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剣しか持ちえない少年の英雄譚  作者: 喜怒哀楽
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60/65

明日を託す日

ラウゼンへ迫る、一万の魔改造軍団。


援軍が間に合う保証もない中、ザインたちは戦う覚悟を決めました。


しかし――。


獣王国。


そして、エルフの国。


ザインがこれまで築いてきた縁が、今度は大きな力となってラウゼンへ集います。


第60話「明日を託す日」


よろしくお願いします!


ラウゼン王国。


朝。


復興の音が消えた街には、代わりに武器と鎧の音が響いていた。


城壁の上。


ザインは遠くの街道を眺めていた。


「……お」


視線の先。


こちらへ向かってくる、大きな軍勢。


一つではない。


別方向からも、もう一つ。


風に靡く旗を見て、ザインは目を細めた。


「……意外と早かったな」


隣に立つレオニスも、僅かに安堵したように息を吐く。


「ああ。私も驚いている。連絡を送ってから、まだそれほど経っていない」


「急かしすぎたんじゃねぇの?」


「一刻を争う状況だったんだ。仕方ないだろう」


「まあ、来てくれたなら何でもいいか」


ザインは城壁から離れる。


「行こうぜ。せっかく来てくれたんだ」



城門。


巨大な門が開く。


最初に入ってきたのは、獣王国軍。


人間よりも一回り大きな体躯を持つ者。


巨大な武器を背負う者。


鋭い牙や爪を覗かせる者。


見るからに近接戦に長けた獣人たちが、次々とラウゼンへ入ってくる。


そして。


その先頭。


見覚えのある男。


ザインの口元が上がる。


「レグルス!」


声に気づき。


レグルスもザインを見る。


「ザイン!」


歩み寄る二人。


ザインは、その後ろに続く軍勢を見る。


「すげぇ数連れてきたな」


「当然だ」


「もっと掛かると思ってた」


レグルスが鼻を鳴らす。


「借りを返す機会を、他の誰かに取られてたまるか」


「借り?」


ザインが首を傾げる。


「俺、なんか貸したっけ?」


「……お前は本当に」


レグルスが呆れる。


「こちらが勝手に借りだと思っているだけだ。気にするな」


「なら気にしねぇわ」


「少しくらい気にしろ」


ザインが笑う。


レグルスも小さく笑った。


そして。


「獣王陛下から伝言だ」


「ん?」


レグルスは少しだけ姿勢を正す。


「『頼れと言ったはずだ』――とのことだ」


ザイン。


一瞬。


目を丸くする。


それから。


「……ははっ」


小さく笑った。


「じゃあ、遠慮なく頼らせてもらうわ」


「ああ」


レグルスは拳をザインへ突き出す。


「そのために来た」


ザインも。


拳を合わせる。


「助かる」


その時。


別方向から。


声。


「ザイン!」


「ん?」


振り返る。


今度は。


エルフ国軍。


獣王国軍ほど人数は多くない。


だが。


ザインでも分かるほど、一人一人から濃密な魔力を感じる。


その先頭から。


一人の男が歩いてくる。


「エリオン」


「無事そうですね」


「見りゃ分かるだろ」


「あなたの場合、その判断が難しいんですよ」


「なんでだよ」


「怪我をしていても平然としているでしょう」


「……まあ」


ザイン。


視線。


逸らす。


「否定はしねぇ」


エリオンがため息をつく。


「相変わらずですね」


ザインはエルフ軍を見る。


「お前らも、随分連れてきたな」


「当然です」


「いや」


ザイン。


レグルスを見る。


「こいつにも言ったんだけどさ」


「はい?」


「なんでそんな迷いなく来てくれんの?」


エリオンは一瞬。


ザインを見る。


そして。


小さく笑う。


「あなたには、我々の里で随分と助けられました」


「だから?」


「それもあります」


エリオンはラウゼンの街を見る。


復興途中の建物。


行き交う兵士。


そのさらに奥。


避難する民。


「ですが」


再び。


ザインを見る。


