75 目覚め
「聖女判定は、どうなりました?」
私は、救護室で目が覚めた。聖女判定の途中で、また泉に落とされて、気を失ったらしい。
「落ち着いてください、説明しますので」
涙を拭いたハンカチを、自分でしまおうとしたが、マーキュリーさんから、侍女の仕事だと取り上げられてしまった。
侍女マーキュリーさんの説明は……
聖女判定で、私が聖女だと判定された。
しかも、女神の光を見て、誰もが、私は女神であると信じて疑わなかった。
私を水の中から救い出したのは、また王弟殿下であった。私を抱いてくれたご主人様の温かい手……あれは王弟殿下の温もりだったのだろうか。
納得していないのは、第一王子、第二王子、そしてイライザであった。
この3名は軟禁されたという。
「この三名の処罰をどうするか、国王陛下と王弟殿下で検討しているところです」
「私を、泉に突き落とした罪ですか?」
「それも大きいのですが……王子二人は、令嬢へのセクハラ、違法な金銭の授受、機密情報の漏洩など、多くの罪が明らかになっています」
たぶん、国王として、国民に姿勢を見せるため二人の王子を厳罰に処したいが、二人を推している派閥が反対するだろうし、まして二人は国王の息子である。厳罰にすることは出来ないかもしれない。
「お知らせすることがもう一つあります。聖女判定は終えましたが、さらに重大な話があるそうで、フランソワーズ様が目覚めたら、謁見の間に、王族と主要な貴族が集まることになっております」
聖女判定よりも重大な話……たぶん、宝石が参加者から読み取ったデータのことだ。聖女ソフィアの表情の変化から、何か、王国を揺るがす結果が出たのだろう。
「フランソワーズ様も参加する必要があるそうですが、体調はいかがですか?」
「大丈夫です。私が気を失ってから、どのくらい経ったのですか?」
「ここに運ばれてから5分程度です」
意外に早い回復だった。
「制服が乾いている……クリーン魔法をかけてくれたのですね、ありがとうございます」
私は制服姿のままベッドに横になっていた。パジャマに着替える前だったようだ。
「直ぐに、謁見の間に向かいます」
「急ぐことはない」
カーテン越しに王弟殿下の声がした。サクラの可愛い声も良いが、王弟殿下の声は渋く、懐かしくて、暖かくて、心地よい。
「クロガネ様、会議のほうは終わったのですか?」
マーキュリーさんは驚いている。予想以上に早かったようだ。
「終わった……」
王弟殿下の声が沈んでいる。処罰の内容はどうなったのだろう。
「カーテンを開けても良いか?」
「服を着ているのであれば」
マーキュリーさんが、すかさず答えた。
「ちゃんと履いているって」
カーテンを開けた王弟殿下は、王族の儀式に使う正装に着替えていた。そうか、王弟殿下も濡れたんだ。
「王弟殿下、私を救いあげていただき、ありがとうございました」
「起きなくていいから」
上半身を起こそうとした私を、彼は止めてくれた。
「では、上半身だけで」
ベッドの上で、上半身を起こした。手足に力が入るし、痛い所もない。
「昨日の、俺の呪いを解いた時、この本が召喚された。聖女ソフィアの力ではない、何か別の想いが働いたようだ」
王弟殿下が、一冊の本を見せてくれた。
「この本は、なぜか硬く閉じられていて開くことが出来ない。表紙も異世界の文字のようで読めない。俺の手に負えない品物だ」
「フランソワーズなら、読めるのではないか?」
私は、召喚された本を手に取って……
「この本の題名は、恋愛小説『聖女の七日間』……ご主人様が書いた小説です」
涙が落ちた。いつか、私の前世の話を、王弟殿下は聞いてくれるだろうか。
お読みいただきありがとうございました。
よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品を評価して頂ければ幸いです。




