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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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雨宿り

 仕事が終わり外へ出ると薄暗い空の下、小雨が降り出していた。


 あー……天気予報で雨って言ってたような。

スマホで調べると今から土砂降りになるらしい。

ここで雨宿りせず家まで走るか……

明日休みだし最悪風邪引いてもいっか……


 走ろうとしていると、佐伯さんが出て来た。

「あ〜雨ですね〜……」

「今から土砂降りになるみたいだよ」

「そうですか〜じゃここで待ってても酷くなるだけですね……走って帰ろうかな」


「俺の家近いから、家から傘持ってきてやるよ。

近くにコンビニもないし」

「いえいえ! さすがにそれは申し訳ないです!」

「でも駅までまあまあ距離あるし、降りた後も歩いて帰るならすごいびしょ濡れになるだろ」

「そうですね……

あ! じゃあ帰りに成瀬さんとこ寄って傘借りてもいいですか?」

「それでいいなら……タオルもいるだろうしな。

じゃ行こうか、ちょっと走るよ」

「はい!」


 離婚した後、営業所を再開した時の為に近くに独り暮らし用のマンションを借りていた。

 再開するかは賭けだが、そうすることで目標を再確認でき、自分に気合いを入れることにも繋がった。

 電車に乗ることなく出勤出来るので、時間に余裕がもてるというメリットもある。


 マンションまで数分、後ろを走る佐伯さんを振り返りながら小走りで向かう。仕事帰りに雨に降られているのは俺たちだけじゃないようで、走って行く者、雨宿りする者、諦めて濡れたまま帰る者まで様々だ。

 コンビニが近場にあればまた違うんだろうけどな……と思いながら足を進める。


 マンションに着き、外で持たせるのは申し訳ないので玄関で待ってもらう。

 傘とタオルを渡して、ふと気付く。


 もうすでにびしょ濡れじゃないか……

髪から水滴が滴り落ち、それだけじゃなくブラウスやスカートからもポタポタと……


 こんな事になるならやはり会社で待っててもらえば良かった。意味なかったな……


「き、着替える?」


 こんな格好で電車に乗ったら寒いだろうし、椅子も濡れてしまうから座れないかもしれないし、風邪引いてしまうかも。

 家に着くまで一時間近くかかるんじゃないだろうか? 

その間こんな格好してたら……


「……いいんですか?」

申し訳なさそうな表情を見せられる。


 とりあえず服を探す間、脱衣場を貸して髪を乾かしてもらう。


 ……あれ? なんかスムーズに家に連れ込んでしまったけど……

 あれ!? どうするこれ!?

今さら焦りだす。

 傘を渡すところまでは、やましい思いはほとんどなかった。まあ少しはあったけど。

え! 今家の中にいるよな!?

あれ!? 一つ屋根の下に二人きり!?


 いや落ち着け落ち着け!!

とりあえず服だ服!! 小さめの服……?

といってもL〜LLの男服しかないし、佐伯さんの小ささだと女のSサイズだろう……


 とりあえず何枚か見繕って持っていくことに。

白は駄目だ、ブラジャーが透けそう。それを狙って敢えて持ってきたと思われてしまう。


 黒っぽいTシャツやトレーナー、短パンを渡してリビングに戻った。


 一旦気持ちを切り替え、冷静なフリをして温かいコーヒーを準備する。

 乾燥機付き洗濯機で乾燥だけしてみよう。

早ければ30分で乾くかもしれない。

 最悪、終電に間に合えばいい。


 数分後、トレーナーを着た佐伯さんが出て来た。

短パンは履かず手に持っている。

「短パンは履いてみたけど大きくてすぐ脱げてしまいました……」

と、恥ずかしそうに下を向く。


 トレーナーのはずなのに佐伯さんにとっては大き過ぎて袖も長すぎて余っており、ミニ丈ワンピースのようになっている。


 こ、これは……可愛すぎる……

そして……

「これじゃ帰せないな……」

思わず呟いてしまい、ハッと佐伯さんに目をやる。


 佐伯さんがゆっくり近付いて来て、小悪魔っぽく笑いながら上目遣いでこっちを見上げる。


「……じゃあ、帰らなくてもいいですか?」


 もう何も考えられなくなって、頬に触れてキスをした。

 一瞬我に返り少し離れたが、また目を見つめながら、

「今度は忘れないでくださいね」

って!!

 もう無理。その後はもう感情の赴くままに求め……


 全部計算済みだったのかもしれない。

けど、もうそんなこと考える余裕なんてなかった。


 で、冷静さを取り戻した時には既にベッドの中。

寝顔を見ながら幸せを噛み締める。

 ご無沙汰だったからか、想いが届いたからか、人の肌に触れることを求めていたからか……

やばい、めちゃくちゃ幸せ。

自然に顔がほころんでしまう。


 だが、その寝顔を見て嫌なこと思い出した。

 ふと思った。でも、万が一そうじゃない可能性もある……


 佐伯さんの目がふんわり開いて視線がぶつかる。


「えっと……あのさ……」

ことが終わった後なので尚更言いづらい。


「なんですか?」

きょとんとした表情すら可愛い。


「彼氏……いなかったっけ……?」


 間を置いて返事が返ってくる。


「います……」


 やっぱり!? こないだ飲み会でそんなこと言ってたよね!? 聞こえてきたよな!?

 やっぱ幻聴じゃなかった!

血の気が引く音が聞こえてくるよう。

 これじゃ今井とやってること同じじゃねえか!!

あいつを責める資格ねえだろ俺!!


「あ……でも別れようとしてて、一ヶ月以上会ってないんです……」


 一瞬、ああこうやって世の愛人たちはズルズル関係を続けてしまうんだろうな……と愛人側に同情してしまう。


「だよな……もしかしてとは思ったけど」


 顔にそっと触れながら語りかける。

「俺はもう逃げないから。

ちゃんと別れるまで待つから、別れたら付き合おう」


 頷いた後、目をしっかり捉えられる。

「すみません。ズルいことして。

営業所再開して成瀬さんに久しぶりに会ったら想いが強くなって、彼氏とも会わなくなって、こうなりたくて黙ってました……」


 思わず抱き締める。

もういいや、今日は。一回も二回も同じだろ。

うん、明日から距離を置こう。




 数日後に佐伯さんから彼氏から別れたと連絡が来て、正式に付き合うことになった。

 これが嘘だったらどうしよう、と一瞬不安がよぎったが信じるしかないよな。

 






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