74 温かい記憶
「目を覚まして!」
ご主人様の声だ……でも、私は眠たくて、目が開かない。
「貴女が主人公の物語が出来たのに、なんで!」
うっすらとご主人様が見える。泣いているの?
そうだ、猫の私は、バスタブの、冷たい水の中に落ちたんだ。
「貴女が幸せになる小説! 出版が決まったのよ!」
がんばって書き上げた恋愛小説だね……おめでとう、ご主人様。
ずぶ濡れの私を抱いてくれた手が、温かい……
「ネコが幸せになる物語だよ、聞いて」
私は十分に幸せだったよ。
……ニャーン……お礼を言いたいけど、声が出ない。
ずぶ濡れの私を抱きしめてくれた。
ご主人様も濡れちゃうよ……
「ネコを幸せにするから、約束するから!」
◇
「お目覚めですか、フランソワーズ様」
侍女マーキュリーさんの優しい声だ。
この天井には見覚えがある。ベッドが少し硬く、周りが薄水色のカーテンで個室として仕切られている。ここは王宮の救護室だ。
ご主人様の部屋ではなかった……
「フランソワーズ様、どうか、これをお使い下さい」
そう言いながら、マーキュリーさんは、私にハンカチを渡してくれた。
自分でも分かる……私は、泣いていた。
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