52 筆頭侯爵令嬢
「フランソワーズ女男爵、これはどういう事ですか!」
木曜日の午後、教室で、筆頭侯爵令嬢のイライザが私を問い詰めに来た。
「国王が養子をもらうって、本当なのザマスか!」
興奮して悪い口癖が出てきている。筆頭侯爵も興奮すると同じ口癖が出る。さすが親子である。
「落ち着いてください、イライザ様」
彼女以上に、私だって驚いているのですから。
「これが落ち着いていられますか!」
やはり、彼女は、心の奥底では王妃の座を狙っているようだ。
「中等部の令嬢だと聞きました。後ろ盾は誰ですの、教えなさい!」
「わかりかねます、イライザ様の婚約者である第一王子と、第二王子に訊くべきでは?」
本当は、養子を宣言した元王女コノハ様に訊くべきだが、さすがのイライザでもそんな無茶はできないだろう。
「女好きの二人が、わかるわけないでしょ!」
あ、彼女も、王子二人が女好きなことを解っているんだ。
「ん、中等部であっても令嬢……女好きの二人なら知っているかも」
いやいや、イライザ。いくら女好きでも、デビュタント前の中等部の令嬢を……
いや、ルナちゃんは美人なので、あの二人なら、もしかすると、もしかするかも。
「わたくしが、どちらの王子と政略結婚するかで、政治のバランスが決まることは、解っているザマスよね」
国王は、筆頭侯爵の妹を正妃にして、次席侯爵の妹を側妃とし、政局の安定を図った。
筆頭侯爵令嬢がどちらの王子と……いや、逆だろ。二人の王子のどちらが筆頭侯爵令嬢と結婚するかが問題だ。
「そうですわ、わたくしは、第一王子と第二王子とも結婚して、両手に花とします。まるで、正妃と側妃を持つように」
え〜と、王国の法律上はどうなんだろ。国王は一夫多妻を認められているが……王妃に一妻多夫は認められているのだろうか?
子を授かったら、父親はどちらに……いや、考えるだけ無駄だ。
「王子二人の愛を受け入れる、素晴らしい案でしょ」
それを自分勝手と言うんだ。
「両手に花、燃えるような恋、ステキ……」
「そして、三角関係という、愛に燃えるの。二人の王子が、わたくしを奪い合うのよ」
三角関係に憧れているの? それは修羅場になるだろうに。物語の中だけにしてほしい。
「そうだ、フランソワーズ女男爵を側妃にしてあげますわ。わたくしがパーティーを担当しますので、貴女は内政を担当しなさい」
え? イライザ、冗談が過ぎます。でも、もしかしたら、私が側妃になって手腕を発揮したら、政局は安定するかも。
だめ、勘弁して、そんな政略結婚の話、あの二人の王子なら本気にするから!
「聖女は、何人もの男性に囲まれていたと伝わっています」
勇者パーティーに聖女がいたとすれば、紅一点だけど……
というか、そもそも勇者パーティーに聖女なんていたのか怪しい。勇者と僧侶、賢者の三名だったんじゃないの?
「わたくしは聖女です。つまり、何人もの男性に囲まれる運命なのです」
「決まりました、わたくしはハーレムを作ります!」
イライザの紫色の瞳が、輝いている。教室のみんなからは、生気が抜けていった。
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