明日を託す日
ラウゼンへ迫る、一万の魔改造軍団。
援軍が間に合う保証もない中、ザインたちは戦う覚悟を決めました。
しかし――。
獣王国。
そして、エルフの国。
ザインがこれまで築いてきた縁が、今度は大きな力となってラウゼンへ集います。
第60話「明日を託す日」
よろしくお願いします!
ラウゼン王国。
朝。
復興の音が消えた街には、代わりに武器と鎧の音が響いていた。
城壁の上。
ザインは遠くの街道を眺めていた。
「……お」
視線の先。
こちらへ向かってくる、大きな軍勢。
一つではない。
別方向からも、もう一つ。
風に靡く旗を見て、ザインは目を細めた。
「……意外と早かったな」
隣に立つレオニスも、僅かに安堵したように息を吐く。
「ああ。私も驚いている。連絡を送ってから、まだそれほど経っていない」
「急かしすぎたんじゃねぇの?」
「一刻を争う状況だったんだ。仕方ないだろう」
「まあ、来てくれたなら何でもいいか」
ザインは城壁から離れる。
「行こうぜ。せっかく来てくれたんだ」
◇
城門。
巨大な門が開く。
最初に入ってきたのは、獣王国軍。
人間よりも一回り大きな体躯を持つ者。
巨大な武器を背負う者。
鋭い牙や爪を覗かせる者。
見るからに近接戦に長けた獣人たちが、次々とラウゼンへ入ってくる。
そして。
その先頭。
見覚えのある男。
ザインの口元が上がる。
「レグルス!」
声に気づき。
レグルスもザインを見る。
「ザイン!」
歩み寄る二人。
ザインは、その後ろに続く軍勢を見る。
「すげぇ数連れてきたな」
「当然だ」
「もっと掛かると思ってた」
レグルスが鼻を鳴らす。
「借りを返す機会を、他の誰かに取られてたまるか」
「借り?」
ザインが首を傾げる。
「俺、なんか貸したっけ?」
「……お前は本当に」
レグルスが呆れる。
「こちらが勝手に借りだと思っているだけだ。気にするな」
「なら気にしねぇわ」
「少しくらい気にしろ」
ザインが笑う。
レグルスも小さく笑った。
そして。
「獣王陛下から伝言だ」
「ん?」
レグルスは少しだけ姿勢を正す。
「『頼れと言ったはずだ』――とのことだ」
ザイン。
一瞬。
目を丸くする。
それから。
「……ははっ」
小さく笑った。
「じゃあ、遠慮なく頼らせてもらうわ」
「ああ」
レグルスは拳をザインへ突き出す。
「そのために来た」
ザインも。
拳を合わせる。
「助かる」
その時。
別方向から。
声。
「ザイン!」
「ん?」
振り返る。
今度は。
エルフ国軍。
獣王国軍ほど人数は多くない。
だが。
ザインでも分かるほど、一人一人から濃密な魔力を感じる。
その先頭から。
一人の男が歩いてくる。
「エリオン」
「無事そうですね」
「見りゃ分かるだろ」
「あなたの場合、その判断が難しいんですよ」
「なんでだよ」
「怪我をしていても平然としているでしょう」
「……まあ」
ザイン。
視線。
逸らす。
「否定はしねぇ」
エリオンがため息をつく。
「相変わらずですね」
ザインはエルフ軍を見る。
「お前らも、随分連れてきたな」
「当然です」
「いや」
ザイン。
レグルスを見る。
「こいつにも言ったんだけどさ」
「はい?」
「なんでそんな迷いなく来てくれんの?」
エリオンは一瞬。
ザインを見る。
そして。
小さく笑う。
「あなたには、我々の里で随分と助けられました」
「だから?」
「それもあります」
エリオンはラウゼンの街を見る。
復興途中の建物。
行き交う兵士。
そのさらに奥。
避難する民。
「ですが」
再び。
ザインを見る。
「あなたが命を張って守ろうとしている場所なのでしょう?」
「……」
「ならば」
エリオンは静かに言った。
「今度は、我々があなたに力を貸す番です」
ザイン。
少し。
黙る。
