表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣しか持ちえない少年の英雄譚  作者: 喜怒哀楽
PR
54/64

悪魔

守るために配置されたはずの騎士たちは、なぜアルヴァへ剣を向けたのか。


そして、アルヴァの民を襲う身体の異変。


何週間も続いた平穏の裏で、何が進められていたのか。


ついに、その真相が明らかになります。


第54話、よろしくお願いします。

「全員!!」


ギーファの怒声が。


戦場に響く。


「武器を取れ!!」


一拍。


「敵襲だ!!」


アルヴァの戦士たちが。


一斉に武器を構える。


目の前。


エルグラン王国。


何週間も。


アルヴァを守るため。


周囲へ配置されていた騎士たち。


その全員が。


今。


こちらへ武器を向けている。


「……嘘だろ」


ヴァルドが呟く。


「なんで……」


エルグラン兵。


前進。


「待て!!」


ヴァルドが叫ぶ。


「何かの間違いだ!」


返事はない。


「俺たちは同盟を結んだはずだ!!」


それでも。


止まらない。


「エドガーは!?」


ヴァルドが。


一歩前へ。


「エドガーを呼べ!!」


敵兵。


剣。


振り上げる。


「――ヴァルド!」


ギーファが。


横からヴァルドを突き飛ばす。


直後。


剣。


振り下ろされる。


「何してやがる!」


ギーファが。


敵兵の剣を弾く。


「前見ろ!!」


「でも!」


「でもじゃねぇ!!」


踏み込む。


剣。


振る。


ガキィン!!


