仲良し飲み会
「なあー、俺の最近の悩み聞いてくれよ〜」
珍しく高橋が『悩み』という言葉を口にする。
今日は、高橋、阿部、俺で飲みに来ていた。
「え〜なになに? お前の悩みって珍しいな!
いつも完璧な俺! って感じじゃん?」
阿部も同じように思った様子。
「この年になると彼女いないって言うと変態扱いされるんだよ……」
「どういうこと?」
「20代でバツイチの奴なら遊んでたんだろうな〜みたいな感じだったわけ。
でもこの年で結婚歴も離婚歴なくて彼女いない、しかも地位も金もあって、見た目も悪くないだろ?
そしたら、変な性癖あるんじゃないかって疑われるんだよ〜」
「え〜そんなことないと思うけどな〜。
てか、自分で見た目悪くないって言うこと自体が痛いけど! ハハ……」
阿部がつまみを食べながら答える。
「そんなことあるんだよ! 実際言われたんだから!」
「それは〜お前が変なプレイやらせようとするからじゃねえの〜」
笑いながら疑いの目で高橋を見る。
「違ぇよ!! ヤるまでいく前の話でそんな風に言われるんだよ!
だから、しばらく彼女いないって言うと引かれるから、最近別れたことにしてる……」
「でもそういう子とどこで出会ったんだ?
職場でそういう話する相手いなさそうだけど」
高橋が親しくしている女性社員に心当たりがない。
「マッチングアプリ……」
「え!? やったのか!? どんな感じなのあれ。
気になるけどやったことなかったな〜」
そうか、そういう方法使って出会い探すのも今時アリだよな……
「待ち合わせ場所指定して行くんだけど、もうやんねえと思う。会うまでの緊張に耐えられんよ……」
「そこまでして彼女欲しかったのか?」
「いや、試しにやってみようかなってやっただけ……。
お前らはいいよな、彼女いるし、離婚歴あるし」
「ハハ……離婚歴あるのいいって初めて言われたんだけど」
「離婚歴あるってことは、結婚出来たってポテンシャル? あるからさ、この年齢なら変な目で見られないんだよー」
「へー……」と適当な相槌を打ちながら酒を追加した。
「そう言えばさ!」
阿部が空気を変える。
「佐伯さんってマキちゃんに似てるよな」
「誰? マキちゃん」
高橋が阿部に目をやる。
「リカちゃん人形わかるだろ?
あれの妹で涙ボクロあるやつ」
「こわ! 何お前そういう趣味あったのか!?
人形集めみたいな!?」
高橋が思いっきり引いているのを見て笑ってしまう。
「違うって!! 俺、10個以上離れた妹いて世話すること多かったから知ってるだけ」
「俺の娘はリカちゃん人形は持ってなかったから知らんな……」
ちょっと気になるから後で検索してみよう……
「そうそう!
その妹が今度うちの会社に入社するんだよ!
あれ? お前らの営業所じゃなかったっけ?」
「ええ!?」
高橋と声が重なり顔を合わせた。
「阿部優愛!?」
思わず声を上げてしまう。
「いたな、こないだ面接した子だよな……
阿部って名前聞いても全くお前のこと思い出さなかったけど、まさか妹だったとは……」
高橋が最終決定で入社を決めていた。
「俺に似て美人だっただろ」
阿部がフフンと自慢げな顔を見せてくる。
「確かに……可愛かった、なあ?」
「ああ……そう言われると顔似てるよな」
「お前ら、俺の妹をエロい目で見てないだろうな!?」
高橋が即否定する。
「いや! 俺は全然!!
成瀬が所長室でイケナイこと妄想してただけ!!」
「はあっ!?」
阿部から殺人鬼のような眼差しを向けられる。
高橋のアホがいらんこと言いやがって!
「違う違う!! お前の妹じゃなく、一般論として話をしただけで……!」
焦って否定するから本当っぽく聞こえてしまう。
「俺の優愛に何かあったらタダじゃおかんからな……」
「しませんしません!! あんなの抱けないって!
抱いてる時にお前の顔出てきて萎えるわ!」
「へー……抱く妄想までしたってことね」
あーもう何言っても墓穴掘ってしまう!!
そして普段怒らない奴が怒り出すと、その抑え方わからん!
「もう心配だ〜お前たちの営業所に異動願い出そうかなー」
「いやもうそれはとても働きにくくなるから止めてくれ……」
「大丈夫大丈夫、俺が所長としてちゃんとコイツ見張っとくから。
それよりさ〜、こいつまだ佐伯さんのこと名字で呼んでるんだよ〜」
「え? そうなの? 付き合い始めたのに?
俺はここで話す時はわかりやすく如月さんって言ってるけど、二人の時は名前で呼んでるよ」
ナイス高橋! 話の着地点を探してくれた!
そして新たな話題を!
でもこれ俺にとっていい話じゃないような……
「なんで?」
「えっと……それは」
口ごもると、それをわかっていたようで高橋がニヤけながら口を開く。
「その方が興奮するし燃えるんだって」
「え? プレイ?」
阿部が俺の方に一瞬目をやる。
「一度敬語使わなくなると、それ以降はもう使ってもらえなくなるからって、なあ成瀬」
助けてくれたと思ったのに結局俺を貶める方向へ……!?
事実は事実だから否定できねー!!
「だ、だって敬語とか、さん付けとか興奮しない!?
え!? 俺だけ!?」
しどろもどろになってまで勢いで補足する。
阿部から馬鹿にされると思ったが意外な反応をされる。
「へ〜……意外。ガツガツいかないでゆっくりじっくり進めてるってことか〜
いずれは名前呼びの敬語なしになるだろうから今の時期を楽しんでるってことね〜」




