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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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30/52

最後の日を迎えるために

 所長室の書類を段ボールに詰めながら高橋が不意に話を振ってくる。

「それで佐伯さんどうすんの?」

「は!? 何だよきなり!?」

動揺し過ぎて運んでいた段ボールを落としそうになった。

 

 高橋には、先日飲みに行った時の出来事やその時の気持ちも聞いてもらっていた。


「どうするも何も飲みに行っただけで何もしてないし。一人で空回りしてるだけだし……」

「じゃあ不倫すんの?」


 この質問、二回目だなと思った。あの時は即答出来た。だが今は……

「……わからん」

「え?」


 高橋が手を止め、机の向こうからこっちを見ているのがわかる。

「もうわかんねえよ……自分ってそんな理性強くないんだなって思ったし、明日どころか今日もどうなるかわかんねえ」


「まあな。『不倫なんて絶対しない!』って言うよりは親近感は湧くかな」

「何のフォローにもなってねえな」

「フォローしようとも思ってないしな……ハハ」


 また作業を再開した高橋が続ける。

「まあ、離れれば少しは気持ちも落ち着くんじゃないか?」


 異動先は俺と高橋、そして数人は一緒に如月の営業所に行くことが決まった。他の社員たちも自宅近くの営業所や本部など、なるだけ希望を優先した異動先になった。

 それも高橋が上と掛け合ってくれたからである。

お陰で誰一人退職を希望する者はいなかった。

 そして佐伯さんとは違う営業所で働くこととなる。


「そうだな……寂しいけど……

ずっと会えなくて、久しぶりに会ったら盛り上がりそうな気も……」

「でも会わないうちに、彼氏とか出来て結婚してるかもしれんな」


 自然と溜め息が出る。当たり前だ独身なんだから。

どんな恋愛してたって俺は関係ないし、言う資格もない。

「……それもあり得るよな。嫌だけど。」

「嫌って……」


 言われる前に自分で言う。

「そうだよ、自分勝手だよ。

幸せにすることも出来ないし、嫁と別れようとも思ってないし、ただ好きで抱きたいけど触れることすら出来ないし。

 でも人間ってそういうもんだろ、白黒つけれないことが多いし、どっちにも決めれないグレーゾーンが大多数を占めてるんじゃないか」


「そうだな……」

高橋は心ここにあらずと言ったような返事をした。


 が、何か思いついたように勢いよく俺に視線を戻す。

「じゃあ俺が佐伯さんと付き合ったらどうする?」

「え……好きだったのか……?」

少々焦りながら返答する。


「いや、なんとも思ってない。

でも、今日でも何か起こるかわからんないんだから、

そういう可能性もあるだろ」

「ま、まあな……」


でも高橋とならまだいいかな。こいつならちゃんと大切にしてくれそうだし。

 でも本人には言わない。調子に乗るのが目に浮かぶ。それに高橋なら俺がどう思うかくらい簡単に想像出来るだろう。



「どう転んでもお前はハッピーエンドにはならなさそうだな」

高橋の言葉に反応する。


「ハッピーエンドは本人次第だからわからんさ。

物語で『悪い魔法使いを殺して幸せに暮らしました』って終わりがあっても、

幸せに暮らせたからハッピーエンドって見方と、殺人を犯してしまったからバッドエンドと解釈する人もいるだろうし。同じ結果でも自分次第でどうにでもなるさ」



――――――



 絶望だと思えた営業所閉鎖だったが、高橋から嬉しい報告を聞くことができた。

 今後、異動した後に、またこの営業所が必要となればまた再開してもいいと言われたらしい。

 目安としては一年後。ここの店舗が会社の所有物であったことが大きかった。賃貸ではないのでそのままの状態で保存しておくことができる。

 そして、異動後も必要な物があればここに取りに来たりと自由に入れることになった。


 一年後といっても、希望があるのとないのとでは雲泥の差だ。みんなのやる気も変わってくる。

 俺たちは密かに希望を抱きながらそれぞれの道を歩くことになった。


 閉鎖にあたって、一緒に働いていた他の同僚たちとたくさん話をしたが、営業所閉鎖や異動先に対しての不安は聞かれたものの、誰一人恨みつらみを言う者はいなかった。

 言っても一緒だと思ったのか、そもそもそんな事を思ってなかったのかはわからない。

 皆と話せば話すほど離れたくない気持ちが強くなり、またこの営業所を再稼働させることに意欲が湧いてくるのを感じた。



 



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