レグルスが横から笑う。
「諦めろ」
「何をだよ」
「お前がどう思っていようと、俺たちはお前に借りがある」
エリオンも頷く。
「同感です」
「……」
ザイン。
二人を見る。
そして。
頭。
掻く。
「どいつもこいつも律儀だなぁ」
「文句があるなら帰るぞ」
レグルス。
踵。
返す。
ザイン。
即座。
腕。
掴む。
「待て待て待て!」
「何だ」
「それは困る」
「なら素直に感謝しろ」
「してるって!」
エリオンが笑う。
ザイン。
二人を見る。
「……ありがとな」
レグルス。
鼻。
鳴らす。
「最初からそう言え」
エリオンも微笑む。
「ええ。本当に」
「うるせぇな」
少し離れた場所。
その光景を見ていたレオニスが、小さく笑う。
「……随分と好かれているじゃないか」
ザイン。
振り返る。
「人徳だな」
「それは違う」
レグルス。
即答。
「違いますね」
エリオンも。
即答。
「お前らなぁ!?」
僅かな笑い。
これから戦争が始まるとは思えないほど。
ほんの一瞬だけ。
空気が和らいだ。
◇
王城。
作戦会議。
机の上に広げられた地図を囲み、三国の指揮官たちが集まっていた。
レオニスが口を開く。
「敵は、およそ一万」
地図の一点。
ラウゼンへ向かって伸びる進軍経路を指す。
「ほぼ全てが、教団によって何らかの改造を施された兵士と考えている」
獣王国側。
レグルスが腕を組む。
「こちらの戦力は?」
レオニスが答える。
ラウゼン軍。
獣王国軍。
エルフ国軍。
全てを合わせても。
敵の一万には届かない。
「……」
僅かに空気が重くなる。
ザインは地図を眺めながら頬を掻いた。
「まあ」
顔を上げる。
「数じゃ負けてんな」
レオニスがザインを見る。
「随分と軽く言うな」
「重く言ったら増えんのか?」
「増えない」
「じゃあ同じだろ」
「……お前は」
レオニスがため息をつく。
レグルスが小さく笑った。
「ザインらしい」
「だろ?」
「褒めてはいない」
「お前までそれ言う?」
「ともかく」
レオニスが地図へ視線を戻す。
「戦い方を決める」
中央。
「ラウゼン軍は正面。防衛設備を利用し、戦線を維持する」
左右。
「獣王国軍には両側面から敵陣を崩してもらいたい」
レグルス。
頷く。
「任せろ」
「エルフ国軍は後方から広範囲魔法による支援を」
エリオン。
「承知しました」
そして。
レオニスがザインを見る。
「ザイン」
「ん?」
「お前たちは遊撃だ」
「遊撃?」
「ああ。戦線が崩れた場所、強力な敵が現れた場所。その全てに自由に対応してほしい」
ザイン。
少し考える。
「つまり」
一拍。
「好きに暴れていいってことか」
「……お前の場合は、その説明の方が早そうだな」
ザイン。
笑う。
「最初からそう言えよ」
「軍議だからな!」
「はいはい」
ザインが立ち上がる。
「了解」
その後ろ。
ガレス。
ダリオ。
シグ。
ミレイア。
リナ。
直属の五人も立ち上がった。
ザインは振り返る。
「俺らは一番面倒なところ担当だってよ」
ガレスが鼻で笑う。
「いつも通りじゃねぇか」
「だな」
◇
数時間後。
「――敵軍確認!!」
城壁から響いた声。
一瞬にして。
空気が変わる。
兵士たちが一斉に配置につく。
ザインも城壁へ上がった。
遠く。
地平線。
黒い。
最初は。
一本の線。
それが。
徐々に。
太くなる。
近づく。
やがて。
人の形が見え始める。
人。
人。
人。
人。
人。
地平線を埋め尽くす。
黒い軍勢。
ザッ。
ザッ。
ザッ。
ザッ。
足音が重なる。
遠く離れているというのに。
大地を通じて。
振動が伝わる。
兵士たちがざわつく。
「……あれが」
「全部……?」
「一万……」
数字では聞いていた。
だが。
実際に目の前へ現れた一万は。
まるで違う。