「……っ!」


重い。


いつもなら。


武器ごと。


敵の身体ごと。


吹き飛ばせる。


だが。


弾いただけ。


敵兵。


もう一度。


剣。


振る。


ギーファ。


避ける。


踏み込む。


斬る。


敵兵。


倒れる。


「……はっ」


呼吸。


重い。


一人。


倒しただけ。


なのに。


胸が。


大きく上下する。


まるで。


高い山。


空気の薄い場所。


そこで。


全力で走っているような。


「ギーファ!」


横。


アルヴァの戦士。


「なんかおかしい!」


「分かってる!」


「力が出ねぇ!」


敵。


三人。


迫る。


一人目。


ギーファ。


剣を受ける。


腕。


痺れる。


二人目。


避ける。


三人目。


槍。


「チッ!」


身体を捻る。


脇腹。


浅く裂ける。


「……っ」


いつもなら。


避けられた。


いや。


そもそも。


ここまで。


敵を近づけない。


「ギーファ!」


ヴァルドが。


一人。


斬る。


「お前もか!」


「ああ!」


ヴァルドも。


息が荒い。


「なんなんだよ……これ!」


「知らねぇ!」


周囲。


見る。


アルヴァ。


全員。


同じ。


動きが。


鈍い。


息が。


上がっている。


いつもなら。


一人で複数を相手にする戦士たちが。


一人。


二人。


敵兵を相手に。


苦戦している。


「クソが……!」


敵兵。


迫る。


ギーファ。


剣を構える。


一人。


弾く。


二人。


避ける。


三人目。


ギーファの目。


止まる。


「……お前」


敵兵。


一瞬。


怯む。


ギーファが。


剣を持つ腕を掴む。


「なっ――」


捻る。


剣。


落ちる。


そのまま。


腹。


蹴る。


「ぐっ!」


地面。


転がる。


ギーファが。


胸倉を掴む。


持ち上げる。


「おい」


「……っ」


敵兵の顔。


引きつる。


「俺たちに」


ギーファが。


周囲を見る。


苦戦する仲間。


重い身体。


荒い呼吸。


治りの遅い傷。


「何しやがった」


「……」


「答えろ」


「知らない」


ギーファの拳。


敵兵の顔。


「ぐっ!」


「もう一回聞くぞ」


胸倉。


締める。


「何しやがった」


「……っ」


敵兵が。


ギーファを見る。


そして。


僅かに。


笑った。


「もう……遅い」


「……何?」


「完成してる」


ギーファの眉が。


寄る。


「何が」


「……結界だ」


「結界?」


敵兵。


苦しそうに。


笑う。


「アルヴァ領を……」


一拍。


「全て覆っている」


ギーファの目が。


僅かに開く。


「何言ってやがる」


「お前たちは……気づかなかった」


「……」


「当然だ」


敵兵が。


続ける。


「これほど広い土地を覆う結界だ」


「一日や二日で……作れるものじゃない」


ギーファの手に。


力が入る。


「……いつからだ」


「……」


「いつからやってた」


敵兵は。


答えない。


「答えろ」


ギーファの声。


低い。


「……最初からだ」


一瞬。


ギーファが。


止まる。


「……何?」


「俺たちが」


敵兵が。


笑う。


「ここへ配置された日から」


「……」


「少しずつ」


「少しずつ……」


「お前たちを囲むように」


ギーファの頭。


あの日。


蘇る。


北。


南。


東。


西。


配置された。


三百人。


――守られるんじゃない。


――囲まれるんだ。


「……」


ギーファの顔から。


表情が消える。


「てめぇら……」


「何週間も」


敵兵が言う。


「何も起こらなかっただろ?」


「……」


「平和になったと思ったか?」


ギーファの拳。


震える。


「その時間が」


敵兵が笑う。


「必要だったんだよ」


「……」


「そして」


「この結界の中には」


一拍。


「ほとんど魔素がない」


ギーファが。


自分の手を見る。


「……魔素?」


「ああ」


「外から入ってくる魔素を遮断し」


「内部にある魔素も」


「限界まで薄くする」


敵兵。


ギーファを見る。


「お前たちアルヴァは」


「魔法を使わない」


「だが」


笑み。


「身体は違う」


ギーファの目。


細くなる。


「周囲の魔素を」


「無意識に取り込み」


「肉体を強化している」


「……」


「だから」


敵兵が言う。


「魔素そのものを奪えばいい」


沈黙。


「お前たちは」


「ただの――」


「……そうか」


ギーファの声。


敵兵が。


止まる。


ギーファの手。


離れる。


敵兵。


地面。


落ちる。


「ぐっ……!」


ギーファは。


何も言わない。


振り返る。


戦場。


傷ついた仲間。


逃げる人々。


泣く子供。


戦うアルヴァ。


そして。


北。


南。


東。


西。


エルグラン。


全部。


最初から。


仕組まれていた。


同盟。


友好。


騎士の配置。


何週間もの。


平穏。


その全てが。


