71 聖女判定
「これが聖女を判定する宝石です」
青空の下、王宮の聖女の泉の前には、聖女判定のため、簡易ながら特別ステージが設けられている。
参加者は、私と同様に、友好国の聖女は清楚な令嬢だと思っていたらしく、特別ステージに立つ冒険者のような姿のソフィアに、あっけに取られている。
友好国の聖女ソフィアは、特別ステージから降りて、赤く四角い宝石を参加者全員に見せた。
「どうぞ、手に取ってご覧ください」
一番前の席に座る国王に、赤い宝石を渡した。
「この小さな四角い宝石が聖女を判定するのか?」
国王が、赤い宝石を手に取って眺めた後、横に座る正妃に渡した。
「四角い宝石なんて、初めて見ました。意外と軽いですね」
正妃も、赤い宝石を手に取って眺めた後、さらに横に座る側妃へと渡した。
赤い宝石を、次々と、参加者が手に取っては眺め、次の参加者に渡していく。
そして、赤い宝石が、聖女の手元に戻された。
久しぶりに公の前に姿を現した王弟殿下は、聖女ソフィアをサポートするように、ステージの側で控えている。
私は、少し離れた場所で、立ったまま、赤い宝石を皆が手に取る様子を観察した。赤い宝石が何をしたのか、なぜかわかる。
赤い宝石は、手に取った参加者から、あるデータを読み取っていたのだ。
「これは……」
聖女ソフィアが、赤い宝石を見て、というか、瞳に投映された画像から、何かに驚いたようだが、参加者には悟られないようにしている。
赤い宝石は、普段以上に、その処理能力が高まっている。私の青緑色の宝石が、アンプとタンクの力で手助けしているからだ。
◇
聖女ソフィアは、コノハ様へ目で合図した。始まりそうだ。
「では、聖女判定を開始します」
聖書台に置かれた赤い宝石から、赤く光が軽く立ち上った。
「「おぉ!」」
「聖女候補の方は、一人ずつ、この宝石に手をかざして下さい」
聖女ソフィアが、儀式を進める。
「まずは、クロガネの侍女たちからだ」
女王コノハ様が、指示した。六名の侍女たちが立ち上がり、特別ステージへ進む。
侍女マーキュリーさんが手をかざすと、赤い光が炎のように揺らめいた。
「心清らかな令嬢でありますが、聖女ではありません」
侍女全員が同じだった。6名とも、心清らかな令嬢ではあるが、聖女ではなかった。十年ほど前の聖女判定と、結果は変わらなかった。
「癒しの魔法を使えるから聖女なのではありません。聖女には、もっと大きな使命があるからです」
友好国の聖女は、6名の侍女による治癒魔法と聖女降臨のことを言っているだろうか?
いや、聖女は『国を勝利に導く者』だと言いたいのだろう。
「次は、王女ルナだ」
ルナちゃんが手をかざすと、赤い光が渦を巻いた。
「驚いたな、この令嬢は、聖女ではないが、勇者パーティーの血を引いている。勇者の遠縁だ」
聖女ソフィアが、感心している。
「「おぉ!」」
会場がざわめく。
「まさか……もしかして、女王コノハ様も手をかざして頂けませんか?」
聖女ソフィアが、面白がっている。
「いいでしょ」
女王コノハ様が手をかざすと、赤い光が渦を巻いた。
「女王コノハ様も、勇者の血を引いていますね」
「そうだ、直系ではないが、わがはいは、勇者の血筋を受け継いでいる」
「「おぉ!」」
会場がざわめく。
「そして、新しい王女となったルナは、養子ではない、私の血筋を受け継いだ実の孫だ」
「「えぇ!」」
参加者のどよめきの中、国王が、正妃と側妃から、にらまれている。
お読みいただきありがとうございました。
よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品を評価して頂ければ幸いです。