ザインも。
黙っていた。
「……」
炎。
悲鳴。
血。
二年前。
一瞬だけ。
視界に重なる。
ザインは目を閉じる。
息を吐く。
そして。
もう一度。
目を開けた。
「……やっぱ」
剣の柄に手を置く。
「見ると多いな」
その横。
ガレスがザインを見る。
「……」
だが。
何も言わない。
ザインも。
何も言わなかった。
やがて。
レオニスが全軍の前へ出た。
ラウゼン兵。
獣王国軍。
エルフ国軍。
数千の視線が。
一人へ集まる。
レオニスは彼らを見渡した。
「諸君」
ざわめきが消える。
「私は今日」
静かな声。
「お前たちに、生きて帰れとは言えない」
兵士たちの顔が強張る。
「敵は一万」
「我々より遥かに多い」
「戦えば」
一拍。
「多くの者が命を落とすだろう」
誰も。
目を逸らさない。
「それでも」
レオニスは続ける。
「私は、お前たちに戦えと命じなければならない」
拳を握る。
「我々がここで退けば」
振り返る。
その先。
ラウゼンの街。
「次に剣を向けられるのは、武器を持たぬ民だ」
「子供がいる」
「家族がいる」
「ようやく戻り始めた、この国の日常がある」
風が吹く。
三国の旗が大きく揺れる。
レオニスは。
再び。
兵士たちを見る。
「だから――」
息を吸う。
「今日は」
一拍。
「明日を生きる民のために」
「己の明日を捨てて」
声が響く。
「戦ってほしい」
静寂。
あまりにも。
残酷な言葉。
だが。
レオニス自身。
それを理解している。
だから。
誤魔化さない。
「これは、身勝手な願いだ」
「それでも――」
胸へ手を置く。
「この国の明日を」
全員を見る。
「私に預けてくれ」
一秒。
二秒。
一人の兵士が。
槍を掲げる。
「おおおおおおお!!」
次。
剣。
「おおおおおお!!」
また。
次。
次。
そして。
数千の声が。
一つになる。
「おおおおおおおおおおおおお!!」
大地。
震える。
ザインは。
その光景を黙って見ていた。
やがて。
後ろを振り返る。
ガレス。
ダリオ。
シグ。
ミレイア。
リナ。
「……聞いたか、お前ら」
ガレスが答える。
「ああ」
他の四人も。
ザインを見る。
ザインは剣を抜いた。
「俺らは今回」
剣を肩へ乗せる。
「最高火力だと思え」
五人の表情が変わる。
「俺らが一人多く殺せば」
「その分だけ」
後ろ。
兵士たちを見る。
「誰かが一人生き残る」
再び。
敵軍へ。
視線。
「ラウゼンの明日を確保したけりゃ――」
ザインの目が鋭くなる。
「躊躇うな」
一拍。
「殺せ」
さらに。
「殺して」
「殺して」
「殺しまくれ」
ガレスが苦笑する。
「相変わらず酷ぇ激励だな、ザイン」
ザインが見る。
「王子様より分かりやすいだろ」
「まあ」
ガレス。
剣を抜く。
「否定はしねぇよ」
ダリオが武器を握る。
「命令、承知しました」
リナも前を見る。
「やることはいつもと同じですね」
シグ。
短く。
「問題ない」
ミレイアは杖を握り締める。
「支援は任せてください、隊長」
ザイン。
笑う。
「頼んだ」
◇
敵軍。
さらに。
近づく。
レオニスが手を上げた。
「全軍!!」
ラウゼン兵。
盾。
前へ。
槍。
構える。
獣人たち。
低く。
姿勢を取る。
エルフ軍。
一斉に杖を掲げる。
「構え!!」
空。
魔法陣。
一つ。
二つ。
十。
数十。
大量の魔法陣が空を埋める。
ザインが見上げる。
「……派手だな」
リナが横から言う。
「見惚れないでください、隊長」
「綺麗だろ」
「今から人を殺す魔法ですよ」
「……それもそうだな」
レオニスが敵との距離を見る。
そして。
手を振り下ろした。
「――放て!!」
瞬間。
空が光る。
炎。
氷。
雷。
風。
無数の魔法。
一斉に。
降り注ぐ。
ドォォォォォォォン!!
