになってて、成瀬さんにもみんな感謝してましたよ!」


 あいつがヒーローになるのは癪だが、事務の人たちが感謝していると言われて悪い気はしない。


「成瀬さんの評判が良くなって私も嬉しくなってしまいました!

 でも大丈夫なんですか? 仕事量。

副所長ってことで他の人よりも業務量多いだろうし、

営業所再開でまだ落ち着いてない部分もありそうですが……」

 心配そうに見上げる顔が可愛くてたまらない。

キスしたい。もう押し倒したいくらいある。


「ああ、大丈夫。あのくらい」

そしてカッコつけてしまう俺。

言えねえよな、嫌だけどプライドで断れなくて仕方なくなんて。



――――――



 翌日、屋台やキッチンカーなどが集まるイベントがあるということなので、隣の県まで足を伸ばすことにした。


 車に以前はチャイルドシートや子供が時間潰し出来るようなDVDを置いていたが、もう必要ないので離婚する時に全部嫁に渡してきた。

 全てなくなると空間が手持ち無沙汰になる。


 子供がいた時はお菓子の甘い匂いがしていたのに、今はしない。乗っている時は気づかないが、久しぶりに乗った瞬間に匂ってきていたものだ。

 匂いがなくなるにつれて子供の存在も消えてしまいそうな感覚に陥る。


 ちゃんとあったよな、思い出。記憶合ってるよな。

思い出や記憶は妄想と似ている気がする。

頭の中を探って映像を探すところなんてとても。

子供がいたことが妄想だとしたら滑稽過ぎる。

そして虚しすぎる。悲しすぎる。



――――――



 イベント会場に行くと、家族連れや20代カップル、年配の夫婦など様々……でも30代カップルはあまり見当たらない気がする。30代夫婦には子供連れが多いような……


 そう言えば子供が産まれた後、元嫁とデートらしいことをした覚えがない。

いつも子供がいた。それが自然だと思ってた。

そういうのも嫌だったのかもしれないな。

だからフラレたんだな……

そっか、フラレたのか俺は。



 ジェラートの違う種類を一つずつ買って、ベンチに座って食べることにした。


「来て良かったですね」

佐伯さんがジェラートを食べながら言った。


「天気も良くてよかったね」

青空を見上げる。


 やっぱりこうやって出掛けるのは楽しいな。

何もなくても一緒に過ごすことで心が和やかになる。

人と付き合うってこんな気持ち良かったっけ。


 ほんわり暖かさを感じる春日和で、青い空に白い雲、風も吹いていて心地良い。この季節がずっと続いてほしい。


 目の前には芝生が広がっており、小さな子供がボールを追いかけていた。

 花音は元気かな。小さい子供を見るとどうしても娘を思い出してしまい、胸が締め付けられる思いがする。


「子供欲しいな……」

ボソッと呟いて思わず佐伯さんに目をやる。

「いや! そんなつもりじゃ……!」


 いろんな意味でマズいと思った。

 結婚をほのめかすようなことを言ったら、まだ日が浅いのに重いと思われるかもしれないし、

 20代ならまだしも、30代半ばの女性に対しては失礼にあたるんじゃないかと思った。

 男と違って女性は妊娠や出産がいつまででも出来るわけじゃないから、この年齢の人に対してはプレッシャーになりかねないのでは……


「そうですね……」

佐伯さんは子供に目をやったまま、笑みを浮かべながらそう言った。


 気を遣ってくれたのか、本当に気にしていないのかはわからない。

 ただ俺は気まずかった。


 正直言って今は結婚を考えていない。

この年齢の女性と付き合っているのに、これは無責任だろうか。

 佐伯さんだからという訳ではない。

今の生活が充実しているし、彼女と一緒に過ごして楽しいし、また会いたいと思う。

 だが、それが結婚に直結しない。


 結婚って、考えようと思って考えるものなのだろうか。もっと自然に「結婚したい」と思えるものではないのか。


 元嫁とも結婚をきちんと考えていなかった。

妊娠したから結婚した。あの当時はデキ婚から授かり婚と名前が変わり始めていたよな。


 だからって嫌々結婚した訳でもない。

ただそんな始まりだったから、自覚は足りなかったかもしれない。


 でも結婚生活はそれなりに楽しかった。

子供が産まれると将来の楽しみや未来を考える機会が増えた。

 相手が楽しかったかどうかは今となってはわからない。

 結果を見れば明らかなのかもしれないが。





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