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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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託す者、託される者

 帰ろうとしていると営業所に見知らぬ青年が入って来た。何やら藤田と話し込んでいる。他の営業所の奴か?


 しばらくして藤田が俺の元へ小走りでやって来た。

「成瀬さーん、あいつが成瀬さんと話したいって言ってるんですが大丈夫ですか〜?」

「ああ。いいけど、誰?」

「他の営業所の奴で、年齢は俺より二つ上なんですけどあいつは中途採用だから同期なんです」


 藤田が手招きをすると、その青年がやって来た。

少し長めの黒髪、背丈は俺より少し低い位、スラッとした体格。会釈しながら笑顔を見せる。


「応接室とか準備した方がいい?」

藤田に聞くが、その青年が笑顔のまま答えた。

「いえ、大丈夫です。プライベートな話なので」


 プライベート? 

疑問に思いながらも自販機前の休憩所へ案内する。

「大倉です」と名刺を渡されるので、こちらも渡す形になった。


 藤田の二つ上ということは、30才前後だろうが、年齢より落ち着いて見える。


 そして、わかる。

こいつは仕事ができるタイプの人間だ。

 同業者だからわかるのかもしれないが、行動や話し方などで感じる所がある。

 でも、なんだかどこかで見たことあるような……?


「プライベートな話ってなんですか?」

缶コーヒーを渡しながら聞いてみる。


「みのりのことです」

と爽やかに返される。


「みのり……! って佐伯さん!?」 

元彼!? ちゃんと別れたって聞いたけど……?


「ハハ……すごい顔に出てますよ!

みのりが言ってた通りですね。

仕事では顔に出さないけど、プライベートのことはすぐ顔に出るって」


 どんな顔になってたかわからないが、凄く焦っていたと思う。

 また、相手に敵意がないのが伝わってくるので、

このような言い方をされても嫌な感じがしない。


 高橋が察したようで、下のフロアからじっとこちらを見ていた。目線で「大丈夫」だと伝えると、頷いてどこかへ去って行った。


 何を言ったらいいか考えていると、一方的に話を始められる。

「会ってみたかったんですよ、直接。

 みのりの好きな人に。

 俺は最近フラレたんですけど、

成瀬さんと付き合い始めたんですよね?」


「ああ……」

答えづらいが嘘はつけない。

そして、ちゃんと別れていたことに安堵感を覚える。


「あ! 勘違いしないでください!

文句言いに来たとかそんなんじゃないですから!」

コーヒー缶を傾けながら続ける。


「俺と付き合う前から好きな人いるって知ってたんですけど、それでもいいからって言って付き合ってたんです。

 でも駄目でしたね、貴方に再会したらもう俺には全然気持ちが向いてなくて。それに気付いたら一緒にいてもツラいだけでした」

ふうっと溜め息をつく。

「藤田がいつも成瀬さんの自慢してくるんです。

すごく頼れてカッコいい先輩がいるって。

みのりが好きになって、藤田がそこまで言う人に会ってみたくなって、近くを通ったので来てしまいました。突然すみませんでした。驚かせてしまいましたよね」


「俺のこと恨んだりとかしてないんですか……?」

「ああ! それは全然ないです!

だって好きな人と結ばれるって素敵なことじゃないですか! 好きになっても結ばれないこともあるのに!

 自分の好きな人が幸せならいいかな、みたいに思ってますけど……」


「けど……?」

 少し言葉に詰まっているようだ。


「まあ正直ショックはありますが……」

目を伏せ肩を落とす。

だが、急いでこちらを向く。

「でもほんと恨んだりしてませんから!!

今日会って、敵わないなって思いましたし」

力なく笑っている。


「敵わないって、俺のこと何もわからないんじゃ……」

「……見ればわかりますよ。ちょっとした所作でも仕事出来るかとか、その人の在り方とか」


「そうか……

 俺、ちゃんと佐伯さんのこと大切にするから……」

「ハハッ……それは、俺じゃなく本人に言ってあげてください。今日は突然お邪魔しました。

あ! コーヒーありがとうございました」

言いながら立ち上がり、颯爽と去って行った。



「お疲れ」

すぐ横に高橋が立っていた。

フッと笑い呟く。

「佐伯さん、よっぽどお前のこと好きだったんだな」

「え? なんで?」

高橋を疑問いっぱいの顔で見上げる。


「だって、今のあいつお前にそっくりだよ」


「は!? どこが!?」

「全部。立ち居振る舞いとか姿形まで。

なんかお前をちょっと小さくした感じで兄弟みたいだと思った……フフッ」

「マジ? 自分では全然わからんかった……」


 まあでもいい奴ではあったな。

似てるって言われても嫌じゃない。


 ただ、人を傷つけてしまったことの上に、自分の幸せがあることを痛感してしまう。

 あー……なんか胸がチクチクする。





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