「あなたが命を張って守ろうとしている場所なのでしょう?」


「……」


「ならば」


エリオンは静かに言った。


「今度は、我々があなたに力を貸す番です」


ザイン。


少し。


黙る。


レグルスが横から笑う。


「諦めろ」


「何をだよ」


「お前がどう思っていようと、俺たちはお前に借りがある」


エリオンも頷く。


「同感です」


「……」


ザイン。


二人を見る。


そして。


頭。


掻く。


「どいつもこいつも律儀だなぁ」


「文句があるなら帰るぞ」


レグルス。


踵。


返す。


ザイン。


即座。


腕。


掴む。


「待て待て待て!」


「何だ」


「それは困る」


「なら素直に感謝しろ」


「してるって!」


エリオンが笑う。


ザイン。


二人を見る。


「……ありがとな」


レグルス。


鼻。


鳴らす。


「最初からそう言え」


エリオンも微笑む。


「ええ。本当に」


「うるせぇな」


少し離れた場所。


その光景を見ていたレオニスが、小さく笑う。


「……随分と好かれているじゃないか」


ザイン。


振り返る。


「人徳だな」


「それは違う」


レグルス。


即答。


「違いますね」


エリオンも。


即答。


「お前らなぁ!?」


僅かな笑い。


これから戦争が始まるとは思えないほど。


ほんの一瞬だけ。


空気が和らいだ。



王城。


作戦会議。


机の上に広げられた地図を囲み、三国の指揮官たちが集まっていた。


レオニスが口を開く。


「敵は、およそ一万」


地図の一点。


ラウゼンへ向かって伸びる進軍経路を指す。


「ほぼ全てが、教団によって何らかの改造を施された兵士と考えている」


獣王国側。


レグルスが腕を組む。


「こちらの戦力は?」


レオニスが答える。


ラウゼン軍。


獣王国軍。


エルフ国軍。


全てを合わせても。


敵の一万には届かない。


「……」


僅かに空気が重くなる。


ザインは地図を眺めながら頬を掻いた。


「まあ」


顔を上げる。


「数じゃ負けてんな」


レオニスがザインを見る。


「随分と軽く言うな」


「重く言ったら増えんのか?」


「増えない」


「じゃあ同じだろ」


「……お前は」


レオニスがため息をつく。


レグルスが小さく笑った。


「ザインらしい」


「だろ?」


「褒めてはいない」


「お前までそれ言う?」


「ともかく」


レオニスが地図へ視線を戻す。


「戦い方を決める」


中央。


「ラウゼン軍は正面。防衛設備を利用し、戦線を維持する」


左右。


「獣王国軍には両側面から敵陣を崩してもらいたい」


レグルス。


頷く。


「任せろ」


「エルフ国軍は後方から広範囲魔法による支援を」


エリオン。


「承知しました」


そして。


レオニスがザインを見る。


「ザイン」


「ん?」


「お前たちは遊撃だ」


「遊撃?」


「ああ。戦線が崩れた場所、強力な敵が現れた場所。その全てに自由に対応してほしい」


ザイン。


少し考える。


「つまり」


一拍。


「好きに暴れていいってことか」


「……お前の場合は、その説明の方が早そうだな」


ザイン。


笑う。


「最初からそう言えよ」


「軍議だからな!」


「はいはい」


ザインが立ち上がる。


「了解」


その後ろ。


ガレス。


ダリオ。


シグ。


ミレイア。


リナ。


直属の五人も立ち上がった。


ザインは振り返る。


「俺らは一番面倒なところ担当だってよ」


ガレスが鼻で笑う。


「いつも通りじゃねぇか」


「だな」



数時間後。


「――敵軍確認!!」


城壁から響いた声。


一瞬にして。


空気が変わる。


兵士たちが一斉に配置につく。


ザインも城壁へ上がった。


遠く。


地平線。


黒い。


最初は。


一本の線。


それが。


徐々に。


太くなる。


近づく。


やがて。


人の形が見え始める。


人。


人。


人。


人。


人。


地平線を埋め尽くす。


黒い軍勢。


ザッ。


