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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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騙す人と騙される人

 不動産会社の神野社長から連絡があった。相談したいことがあると言われたので訪問することにした。


「こんな事を君に相談するのは失礼にあたるかもしれないんだが……」

「どうしました? 何でもいいですよ?」

いつになく気弱な社長が心配になる。


「他の会社からコピー機の契約をして欲しいと言われたから迷ってて……ちょうど君の所の契約も切れるし……」

「ああ! なんだそんなことですか! 

その会社の契約内容を見てみましょうか?

お得だったらそっちに変えた方がいいですもんね」


「え……? いいのかい?

君の所の売上や客が減ると困るんじゃないか?」

「そうですね〜、まあ売上が減るのは会社的に痛手にはなるでしょうが、いい契約を結べそうなら社長の為にもそっちがいいと思います。

 うちよりいい所があるなら、こっちに引き留める方が罪悪感を感じますし」

笑顔を見せると、社長が安堵の表情を浮かべた。


 社長に契約内容をの紙を見せてもらう。


 ……何だこれは。

コピーを取らせてもらい、その会社の名刺も含めて預けてもらう。この名前に見覚えがある。


 しかも、次の訪問予定も決まっているらしく、その日に契約予定だという。

「こないだ二人で来られて何時間も居座られて、契約すると言うまで帰らない様子だったから、つい契約すると言ってしまったんだ、すまない……」


「いえいえ! 社長は悪くないですよ!

でもまだ契約前で良かったです。契約すると解約は困難になりますから」

「クーリングオフがあるだろう? もし契約してもそれを使えば……」


「いや、それがクーリングオフは個人に対してで、こちらのような個人事業主には対応してないんですよ。

 だから契約したらそこまでなんです」


「それは知らなかったな……」


 次の契約するという訪問日に同席させてもらうことにした。こんな契約の取り方をするなら電話で断ってもすぐ来るに決まっているし、取り合ってもらえないかもしれない。





 営業所に戻り、高橋にも書類を見せる。

「すごいな……」

「だろ? こんな絵に描いたような悪徳業者。

あまりにも酷いから笑いそうになってしまった」


「社長大変だったな、そんな奴らに目をつけられて」

「ああ、しかも契約が終わるタイミングってあまりにも出来すぎだろ?

 そしたらコレだ」


 もらってきた名刺を見せる。

「福場……? 前の所長じゃないか!」


「そうなんだ。あいつ、辞める時に個人情報持ってった可能性があるな……」

「だとしたら警察案件だろ」

「証拠がないと駄目だろうし、持ってった情報消されたり、偶然営業に行ったって言い張られるかもしれない。

 だから今度直接会ってくるよ」


「お前昔からそういうの好きだよな……」

何かを思い出し笑っている様子。


「え? そうか?」

「電話じゃなく直接顔見て会って話したい! て感じ」


「あ〜それはあるな。電話じゃ表情見えないし、テレビ電話だとしても直接じゃないから嫌なんだよな〜」

「ハハ……面倒くさ。

でもそういう所、嫌いじゃないけど」


「あ! まさかお前俺のことが好きで……?」

「は?」

「俺に対して何十年も恋心を抱いていて……それで今まで結婚しなかったということか!?」

フザケて演技っぽく言ってみた。


 肩を軽く叩かれる。

「ハハ……自意識過剰だろ。

俺の歴代の彼女見てきたろ?全然お前に似てねえよ!

 ただ単に周りに出会いがないから今一人なんだよ!」

「ごめんね〜俺だけ結婚して幸せになって〜。

お前の叶わぬ恋も応援してるよ〜」

「いやいや、そのうち俺も結婚するから!

可哀想な感じで言うの止めてくれ!」


「でも結婚したら幸せってよく思われがちだけど、そうでもないって……」

「いや、それお前が言うなよ」


「おとぎ話では、『王子様と結ばれて幸せに暮らしました』で終わり。

 その先が長いのにそこまでで話は終わるんだよ!

 何でかわかるか!? 

それからはお話に出来ないような壮絶な日々が待ってるからだ! 綺麗な絵物語に出来ないから描かれないんだよ!

 それからの話を書いてしまったら、誰も結婚したいと思わなくなるから、そうなっているんだと俺は考える。しかも子供たちに話せる物語ではなくなるだろう。

 子供に夢を与える為のおとぎ話が、現実を思い知らされる教育本に変わるのだ……」


「もうやめてくれ……お前と話すと結婚が遠のいていくよ。俺の結婚を妨害するための手段で敢えて話してるならもう完璧だ……」


「ごめんごめん! でも結婚も幸せよ?」

「いやもう遅い!」




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