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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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真田、辞めるってよ

「真田、辞めるってよ」


「……は?」


 何その言い方。部活やめるってよみたいなテンションで。


 高橋に用があったので、本部から帰ってきたところを見計らい所長室に入った。

 そしたらこの一言。


「どういうこと?」

「そのまま。辞めるらしいよ、如月所長が言ってた」

「理由は?」

「聞かなかったからわからないけど。

お前仲良さそうなのに知らなかったんだな」


 ……何も聞いてない。

あの一件以来、本部で会えば話はしてたが、私用携帯の番号は知らないし。

 でも阿部は俺たちが話しているの見て驚いてたな。

どんな魔法使ったんだよ! って聞いてきたり。


 なんでいきなり? なんで話してくれない?

俺に話したところで、相談したところで意味がないと思われた?


 あーー直接会って話が聞きたい!!

社用携帯を使えばすぐに話せるだろうけど嫌だ!

顔見て話したい! 話が聞きたい!


 動揺したまま所長室を出てきた。

あれ? そもそも何で所長室に行ったんだっけ?



 それからあっという間に数週間経ち、自分の中で受容出来そうな雰囲気になっていた。


 というのに! 外回りの帰り道に横断歩道の向こうに真田の姿を捉えた。

 早まる気持ちを抑え、信号が変わるのを待つ。

なんだってこういう時信号は遅いんだ、と苛ついてしまう。それでも見失わないように、人混みの中の真田を目で追う。向こうは全然気づいていない様子。

 ここで捕まえなければもう会えないかもしれないと焦りを覚える。


 信号が変わったので足早に近付いて行き、思わず腕を掴んだ。

「真田!!」


 真田は驚いた様子だったが、俺だと確認するとホッとした顔を見せた。

 だが俺の興奮は止まらない。

「何で辞めるんだよ!! 如月になんかされたか!? もし嫌ならうちの営業所に異動願いでも出して……!」

「ちょっと……落ち着けって」

肩を軽く掴まれる。

「みんな見てるだろ」

小声で言い、周りを気にするように目配せされる。


 我に返り周囲を見渡す。

 通行人は何事かと俺たちを見ながら歩いて通り過ぎていく。立ち止まる人はいないが、そこそこ目立っていることに気付く。


 突如、真田がクスクス笑い出した。

「いつもと逆じゃねえか」


 近くのベンチに座り話をすることにした。

俺が落ち着いたのを見て真田が口を開く。

「辞めるってマイナスな捉え方されるけどさ、

俺の場合は、うちより大きい所にヘッドハンティングされるようなものだから、別に悪いことじゃないんだ」


「そうなのか……?

じゃあ別に嫌がらせされたり、仕事が嫌になったわけじゃ……」


「まあ、あの時みたいに契約とられてもなんとかやっていけたし、ちょっとやそっとの嫌がらせじゃ俺は屈しないし。

 それに次の会社に行けば給料も増えて、役職も付いてくるから、何も困ることないんだよ」


 気まずそうに笑いながら俺を見る。

「心配してくれてありがとうな……」


「でも話が聞けて良かったよ、俺の早とちりだったんだな」

「お前には言っておこうと思ったんだけど、電話だったらさっきみたいにギャーギャーなるだろうし、会って話そうと思ってたらいつの間にか日数過ぎてしまってここまで来てしまった」


「ハハ……読まれてたか。

でも嫌だな、お前がいなくなるの」


「嫌だなって幼稚園児かよ! ポワポワ学園は発言までポワポワしてんな〜」

意地悪そうに笑っている。


「だって寂しいじゃないか、毎日会ってたわけじゃないけど、戦友がいなくなるみたいな喪失感を感じるよ」


 再就職する場合は前職場より給料が減ると言われる中、真田は恵まれている。

 それも今の仕事を一生懸命に頑張っていたからの結果だろうと思えた。


「まあ、俺も寂しくないわけじゃないけどさ……」

「お? 珍しく素直じゃーん」

と、肘でつついてやる。


「新しいとこに行ってもお前らしくやっていけよ。

 その口の悪さはどうにかしないとな〜」

「ハハ……そればっかりは努力しても無理かも」


「お前がいなくなったらあの営業所は如月所長の独壇場になりそうだな」

「そうなんだよ! ……それが一番気がかりだけど、俺がいてもどうにもならなかったから、いなくなっても大して変わらないとは思う」


「心配だろうけど、とりあえず今は自分のことだけ考えて進んで行けよ。仕事に慣れるまでは大変だろうし、身体的にも精神的にも」

「ああ、そうするよ。

……あ、お前さ、高橋のこと信じてやれよ。

これから何があったとしても」


「え? 信じてるけど……?」

「お前らの関係いいなって思ってた。お互い支え合って補い合って。そういう存在って貴重だからさ」


「なんだよ水臭いな! 俺とお前もそんな感じだと俺は思ってるよ」

「ハハ…それはありがたいな。辞める前に聞けて良かったよ」


 別れ際に手を差し出す。

「また会おうな。頑張りすぎんなよ」

「お前はもっと頑張って売上あげろよ!」

笑いながら握り返された手に力が入る。


 夕陽がビルの窓に反射して眩しく照らしてくる。

数時間後には暗闇になるだろうがそれを感じさせない。



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