42 元女王との謁見
「フランソワーズ女男爵、そして王弟殿下の侍女六名全員を、コノハ様がお呼びです」
ノックの後、王弟殿下の寝室に入ってきたのは、国王専属メイド長だ。元女王コノハ様が、私たちに招集をかけたとのことだ。
紫の瞳を持つ侍女が、急いで、マーキュリーさんへ報告に向かう。
これから何が起こるのだろうか?
◇
「オレも同行する」
廊下で、サクラと、マーキュリーさんたち侍女全員と合流した。
「サクラ様、女王コノハ様の御前ですよ、よろしいのですか?」
侍女マーキュリーさんがサクラを心配した。
「いつかは話す事になる、その時が早く来ただけだ」
廊下を歩いていると、すれ違う人たちが、チラチラと見てくる。私たちは、注目の的のようだ。
「フラン聞いてくれ……王弟殿下は、異世界の呪いによって、姿を出すことができない。聖女ハーレムの話は、全くのデタラメだ。信じてくれ」
サクラが、この状況と関係ない話を言い出した。彼女が空気を読まないのは、いつものことだが、今、このタイミングでか?
「サクラ様、午前の出来事で、私たち王弟殿下の侍女は聖女だと騒ぎになっています。その騒ぎを収めることを優先して下さい」
侍女マーキュリーさんが止めてくれた。
そのやり取りがおかしくて、緊張が和らいだ。
◇
謁見の間で、元女王を待つ時間……いつもながら、何を言われるのか分からないため、胃が痛くなる時間だ。
今回は、たぶん王都への聖女降臨の件だろう。内緒で行なったことを罰せられるのか、王都を救ったと褒められるのか……どっちかだ。
元女王が入室すると、部屋の空気が、ピンと張り詰めた。
「貴女の名前は?」
え? 謁見の間に入ってきた元女王コノハ様が、私よりも先に、同行してきたサクラに名前を聞いた。
席には座らず、開口一番、サクラに話しかけたのだ。
「サクラと申します。友好国から来ましたので、家名はありません」
サクラは落ち着いている。
「わがはいの目は節穴ではない……ハァ~、なんという姿だ」
元女王コノハ様がため息をついた。
「フランソワーズ。今回の『聖なる水』を用い、高熱の患者の苦しみを和らげたことに、感謝する。褒美については、騒動が収まってから考えるので、しばし待て」
元女王から褒められた。憧れの女性から褒められるのは、天に昇るほどうれしい。
「それと、クロガネの侍女たち。王都全体へのクリーン魔法で国民を救ったことに、感謝する。褒美については、爵位を授与する考えだが、しばし待て」
侍女たちがクリーン魔法を使ったことは、バレていた。
元女王は侍女たちも褒めてくれた。この王国では、爵位は男性が継いでいくもので、爵位が新たに授与されること、しかも女性に対しての授与は、滅多にない。
「褒美の授与よりも、今は聖女降臨の騒動を鎮めるのが先だ。何をしたのか、説明しろ」
元女王は、侍女のほうではなく、私を見ている。これは、逃げることはできない。
「私が、侍女たちに魔法の使用を命じました」
しかたなく、白状した。
「そこではない。膨大な魔力をどうやって生み出した? フランソワーズは『魔力ゼロ』と聞いている」
マズい、この宝石のことは、言えない。未知の宝石だからだ。
「エメラルティー侯爵家に伝わる秘術です」
とっさに言ったが、ウソではない。私が物心ついた時から持っていた宝石のことは、父から、誰にも言うなと命じられている。
「百年前、勇者パーティーたちは、各々が異世界の宝石を持っていたとの言い伝えがある。知っているか?」
ん? 勇者パーティーが持つ異世界の宝石……ご主人様の小説の話なのか?
「初めて聞きました。どのような宝石ですか?」
「わがはいも見たことは無い……友好国の聖女が、持っていると聞いている」
私の他にも、この不思議な宝石を持っている人がいるのか。会ってみたいな。
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