大地。
揺れる。
敵軍前方。
爆発。
炎。
巻き上がる。
何十。
何百。
魔改造兵。
吹き飛ぶ。
ラウゼン兵から歓声。
「直撃だ!!」
「やったぞ!!」
「かなり削った!!」
だが。
ザインは。
煙を見ていた。
「……」
歓声。
徐々に。
消える。
煙。
その中。
一つ。
影。
歩く。
腕。
ない。
身体。
焼けている。
それでも。
歩く。
次。
腹。
裂けている。
歩く。
顔。
半分。
焼けた者。
歩く。
次。
また。
次。
止まらない。
「……は?」
兵士。
声。
震える。
「なんで……」
「なんで動ける……?」
ザインが剣を構えた。
「言っただろ」
低く。
「普通の人間だと思うな」
直後。
魔改造軍団。
走り出す。
一万。
一斉。
ドドドドドドドドド――!!
大地。
震える。
その中。
ザインだけが。
城壁の上から。
迫る軍勢を見下ろしていた。
「……」
一度。
五人を見る。
「じゃ」
剣を肩に乗せる。
「先行くわ」
「……は?」
ガレス。
目を丸くする。
ザイン。
城壁の縁へ。
片足。
乗せる。
ダリオがザインを見る。
「……隊長?」
リナ。
嫌な予感。
顔。
引きつる。
「まさか――」
ザインは。
五人を振り返った。
「お前らは」
迫る敵軍を指す。
「一匹たりとも城に近づけんな」
ミレイアがザインを見る。
「隊長は?」
「俺?」
ザイン。
一万の軍勢。
見る。
口元。
上がる。
「真ん中行ってくる」
「……」
五人。
固まる。
周囲。
ラウゼン兵も。
固まる。
ガレス。
一拍。
「……は?」
ザイン。
城壁。
蹴る。
「ちょっ――」
リナ。
手。
伸ばす。
「隊長!?」
遅い。
ザインの身体。
宙。
舞う。
「ザイン!!」
ガレスの声。
ザイン。
空中。
振り返る。
「言っただろ!!」
敵軍。
真下。
「一匹も通すなよ!!」
そのまま。
敵軍へ。
落ちていく。
「……」
ダリオ。
呆然。
「本当に行ってしまいましたが」
ガレス。
額。
押さえる。
「……あの馬鹿」
シグ。
既に。
敵を見る。
「来るぞ」
ガレス。
顔。
上げる。
敵軍。
目前。
「……ったく」
剣。
構える。
「行っちまったもんは仕方ねぇ」
四人を見る。
「聞いたな、お前ら」
ダリオ。
前へ。
「はい」
リナ。
魔力。
高める。
「もちろん」
ミレイア。
後方。
下がる。
「支援に入ります」
シグ。
姿勢。
低くする。
ガレス。
笑う。
「ザインの命令通りだ」
剣。
構える。
「一匹も――」
一拍。
「通すな!!」
「了解!!」
◇
その頃。
ザイン。
敵軍。
頭上。
「……」
下。
見る。
敵。
敵。
敵。
どこを見ても。
敵。
「……多いなぁ」
落下。
速度。
上がる。
ザイン。
剣。
抜く。
魔改造兵たち。
頭上。
見る。
ザイン。
身体。
捻る。
そして。
一万の。
ど真ん中。
ズドォォォン!!
