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二度目の人生は「ゆるりと」生きることに決めました  作者:


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24/43

【24話】夏の模様替え

春のやわらかさが少しずつ薄れて。


気づけば、窓から入る風にも少しだけ熱が混じるようになっていた。


「……夏、ですね」


庭の花は元気だけど、日差しはだんだん強い。


庭先の席も、昼間は少し暑そうだった。


私は店の中を見渡す。


木の椅子。

木の机。

最初に最低限そろえた棚。


落ち着く。


でも。


「……少しだけ、変えてみてもいいかもしれません」


最近、少しずつお金も増えていた。


香辛料騒動。

レシピ代。

その後も、定期的に行商人がレシピ代としてお金を持ってくる。


「先生の好きそうなもの持ってきました!」


と言いながら、たまに妙なものを買わされたりもするけど。


それでも以前より、暮らしに使えるものが増えた。


必要なものに、ちゃんと使えるくらいには。


だから。


「……少し、居心地よくしましょうか」


数日後。


——からん。


「こんにちは」


「先生!!」


「違います」


いつもの。


「何かありました?」


「家具って、扱ってませんか?」


「家具」


行商人は少し考えて、それから指を鳴らした。


「知り合いいますよ!」


「本当ですか」


「腕はいいです!ちょっと無口ですけど!」


「それは別に」


「あと少し高いです!」


「大事な情報ですね……」


数日後。


紹介されたのは、家具職人だった。


大柄で無口。


でも、持ってきた見本は丁寧だった。


木目のきれいな机。

背もたれのやわらかい椅子。

細工の控えめな棚。

窓辺に置けそうな細長い台。


「……いいですね」


派手じゃない。


でも、ちゃんとあたたかい。


私は少し考えて。


「夏なので」


家具職人が静かに頷く。


「涼しげな感じ、か」


「はい」


選んだのは、


明るめの木材。


少し低めで、圧迫感の少ない机。


座面に涼しい布を張った椅子。


白や淡い青の布。


窓辺には風を通す薄いレース。


それから。


庭の花が見えやすいように、窓際の配置も少し変えることにした。


「……大仕事ですね」


でも、やると決めたら少し楽しい。


机を動かして。


棚を整えて。


古い配置を変える。


「……重い」


思ったより、だいぶ重い。


途中で少し後悔した。


「……これは、一人でやる量じゃなかったかもしれません」


でも。


少しずつ。


本当に少しずつ。


形になっていく。


昼の光が入りやすくなった。


風が抜けやすい。


前より少し広く見える。


木のぬくもりはそのまま。


でも、春までより少しだけ軽やか。


涼しげで。


やわらかい。


窓辺には、サシェ。


棚には花。


小さなガラス瓶に、色づいたハーブ。


「……」


私は、店の真ん中で立ち止まる。


「……いいかもしれません」


前より。


少しだけ。


“私の店”になった気がした。


そして、翌日。


——からん。


「こんにちは!」


ルゥ。


「……あ」


続いてミア。


二人とも、入った瞬間に少し止まった。


「……すごいです」


ルゥが、きょろきょろと店内を見回す。


「なんだか、やわらかい感じ……!」


ミアは窓辺を見る。


「風、いい」


「……そうですか?」


「はい!」


ルゥは新しい椅子にそっと座る。


「……あ、座りやすい」


「本当だ」


ミアも短く頷く。


「前も好き。でも、今も好き」


「……」


なんだか、その言葉が少し嬉しかった。


変えた。


でも、変えすぎてはいない。


前の落ち着きも。

今の涼しさも。


ちゃんと、ここにある。


「夏っぽいですね」


ルゥが窓辺の薄布を見る。


「少しだけ」


「ううん、かなりです」


「……そうですか?」


ミアが、窓辺のサシェを揺らす。


ふわり、と香る。


「いい店」


短いけど。


たぶん、すごく褒めている。


「……ありがとうございます」


外は少し暑い。


でも。


店の中を抜ける風は、心地いい。


新しい季節。


少し増えたお金。


少し育った店。


派手じゃない。


大きくもない。


でも。


ちゃんと、自分で選んで。


少しずつ整えて。


ここは、また少し好きな場所になった。


「……夏も、悪くないですね」


風が、白い布をやさしく揺らした。

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