67 冒険者
「学園は休みなのに、私は土曜日であっても、忙しいのか……一般寮なら、いつまでも寝ていられたのだろうか」
不健全な考えを捨てて、朝早く、学園の制服に着替えて、王宮の聖女の泉の前で、王国の平和を願って、女神像に祈りをささげる。
私の私服は、エメラルティー侯爵の屋敷が閉じられたままなので、王宮に届いていない。最近は、この制服姿にすっかり慣れた。慣れって恐ろしい……
気持ちの良い青空だ。こんな日は、女神の祝福を感じることができる。いつも私を見守っているような、優しい視線を感じる。
今日は、友好国から聖女が来る。泉の前では、イスを並べるなど、すでに迎える準備が整っている。
「もしかして、フランソワーズ様ですか?」
後ろから、冒険者姿の旅人から声をかけられた。
革の軽鎧、砂ホコリで汚れた茶色の服、背の丈もある長いまっすぐな杖を持ち、顔は茶色のシュマグで隠されている。
「……どちら様ですか?」
王宮の正門から、ラフな姿の冒険者が入り込めるはずがない。不審者かもしれないと、私は警戒した。
「失礼しました。同じ力を持つ令嬢と初めて出会ったもので、興奮してしまいました」
女性の声だ。顔に巻いていたスカーフの様な布、シュマグを外した。
白い髪に、白い肌、赤い瞳の女性だった。
「始めまして、女王コノハ様から招かれて、友好国から来た聖女ソフィアです」
見た目は冒険者だ。聖女ってイメージと、かけ離れた姿だ。
「貴女が、聖女様! 瞳が紫色じゃないですよね?」
友好国の聖女と名乗った彼女は、澄んだルビーのような赤い瞳だった。
「あら、クロガネから聞いてないの?」
そういえば、サクラは、紫ではないと言っていた。忘れていた。
聖女と名乗る彼女が、王弟殿下を名前で呼んだということは、二人は親しいのか? まさか、ウワサの……
「まぁいいわ」
あれ? 急に口調がラフになった。
「この宝石、見たことある?」
胸から、赤色の四角い宝石を取り出して、見せてきた。
この宝石……たぶん、本物の聖女だ。少なくとも、私の敵ではない。
「色は違いますが、同じ形の宝石を持っています」
胸から、青緑の四角い宝石を取り出して、見せた。
「宝石同士が、共鳴しているね」
聖女ソフィアの言うとおり、宝石が少し振動しているようだ。
「ですね……情報を並列化していますね」
「並列化とは、なんです?」
あ、並列化は、この世界では使わない言葉なんだ。
「自分の記憶を相手に渡して、相手の記憶をもらうことです。それによって、宝石は成長するようです」
前世の知識で答える。
「よく知ってるわね」
彼女になら、話しても大丈夫だろう。
「私……前世の記憶があるんです」
「そうなんだ」
やはり、彼女は、前世の話をしても、驚かない。
前世の知識に、何度も触れてきたのだろう。でも、「そうなんだ」の一言で、済ますか、普通?
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