ザッ。


ザッ。


ザッ。


足音が重なる。


遠く離れているというのに。


大地を通じて。


振動が伝わる。


兵士たちがざわつく。


「……あれが」


「全部……?」


「一万……」


数字では聞いていた。


だが。


実際に目の前へ現れた一万は。


まるで違う。


ザインも。


黙っていた。


「……」


炎。


悲鳴。


血。


二年前。


一瞬だけ。


視界に重なる。


ザインは目を閉じる。


息を吐く。


そして。


もう一度。


目を開けた。


「……やっぱ」


剣の柄に手を置く。


「見ると多いな」


その横。


ガレスがザインを見る。


「……」


だが。


何も言わない。


ザインも。


何も言わなかった。


やがて。


レオニスが全軍の前へ出た。


ラウゼン兵。


獣王国軍。


エルフ国軍。


数千の視線が。


一人へ集まる。


レオニスは彼らを見渡した。


「諸君」


ざわめきが消える。


「私は今日」


静かな声。


「お前たちに、生きて帰れとは言えない」


兵士たちの顔が強張る。


「敵は一万」


「我々より遥かに多い」


「戦えば」


一拍。


「多くの者が命を落とすだろう」


誰も。


目を逸らさない。


「それでも」


レオニスは続ける。


「私は、お前たちに戦えと命じなければならない」


拳を握る。


「我々がここで退けば」


振り返る。


その先。


ラウゼンの街。


「次に剣を向けられるのは、武器を持たぬ民だ」


「子供がいる」


「家族がいる」


「ようやく戻り始めた、この国の日常がある」


風が吹く。


三国の旗が大きく揺れる。


レオニスは。


再び。


兵士たちを見る。


「だから――」


息を吸う。


「今日は」


一拍。


「明日を生きる民のために」


「己の明日を捨てて」


声が響く。


「戦ってほしい」


静寂。


あまりにも。


残酷な言葉。


だが。


レオニス自身。


それを理解している。


だから。


誤魔化さない。


「これは、身勝手な願いだ」


「それでも――」


胸へ手を置く。


「この国の明日を」


全員を見る。


「私に預けてくれ」


一秒。


二秒。


一人の兵士が。


槍を掲げる。


「おおおおおおお!!」


次。


剣。


「おおおおおお!!」


また。


次。


次。


そして。


数千の声が。


一つになる。


「おおおおおおおおおおおおお!!」


大地。


震える。


ザインは。


その光景を黙って見ていた。


やがて。


後ろを振り返る。


ガレス。


ダリオ。


シグ。


ミレイア。


リナ。


「……聞いたか、お前ら」


ガレスが答える。


「ああ」


他の四人も。


ザインを見る。


ザインは剣を抜いた。


「俺らは今回」


剣を肩へ乗せる。


「最高火力だと思え」


五人の表情が変わる。


「俺らが一人多く殺せば」


「その分だけ」


後ろ。


兵士たちを見る。


「誰かが一人生き残る」


再び。


敵軍へ。


視線。


「ラウゼンの明日を確保したけりゃ――」


ザインの目が鋭くなる。


「躊躇うな」


一拍。


「殺せ」


さらに。


「殺して」


「殺して」


「殺しまくれ」


ガレスが苦笑する。


「相変わらず酷ぇ激励だな、ザイン」


ザインが見る。


「王子様より分かりやすいだろ」


「まあ」


ガレス。


剣を抜く。


「否定はしねぇよ」


ダリオが武器を握る。


「命令、承知しました」


リナも前を見る。


「やることはいつもと同じですね」


シグ。


短く。


「問題ない」


ミレイアは杖を握り締める。


「支援は任せてください、隊長」


ザイン。


笑う。


「頼んだ」



敵軍。


さらに。


近づく。


レオニスが手を上げた。


「全軍!!」


ラウゼン兵。


盾。


前へ。


槍。


構える。


獣人たち。


低く。


姿勢を取る。


エルフ軍。


一斉に杖を掲げる。


「構え!!」


空。


魔法陣。