地面。
爆ぜる。
土煙。
巻き上がる。
周囲。
魔改造兵。
衝撃。
吹き飛ぶ。
煙。
中。
ザイン。
ゆっくり。
立ち上がる。
前。
敵。
後ろ。
敵。
右。
敵。
左。
敵。
全方向。
敵。
ザイン。
剣。
肩。
乗せる。
周囲。
見渡す。
「……よし」
口元。
笑う。
「これなら」
一拍。
「間違えて味方斬ることもねぇな」
魔改造兵。
一斉。
襲いかかる。
一体目。
ザイン。
踏み込む。
首。
飛ぶ。
後ろ。
二体目。
振り返る。
腹。
裂く。
右。
三体。
同時。
ザイン。
身体。
沈める。
剣。
横薙ぎ。
二体。
首。
一体。
胸。
裂ける。
「次」
前。
敵。
突っ込む。
ザイン。
剣。
弾く。
懐。
入る。
首。
落とす。
「次」
背後。
ザイン。
振り返らない。
剣。
後ろ。
突き出す。
喉。
貫く。
抜く。
血。
散る。
さらに。
次。
次。
次。
敵軍。
中央。
ザイン一人。
そこだけ。
進軍。
乱れる。
魔改造兵たちが。
次々。
ザインへ。
向きを変える。
ザイン。
笑う。
「そうそう」
一体。
斬る。
「こっち来い」
二体。
殺す。
「俺だけ見てろ」
軍勢。
内部。
ザイン一人によって。
少しずつ。
崩れ始める。
◇
一方。
敵軍最前列。
「来るぞ!!」
ガレス。
叫ぶ。
魔改造兵。
雪崩れ込む。
その真正面。
ダリオ。
一人。
前へ。
巨大な魔改造兵。
三体。
突っ込む。
一体。
激突。
ガァン!!
地面。
ダリオの足元。
沈む。
二体目。
さらに。
三体目。
加わる。
それでも。
ダリオ。
動かない。
歯。
食い縛る。
「ここから先は――」
腕。
力。
込める。
一気に。
押し返す。
「通さん!!」
三体。
体勢。
崩れる。
「リナ!」
ガレス。
叫ぶ。
だが。
リナは。
既に。
手。
向けている。
「分かってます」
魔法陣。
展開。
「ダリオ」
「はい?」
「三歩下がってください」
「なぜ――」
「早く」
ダリオ。
三歩。
下がる。
直後。
ドォン!!
