79 魔王降臨
「失礼します、フランソワーズです」
波乱続きの土曜だった。日が傾いてきているが、私はベールやメガネで、瞳の色を隠そうとはしていない。
「入りなさい」
コノハ様の声。ここは元女王の私室だ。意を決し、私室へ足を踏み出す。
「婚約おめでとう、フラン」
サクラの可愛いけど能天気な声だ。私と同様に、学園の制服を着ている。
私とクロガネ様は、女王コノハ様の私室に呼び出された。用件は、解っていた。サクラの件だ。
「まだ婚約契約書へのサインが終わっておりません、魔王様」
サクラの姿になった王弟殿下の呪いを解いた時、サクラは、王弟殿下と魔王の二体に、分離したのだ。
「よそよそしいのは無し。私たちは親友でしょ」
魔王……いや、サクラがふくれっ面になった。以前と変わらぬ可愛い顔だ。
「魔王の封印は解けたが、以前のような凶悪な存在ではない。これまでどおりの親友でいて大丈夫だ」
元女王コノハ様が太鼓判を押してくれた。
「うん、大丈夫だよ」
サクラの能天気な声だ。
「サクラは、闇に落ちる前の、聖女に戻ったことですか?」
「そうだよ」
サクラは、学園の制服のズボンを少し下ろして、パンツを見せてくれた。
小さく可愛い女性用の……いや、コンテスト用のビキニパンツだった。
「女性なのは、わかりましたが、聖女が、フィットネスのコンテストに出場するのですか?」
「フランも一緒に出場してみる?」
「私は、肌を出すのは……困ります」
チラッとクロガネ様を見ると、後ろを向いていたので、クスッと笑ってしまった。
「聖女に戻ったサクラは、勇者への想いはどうなったの?」
「もう無いよ、断捨離だね」
ケロリと、サクラが答えた。恋愛ってそういうものなの?
「もう百年も経って勇者は亡くなっているし、勇者の黒い宝石を受け継いだのは、そのクロガネだし……オレも新しい恋がしたい」
オレ……言葉遣いが直っていない。どこが聖女なんだ?
いやまて、「そのクロガネ」って、どういう意味だ?
「そこの勇者の子孫は、フランにあげるから」
クロガネ様を指さし……王族を指差すな!
「約束、ゲンマンしよう」
私とサクラは、勇者の黒い宝石を持つクロガネ様は私専用だと、ゲンマンした。
サクラの説明によると、コノハ様、クロガネ様、ルナちゃんが勇者の血筋を受け継いでいるらしい。
私は、僧侶の血筋を受け継いでいるらしいが、女神の祝福の方が強いみたい。そして、魔王を封印した勇者パーティーに、青緑や紫色の宝石を持っている者はいなかったらしい。
お読みいただきありがとうございました。
よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品を評価して頂ければ幸いです。