一つ。


二つ。


十。


数十。


大量の魔法陣が空を埋める。


ザインが見上げる。


「……派手だな」


リナが横から言う。


「見惚れないでください、隊長」


「綺麗だろ」


「今から人を殺す魔法ですよ」


「……それもそうだな」


レオニスが敵との距離を見る。


そして。


手を振り下ろした。


「――放て!!」


瞬間。


空が光る。


炎。


氷。


雷。


風。


無数の魔法。


一斉に。


降り注ぐ。


ドォォォォォォォン!!


大地。


揺れる。


敵軍前方。


爆発。


炎。


巻き上がる。


何十。


何百。


魔改造兵。


吹き飛ぶ。


ラウゼン兵から歓声。


「直撃だ!!」


「やったぞ!!」


「かなり削った!!」


だが。


ザインは。


煙を見ていた。


「……」


歓声。


徐々に。


消える。


煙。


その中。


一つ。


影。


歩く。


腕。


ない。


身体。


焼けている。


それでも。


歩く。


次。


腹。


裂けている。


歩く。


顔。


半分。


焼けた者。


歩く。


次。


また。


次。


止まらない。


「……は?」


兵士。


声。


震える。


「なんで……」


「なんで動ける……?」


ザインが剣を構えた。


「言っただろ」


低く。


「普通の人間だと思うな」


直後。


魔改造軍団。


走り出す。


一万。


一斉。


ドドドドドドドドド――!!


大地。


震える。


その中。


ザインだけが。


城壁の上から。


迫る軍勢を見下ろしていた。


「……」


一度。


五人を見る。


「じゃ」


剣を肩に乗せる。


「先行くわ」


「……は?」


ガレス。


目を丸くする。


ザイン。


城壁の縁へ。


片足。


乗せる。


ダリオがザインを見る。


「……隊長?」


リナ。


嫌な予感。


顔。


引きつる。


「まさか――」


ザインは。


五人を振り返った。


「お前らは」


迫る敵軍を指す。


「一匹たりとも城に近づけんな」


ミレイアがザインを見る。


「隊長は?」


「俺?」


ザイン。


一万の軍勢。


見る。


口元。


上がる。


「真ん中行ってくる」


「……」


五人。


固まる。


周囲。


ラウゼン兵も。


固まる。


ガレス。


一拍。


「……は?」


ザイン。


城壁。


蹴る。


「ちょっ――」


リナ。


手。


伸ばす。


「隊長!?」


遅い。


ザインの身体。


宙。


舞う。


「ザイン!!」


ガレスの声。


ザイン。


空中。


振り返る。


「言っただろ!!」


敵軍。


真下。


「一匹も通すなよ!!」


そのまま。


敵軍へ。


落ちていく。


「……」


ダリオ。


呆然。


「本当に行ってしまいましたが」


ガレス。


額。


押さえる。


「……あの馬鹿」


シグ。


既に。


敵を見る。


「来るぞ」


ガレス。


顔。


上げる。


敵軍。


目前。


「……ったく」


剣。


構える。


「行っちまったもんは仕方ねぇ」


四人を見る。


「聞いたな、お前ら」


ダリオ。


前へ。


「はい」


リナ。


魔力。


高める。


「もちろん」


ミレイア。


後方。


下がる。


「支援に入ります」


シグ。


姿勢。


低くする。


ガレス。


笑う。


「ザインの命令通りだ」


剣。


構える。


「一匹も――」


一拍。


「通すな!!」


「了解!!」



その頃。


ザイン。


敵軍。


頭上。


「……」


下。


見る。


敵。


敵。


敵。


どこを見ても。


敵。


「……多いなぁ」


落下。


速度。


上がる。


ザイン。


剣。


抜く。


魔改造兵たち。


頭上。


見る。


ザイン。


身体。


捻る。


そして。


一万の。


ど真ん中。


ズドォォォン!!