目の前。
爆発。
魔改造兵。
まとめて。
吹き飛ぶ。
ダリオ。
爆風。
浴びる。
「……先に説明してください!」
リナ。
次。
魔法。
構築。
「下がれと言ったでしょう」
「そういう意味ではありません!」
「無事なら問題ありません」
「あります!」
「喧嘩は後にしろ!!」
ガレス。
敵。
斬りながら。
叫ぶ。
その横。
一体。
戦線。
抜ける。
ラウゼン兵。
気づく。
「抜かれた!」
魔改造兵。
城へ。
走る。
一歩。
二歩。
三歩。
そして。
首。
落ちる。
「……え?」
兵士。
目。
見開く。
いつの間にか。
その横。
シグ。
立っている。
短剣についた血。
払う。
ガレス。
叫ぶ。
「シグ! 右も薄い!」
返事。
ない。
次の瞬間。
右側。
一人。
二人。
三人。
魔改造兵。
倒れる。
その中。
シグ。
「行ってる」
ガレス。
敵。
蹴り飛ばす。
「だから返事が遅ぇんだよ!!」
後方。
ミレイア。
戦場全体。
見る。
「右前方! 負傷者!」
杖。
向ける。
光。
ラウゼン兵。
裂かれた肩。
塞がる。
「まだ動けます!」
「す、すまない!」
「礼は後で!」
次。
獣人。
脇腹。
血。
流す。
魔法。
飛ばす。
止血。
さらに。
ダリオ。
腕。
傷。
即座。
回復。
ダリオ。
一瞬。
振り返る。
「ありがとうございます!」
「前を!」
ミレイア。
叫ぶ。
「まだ来ます!」
「はい!」
ガレス。
全体。
見る。
「左が薄い!」
ダリオ。
即座。
移動。
「リナ! 前列まとめて削れ!」
「もうやってます!」
巨大な魔法陣。
展開。
爆発。
敵。
十数体。
まとめて。
吹き飛ぶ。
「シグ!」
返事。
ない。
ガレス。
一体。
首。
落とす。
「……まあ」
遠く。
また。
敵。
倒れる。
「やってるならいいか」
五人。
止まらない。
ザインを。
追わない。
ザインを。
守らない。
ただ。
命令。
一つ。
敵を。
城へ。
近づけない。
ダリオ。
止める。
リナ。
消し飛ばす。
シグ。
抜けた敵。
殺す。
ミレイア。
傷ついた者。
立たせる。
ガレス。
全て。
繋ぐ。
一体。
また。
一体。
次。
また。
次。
五人の前。
敵。
積み上がる。
その左右。
ラウゼン軍。
獣王国軍。
エルフ国軍。
全面。
衝突。
レグルス。
大きく。
武器。
振る。
魔改造兵。
まとめて。
吹き飛ぶ。
「押せ!!」
獣人たち。
吠える。
「ザイン一人に好き勝手させるな!!」
「おおおおおお!!」
反対側。
エリオン。
杖。
振る。
魔法。
敵陣。
炸裂。
「前列、下がらないでください!」
エルフたち。
次々。
魔法陣。
展開。
「我々が援護します!」
炎。
剣。
血。
怒号。
悲鳴。
魔法。
戦場。
瞬く間に。
地獄へ。
変わる。
◇
その中央。
ザイン。
一人。
まだ。
斬る。
「……っ!」
一体。
首。
次。
腹。
次。
胸。
次。
首。
血。
身体。
染まる。
ほとんど。
返り血。
「……何体目だ?」
分からない。
十。
二十。
そんな数。
とうに。
越えている。
それでも。
敵。
来る。
ザイン。
斬る。
また。
来る。
殺す。
また。
来る。
殺す。
「……」
ザイン。
一瞬。
顔。
上げる。
周囲。
死体。
大量。
転がっている。
なのに。
その向こう。
敵。
敵。
敵。
まだ。
地平線。
埋めている。
ザイン。
思わず。
息。
吐く。
「……マジかよ」
剣。
血。
払う。
「全然」
一拍。
「減ってる気がしねぇ」
敵。
また。
ザインへ。
向かってくる。
「……ったく」
ザイン。
剣。
構える。
昨日。
聞いた。
一万。
今。
ようやく。
その数字の意味を。
身体で。
理解する。
ザイン。
小さく。
笑う。
「長ぇ一日に」
地面。
蹴る。
「なりそうだな」
再び。
敵軍。
飛び込んだ。
戦いは。
まだ。
始まったばかりだった。
ついに始まった、ラウゼン防衛戦。
レグルス率いる獣王国軍。
エリオン率いるエルフ国軍。
そして、ラウゼン王国軍。
それぞれがザインとの縁を胸に、同じ戦場へ集いました。
「明日を生きる民のために、己の明日を捨てて戦ってほしい」
レオニスの残酷な願いを受け、ザインたちもそれぞれの役目へ。
そしてザインは――。
まさかの単騎で敵軍一万のど真ん中へ。
戦いは、まだ始まったばかりです。
次回もよろしくお願いします!




