迫る軍勢
獣王国からラウゼンへ戻り、復興を手伝うザインたち。
少しずつ戻り始めた人々の暮らし。
ようやく、この国にも日常が戻りつつありました。
しかし――。
国境付近から、一つの緊急報告が届きます。
第58話「迫る軍勢」
よろしくお願いします!
ラウゼン王国。
ザインたちが獣王国から戻って。
数日が経っていた。
「ザイン!」
「ん?」
「そっち持ってくれ!」
声。
ザインが振り返る。
そこには数人の男たち。
そして。
地面に置かれた。
巨大な木材。
「これか?」
「ああ!」
ザインは木材へ近づく。
「どこ持ってくんだ?」
「あっちの建物だ!」
「了解」
しゃがむ。
木材の下へ。
手を入れる。
「よっ」
そのまま。
持ち上げる。
「……」
男たち。
固まる。
ザインは。
一人で木材を肩へ担ぐ。
「……何してんだ?」
「いや……」
一人の男が。
木材を見る。
そして。
ザインを見る。
「それ」
「ん?」
「四人で運ぶ予定だったんだが」
ザインは。
肩の木材を見る。
「持ててんだからいいだろ」
「そういう問題なのか……?」
「知らん」
そのまま。
歩き出す。
「どこだ?」
「あ、あっちだ!」
「最初からそう言えよ」
「言っただろ!」
周囲。
笑い声。
ザインも。
気にせず歩いていく。
街では。
至るところで。
復興作業が続いていた。
崩れた建物。
新しい柱が立ち。
割れた石畳。
敷き直され。
瓦礫の山も。
少しずつ。
姿を消している。
市場。
人。
以前よりも。
増えた。
店先から。
声。
聞こえる。
子供たち。
走り回る。
まだ。
元通りではない。
それでも。
確実に。
この国は。
立ち直り始めていた。
ザインは。
木材を指定された場所へ置く。
「ここでいいか?」
「ああ! 助かった!」
「次は?」
「え?」
「まだあんだろ」
男。
一瞬。
驚いて。
笑う。
「あるぞ!」
「じゃあ持ってくる」
ザインが。
歩き出そうとした。
その時。
「ザイン殿!」
声。
聞こえる。
「ん?」
一人の兵士。
走ってくる。
息。
切らしている。
その様子に。
ザインの足。
止まる。
「どうした?」
兵士は。
ザインの前で止まり。
呼吸を整える。
「レオニス様より」
「至急」
「王城へ来るようにとのことです」
ザインの表情。
僅かに変わる。
「何かあったのか?」
「……緊急の報告が入ったと」
「緊急?」
「はい」
ザイン。
少しだけ。
黙る。
そして。
「分かった」
振り返る。
「悪い」
作業中の男たちを見る。
「ちょっと行ってくる」
「ああ」
男。
頷く。
「こっちは任せろ」
「頼んだ」
ザインは。
兵士と共に。
王城へ向かった。
◇
王城。
会議室。
扉。
開く。
「来たぞ」
ザインが入る。
中。
レオニス。
数人の兵士。
そして。
一人。
見覚えのない兵士。
服。
泥。
付いている。
靴。
汚れている。
かなりの距離を。
急いで移動してきた。
そんな姿。
ザインは。
男を見る。
「そいつが?」
レオニス。
頷く。
「国境付近を担当している偵察兵だ」
「……」
ザイン。
男を見る。
「何があった?」
偵察兵。
レオニスを見る。
レオニス。
頷く。
「説明してくれ」
「はい」
偵察兵。
一歩。
前へ。
「今朝」
「国境の北東方面を監視していた部隊が」
息。
吸う。
「大規模な軍勢を確認しました」
「……軍勢?」
ザイン。
眉。
寄せる。
「どこの国だ?」
「分かりません」
「分からない?」
「はい」
ザイン。
レオニスを見る。
レオニスも。
険しい表情。
「旗は?」
ザインが聞く。
「ありません」
「国章は?」
「確認できませんでした」
「装備」
「統一されていません」
ザイン。
黙る。
そして。
「それ」
「軍隊なのか?」
偵察兵。
言葉。
詰まる。
「……我々にも」
「判断がつきません」
「どういうことだよ」
「隊列は」
「ある程度」
「整っています」
「ですが」
偵察兵の表情。
曇る。
「通常の軍とは」
「明らかに違います」
ザインの目。
僅かに細くなる。
「何が?」
「まず」
「補給部隊が見当たりません」
「補給?」
「はい」
「食料」
「武器」
「その他の物資を運ぶ荷馬車」
「そういったものが」
「ほとんど確認できませんでした」
「……」
「さらに」
偵察兵。
続ける。
「彼らは」
「休息を取っていません」
ザイン。
眉。
寄せる。
「ずっと歩いてんのか?」
「はい」
「昨日の夜にも」