地面。


爆ぜる。


土煙。


巻き上がる。


周囲。


魔改造兵。


衝撃。


吹き飛ぶ。


煙。


中。


ザイン。


ゆっくり。


立ち上がる。


前。


敵。


後ろ。


敵。


右。


敵。


左。


敵。


全方向。


敵。


ザイン。


剣。


肩。


乗せる。


周囲。


見渡す。


「……よし」


口元。


笑う。


「これなら」


一拍。


「間違えて味方斬ることもねぇな」


魔改造兵。


一斉。


襲いかかる。


一体目。


ザイン。


踏み込む。


首。


飛ぶ。


後ろ。


二体目。


振り返る。


腹。


裂く。


右。


三体。


同時。


ザイン。


身体。


沈める。


剣。


横薙ぎ。


二体。


首。


一体。


胸。


裂ける。


「次」


前。


敵。


突っ込む。


ザイン。


剣。


弾く。


懐。


入る。


首。


落とす。


「次」


背後。


ザイン。


振り返らない。


剣。


後ろ。


突き出す。


喉。


貫く。


抜く。


血。


散る。


さらに。


次。


次。


次。


敵軍。


中央。


ザイン一人。


そこだけ。


進軍。


乱れる。


魔改造兵たちが。


次々。


ザインへ。


向きを変える。


ザイン。


笑う。


「そうそう」


一体。


斬る。


「こっち来い」


二体。


殺す。


「俺だけ見てろ」


軍勢。


内部。


ザイン一人によって。


少しずつ。


崩れ始める。



一方。


敵軍最前列。


「来るぞ!!」


ガレス。


叫ぶ。


魔改造兵。


雪崩れ込む。


その真正面。


ダリオ。


一人。


前へ。


巨大な魔改造兵。


三体。


突っ込む。


一体。


激突。


ガァン!!


地面。


ダリオの足元。


沈む。


二体目。


さらに。


三体目。


加わる。


それでも。


ダリオ。


動かない。


歯。


食い縛る。


「ここから先は――」


腕。


力。


込める。


一気に。


押し返す。


「通さん!!」


三体。


体勢。


崩れる。


「リナ!」


ガレス。


叫ぶ。


だが。


リナは。


既に。


手。


向けている。


「分かってます」


魔法陣。


展開。


「ダリオ」


「はい?」


「三歩下がってください」


「なぜ――」


「早く」


ダリオ。


三歩。


下がる。


直後。


ドォン!!


