51 秘密の宝石
「秘密ですが、これが私のお守りです」
イヤリングを王族専用個室の机の上に置き、胸から、不思議な四角い宝石を取り出して、サクラに見せた。
ん? サクラは後ろを向いていた。
「これを見て……この四角い石も、陽の光では青緑、月の光では紫に変色します。そして、ローソク魔法の下でも変色します」
「まさか……」
サクラが目を見開き、四角い宝石をのぞき込む。ドミノというゲームのブロックみたいな四角い宝石だ。
「さらに、面白い性質を持っているのですよ」
「私の魔力を吸い続けており、石の中に膨大な魔力がたまっているのです」
これが、私が魔力ゼロと判定される原因だ。
「でも、おかげで、魔法を使う時に、瞬時に膨大な魔力を引き出せて、高位魔法でも詠唱無しで発動出来ます」
例の聖女降臨の時に使った膨大な魔力だ。
「膨大な魔力で、王都全体にクリーン魔法を発動させたのに、この四角い石には、まだ膨大な魔力が残っています」
この宝石の力には、底というものが見えない。
個室の遮光カーテンを開けて、日光を取り込む。
四角い宝石の色が、紫から青緑に変わった。
同時に、私の瞳も、紫から青緑に変わった。
「触ってもいいか?」
「大丈夫よ」
サクラが、四角い宝石に触った、その瞬間……
「ウッ!」
一瞬だが、サクラが、王弟殿下の姿に変わった……ような気がした。
「魔力が吸われる。恐ろしい宝石だな」
サクラに異常はない。私の見間違いだったようだ。
「私は何ともないけど……イヤリングなら魔力を吸わないので、手に取って見る?」
机の上に置いたイヤリングを、サクラに渡した。彼女は、恐る恐るつまんだ。
「大丈夫なようだな……」
サクラの真顔も、可愛い。
「鑑定できるの?」
「うん、偽物じゃないことを見分ける程度だけど」
サクラは、真剣に宝石をのぞき込んでいる。
「この宝石は、希少なアレキサンドライトかも……オレも文献で読んだ知識だが」
アレキサンドライト? 初めて聞く名だ。
「クズ石とやらは、そのイヤリング以外に、まだたくさんあるのか?」
小さなクズ石のイヤリングなんて、領地に帰れば、捨てるほどある。私は、うなずいた。
「このイヤリングをオレに貸してくれないか」
サクラは、部屋を遮光カーテンで暗くして、ローソク魔法の灯りに戻した。
薄暗い部屋の中、イヤリングの青緑色の宝石は、紫色に変わった。私の瞳も、紫色に変わっているのだろう。サクラが私の瞳を凝視している。
「間違いないだろう、これはアレキサンドライトという貴重な宝石だ」
聞いたことのない名前だ。エメラルドではないの?
「クズ石などではなく、外貨を稼げる貴重な宝石……これが出回れば、宝石の相場が暴落する」
まさか、エメラルドよりも高価な宝石だったの?
「アレキサンドライトは、王家で管理することになるだろう」
王家で管理って……侯爵家の領地はどうなるの?
「まずは、国王へ献上してはどうだ。褒美として、侯爵の爵位を取り戻そう」
もしかして、爵位をお金で買うってこと? 頭が混乱して、冷静になれない。
「侯爵令嬢であれば、王族と結婚できるのだろう?」
私はハッとした。あの腐れ王子たちとは結婚したくないが、幼い頃から想っていた王族は、いる……もしも、願いがかなうなら……
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