「別の監視地点で」
「同様の集団が確認されています」
レオニス。
口。
開く。
「つまり」
「夜通し進軍している可能性があると?」
「……はい」
「人間が?」
ザイン。
聞く。
偵察兵。
少し。
黙る。
「そこなのですが」
「ん?」
「人間に」
「見える者が大半です」
「見える?」
ザインの目。
変わる。
偵察兵。
自分の腕。
指す。
「腕が」
「異常に発達した者」
「通常の人間とは思えないほど」
「巨大な体格の者」
ザイン。
黙る。
「皮膚が変色した者」
「身体に」
「何かを埋め込まれているような者も」
「複数」
「確認されています」
「……」
ザインの顔から。
少しずつ。
表情が消える。
知っている。
その特徴。
何度も。
見てきた。
人間を。
人間ではないものへ。
無理矢理。
作り替えた。
存在。
「……教団」
ザイン。
呟く。
レオニス。
見る。
「何?」
ザインは。
偵察兵を見る。
「そいつら」
「目は?」
「目?」
「ああ」
「普通だったか?」
偵察兵。
思い出す。
「遠方からでしたので」
「全員までは」
「ですが……」
少し。
考える。
「虚ろな者が」
「多かったように思います」
ザイン。
目。
閉じる。
一度。
息。
吐く。
「教団だ」
レオニス。
眉。
寄せる。
「確かなのか?」
ザイン。
即答。
「ああ」
「俺たちが今まで見てきた奴らと同じだ」
「身体を弄られてる」
「……」
「間違いねぇ」
会議室。
空気。
変わる。
レオニス。
地図。
見る。
「教団が」
「軍勢を……」
ザイン。
偵察兵を見る。
「数は?」
「……」
偵察兵。
黙る。
「分かる範囲でいい」
レオニスが言う。
「はい」
偵察兵。
息。
吸う。
「正確な数は」
「確認できていません」
「ですが」
一拍。
「少なくとも」
「数千」
「……」
静寂。
誰も。
すぐには。
言葉を発さない。
「数千……?」
レオニス。
呟く。
「はい」
ザイン。
腕。
組む。
「そんな数」
「どこから集めたんだよ」
誰も。
答えられない。
一人。
二人。
そんな話ではない。
数千。
それだけの人間が。
教団によって。
何かを施されている。
「……」
ザイン。
舌打ち。
「クソが」
レオニス。
地図へ。
視線。
落とす。
「ザイン」
「ん?」
「問題は」
「数だけではない」
ザイン。
見る。
レオニス。
地図。
指す。
「軍勢が最初に確認されたのが」
指。
一つ目の印。
「ここだ」
次。
「昨夜」
「別の監視地点で確認されたのが」
二つ目。
「ここ」
そして。
「今朝」
三つ目。
「ここだ」
ザイン。
地図。
覗き込む。
三つ。
点。
並んでいる。
「……」
レオニス。
指。
動かす。
点。
繋ぐ。
線。
そのまま。
伸ばす。
ザインの目。
線を追う。
「……おい」
レオニス。
答えない。
「ちょっと待て」
ザイン。
自分で。
地図を見る。
線。
その先。
ある。
国。
「……」
ザインの表情。
消える。
「嘘だろ」
レオニス。
ゆっくり。
息を吐く。
「まだ」
「確定したわけではない」
「進路を変える可能性もある」
「……」
「だが」
レオニスの指。
地図。
一つの場所。
止まる。
ラウゼン王国。
「現在の進路を」
「そのまま進むのであれば」
ザイン。
地図から。
目を離さない。
レオニス。
言う。
「奴らの目的地は」
一拍。
「ラウゼンだ」
「……」
会議室。
完全な。
静寂。
ザインの頭。
浮かぶ。
数日前。
戻ってきた時。
見た。
街。
瓦礫。
減っていた。
家。
建ち始めていた。
市場。
開いていた。
子供。
走っていた。
そして。
ついさっき。
自分が。
運んでいた。
復興のための。
木材。
「……」
ザイン。
拳。
握る。
数千。
教団によって。
作り替えられた。
軍勢。
今も。
止まらず。
歩いている。
この国へ。
向かって。
ザインは。
ゆっくり。
顔を上げた。
「……また」
低い声。
「ここを」
その目。
鋭くなる。
「戦場にするつもりかよ」
再びラウゼン王国へ迫る脅威。
旗もなく、補給もなく、休息すら取らずに進み続ける数千の軍勢。
そして、その正体は――教団によって作り変えられた者たちでした。
ようやく復興が進み始めたラウゼンへ、再び戦火が迫ります。
しかし、まだ判明しているのは「数千」ということだけ。
この軍勢の全貌とは。
そして、なぜラウゼンを目指しているのか。
次回もよろしくお願いします!