目の前。


爆発。


魔改造兵。


まとめて。


吹き飛ぶ。


ダリオ。


爆風。


浴びる。


「……先に説明してください!」


リナ。


次。


魔法。


構築。


「下がれと言ったでしょう」


「そういう意味ではありません!」


「無事なら問題ありません」


「あります!」


「喧嘩は後にしろ!!」


ガレス。


敵。


斬りながら。


叫ぶ。


その横。


一体。


戦線。


抜ける。


ラウゼン兵。


気づく。


「抜かれた!」


魔改造兵。


城へ。


走る。


一歩。


二歩。


三歩。


そして。


首。


落ちる。


「……え?」


兵士。


目。


見開く。


いつの間にか。


その横。


シグ。


立っている。


短剣についた血。


払う。


ガレス。


叫ぶ。


「シグ! 右も薄い!」


返事。


ない。


次の瞬間。


右側。


一人。


二人。


三人。


魔改造兵。


倒れる。


その中。


シグ。


「行ってる」


ガレス。


敵。


蹴り飛ばす。


「だから返事が遅ぇんだよ!!」


後方。


ミレイア。


戦場全体。


見る。


「右前方! 負傷者!」


杖。


向ける。


光。


ラウゼン兵。


裂かれた肩。


塞がる。


「まだ動けます!」


「す、すまない!」


「礼は後で!」


次。


獣人。


脇腹。


血。


流す。


魔法。


飛ばす。


止血。


さらに。


ダリオ。


腕。


傷。


即座。


回復。


ダリオ。


一瞬。


振り返る。


「ありがとうございます!」


「前を!」


ミレイア。


叫ぶ。


「まだ来ます!」


「はい!」


ガレス。


全体。


見る。


「左が薄い!」


ダリオ。


即座。


移動。


「リナ! 前列まとめて削れ!」


「もうやってます!」


巨大な魔法陣。


展開。


爆発。


敵。


十数体。


まとめて。


吹き飛ぶ。


「シグ!」


返事。


ない。


ガレス。


一体。


首。


落とす。


「……まあ」


遠く。


また。


敵。


倒れる。


「やってるならいいか」


五人。


止まらない。


ザインを。


追わない。


ザインを。


守らない。


ただ。


命令。


一つ。


敵を。


城へ。


近づけない。


ダリオ。


止める。


リナ。


消し飛ばす。


シグ。


抜けた敵。


殺す。


ミレイア。


傷ついた者。


立たせる。


ガレス。


全て。


繋ぐ。


一体。


また。


一体。


次。


また。


次。


五人の前。


敵。


積み上がる。


その左右。


ラウゼン軍。


獣王国軍。


エルフ国軍。


全面。


衝突。


レグルス。


大きく。


武器。


振る。


魔改造兵。


まとめて。


吹き飛ぶ。


「押せ!!」


獣人たち。


吠える。


「ザイン一人に好き勝手させるな!!」


「おおおおおお!!」


反対側。


エリオン。


杖。


振る。


魔法。


敵陣。


炸裂。


「前列、下がらないでください!」


エルフたち。


次々。


魔法陣。


展開。


「我々が援護します!」


炎。


剣。


血。


怒号。


悲鳴。


魔法。


戦場。


瞬く間に。


地獄へ。


変わる。



その中央。


ザイン。


一人。


まだ。


斬る。


「……っ!」


一体。


首。


次。


腹。


次。


胸。


次。


首。


血。


身体。


染まる。


ほとんど。


返り血。


「……何体目だ?」


分からない。


十。


二十。


そんな数。


とうに。


越えている。


それでも。


敵。


来る。


ザイン。


斬る。


また。


来る。


殺す。


また。


来る。


殺す。


「……」


ザイン。


一瞬。


顔。


上げる。


周囲。


死体。


大量。


転がっている。


なのに。


その向こう。


敵。


敵。


敵。


まだ。


地平線。


埋めている。


ザイン。


思わず。


息。


吐く。


「……マジかよ」


剣。


血。


払う。


「全然」


一拍。


「減ってる気がしねぇ」


敵。


また。


ザインへ。


向かってくる。


「……ったく」


ザイン。


剣。


構える。


昨日。


聞いた。


一万。


今。


ようやく。


その数字の意味を。


身体で。


理解する。


ザイン。


小さく。


笑う。


「長ぇ一日に」


地面。


蹴る。


「なりそうだな」


再び。


敵軍。


飛び込んだ。


戦いは。


まだ。


始まったばかりだった。

ついに始まった、ラウゼン防衛戦。


レグルス率いる獣王国軍。


エリオン率いるエルフ国軍。


そして、ラウゼン王国軍。


それぞれがザインとの縁を胸に、同じ戦場へ集いました。


「明日を生きる民のために、己の明日を捨てて戦ってほしい」


レオニスの残酷な願いを受け、ザインたちもそれぞれの役目へ。


そしてザインは――。


まさかの単騎で敵軍一万のど真ん中へ。


戦いは、まだ始まったばかりです。


次回もよろしくお願いします!


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