68 友好国の聖女
「フラン!」
サクラが、聖女の泉に走ってきた。かなり慌てている。
「あら、驚きました。面白い令嬢ですね」
聖女ソフィアが、サクラを見て、つぶやいた。
「お顔が、封印された魔王とソックリ」
「魔王!」
え! そういえば、コノハ様もサクラを見て驚いていた。でも、魔王は、ないでしょ!
「貴女は……まさか、クロガネ!」
彼女の言葉に、私とサクラは、これまでにないくらい驚いた。
ひと目で、サクラが王弟殿下だと見抜いた……聖女ソフィアは、只者ではないようだ。
◇
「ここが、クロガネが召喚に失敗した場所ね」
友好国からの聖女ソフィアが、召喚の聖堂を吟味した。床面に描かれた魔法陣の六ボウ星から、何かを感じ取っているようだ。
「失敗ではない、邪魔されたんだ」
「クロガネは、異世界の聖女と結婚したかったの?」
「イベントの目玉にする予定だった……」
サクラ姿の王弟殿下と、聖女ソフィアは仲が良い。というか、聖女ソフィアがリードしている。
「聖女様と王弟殿下は付き合っているのですか?」
思い切って、訊いてみた。
「まさか、オレは独身を貫くと、決めたんだ、ウソではない」
サクラは、否定した。
「クロガネが留学していたとき、付き合ったけどね」
聖女ソフィアは、認めた……覚悟はしていたけど、一瞬、目の前が暗くなった。
「やめろ、昔のことだ」
動揺する王弟殿下……本当なんだ。
「聖女様は、フラれたのですか?」
「まさか、振ったのよ」
う〜ん、たぶん本当だ。侍女たちから聞いていたウワサと合致する。
でも、素直に喜べない。
「それから、私は『聖女』と呼ばれているけど、本当は『賢者』なのよ」
賢者? 魔法使いであり、勇者を補佐する冒険者のことだ。
「フランソワーズ様は、この王国の王子と婚約すると聞いていたんだけど、誰か想い人がいるの?」
聖女ソフィアが私の顔をのぞき込んだ。
「私は、二人の王子のどちらかと結婚なんて、嫌です」
心に芽生えた怒りを、王弟殿下にぶつける。八つ当たりだ。
「オレでは、どうしようもない」
「クロガネは、まだ、自分の本心を言えないのね」
え? 王弟殿下の本心……どういうこと?
「留学の時、私をさらっていけば良かったのに」
「出来るわけないだろ、国際問題になる」
何なんだ、この二人は!
「フランソワーズ様、心配しないで」
聖女ソフィアから、なぜか慰められた。
「まだ詳しくは言えないけど、女王コノハ様から、ある調査を頼まれているから」
私の知らない所で、何かが動いている。
「さて、クロガネを元の姿に戻しましょう。その魔王の姿だと、落ち着かないわ」
聖女ソフィアが、何やら準備を始めた。
「ずいぶんと楽しそうね」
元女王コノハ様が、召喚の聖堂に入ってきた。
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