この日のため。


ギーファの手。


剣を握る。


ギリッ。


歯。


鳴る。


「……おい」


声。


低い。


誰も。


聞こえない。


ギーファが。


息を吸う。


「おい!!」


怒声。


戦場。


響く。


アルヴァたちが。


振り返る。


「こんなことされて!!」


ギーファが。


エルグラン兵を指す。


「頭に来ねぇ奴はいねぇよな!!」


アルヴァの戦士。


一人。


顔を上げる。


また一人。


ギーファを見る。


「こいつら!!」


ギーファの声。


震える。


怒り。


「俺たちと仲良くするふりして!!」


「守るふりして!!」


「何週間もかけて!!」


剣。


敵へ。


向ける。


「俺たちから力まで奪いやがった!!」


「……」


アルヴァたちの。


目。


変わる。


ギーファが。


笑った。


怒りに。


歪んだ笑み。


「だったら」


一拍。


「見せてやろうぜ」


剣。


構える。


「逃げるのはやめだ!!」


「目の前の馬鹿どもに!!」


「アルヴァの力を見せつけろ!!」


声。


さらに。


大きく。


「魔素がなくても!!」


「頭の先からケツまで!!」


「恐怖を叩き込んでやれ!!」


一瞬。


静寂。


そして。


「おおおおおおおおおおお!!」


咆哮。


アルヴァ。


反撃。


始まる。



剣。


ぶつかる。


魔法。


飛ぶ。


叫び。


怒号。


アルヴァの戦士たち。


先ほどまでとは。


違う。


力は。


戻っていない。


身体も。


重い。


呼吸も。


苦しい。


それでも。


前へ。


出る。


一人。


倒す。


また一人。


押し返す。


「なんだこいつら……!」


エルグラン兵が。


後退する。


「弱ってるはずだろ!」


「怯むな!」


指揮官。


叫ぶ。


「数はこちらが上だ!」


その時。


「……」


ヴァルドが。


立ち尽くしていた。


周囲。


見る。


北。


エルグラン。


南。


エルグラン。


東。


西。


全て。


自分が。


受け入れた。


騎士たち。


『俺は同盟を結ぶべきだと思う』


自分が。


言った。


『変わってんだよ』


『いつまでも誰も信じないで生きるのかよ!』


ギーファに。


言った。


そして。


ギーファは。


言った。


『だからって他国の兵を自分たちの周りに置くのか!?』


『守られるんじゃない』


『囲まれるんだ』


「……俺だ」


声。


震える。


ギーファが。


敵を斬る。


「ヴァルド!」


「俺が……」


剣。


手。


震える。


「俺が」


周囲。


傷ついた仲間。


倒れた者。


逃げる子供。


「こいつらを……」


自分が。


受け入れた。


三百人。


自分が。


アルヴァを。


囲ませた。


「……俺のせいだ」


「ヴァルド!」


「俺が……」


カラン。


剣。


落ちる。


「俺が……みんなを……」


涙。


溢れる。


「ごめん……」


アルヴァの戦士たちを見る。


「みんな……」


声。


震える。


「ごめん……!」


一人。


仲間が倒れる。


「……っ」


ヴァルドの顔。


歪む。


「ごめん……!」


逃げる子供。


「ごめん……!」


戦う仲間。


「俺が……」


両膝。


地面。


「俺が信じたから……!」


涙。


止まらない。


「本当に……!」


頭。


下がる。


「ごめん……!!」


そして。


ギーファを見る。


「ギーファ……」


「……」


「ごめん……」


次の瞬間。


敵兵。


ヴァルドへ。


剣。


振り上げる。


「――チッ!」


ギーファ。


飛び込む。


ガキィン!!


剣。


弾く。


敵兵。


斬る。


倒れる。


ギーファが。


振り返る。


膝をつく。


ヴァルド。


「……てめぇ」


ギーファの顔。


怒り。


「ギー――」


ガッ!!


胸倉。


掴む。


「何してやがる!!」


「……!」


ヴァルドを。


無理やり。


立たせる。


「悔やんで泣いてる場合かよ!!」


「でも……!」


「でもじゃねぇ!!」


「俺が!」


ヴァルドが叫ぶ。


「俺がこいつらを入れたんだぞ!!」


「ああ!!」


ギーファが叫び返す。


「知ってるよ!!」


ヴァルドが。


止まる。


「てめぇが信じた!」


「てめぇが賛成した!」


「てめぇがこいつらを俺たちの周りに置いた!!」


「……っ」


「だから!!」


ギーファが。


さらに。


ヴァルドを引き寄せる。


「責任持ってこいつら追い出せ!!」


「……」


「悔やんで!」


「泣いて!」


「謝って!」


「それで何か変わんのかよ!!」


「……」


「謝ったら!」


ギーファが叫ぶ。


「倒れた奴らが立ち上がんのか!?」


「村が元に戻んのか!?」


「こいつらが帰ってくれんのかよ!!」


「……!」


「違ぇだろうが!!」


ギーファが。


ヴァルドを。


突き放す。


ヴァルド。


よろめく。


ギーファ。


地面。


剣。


拾う。


「てめぇが間違えたってんなら!」


ヴァルドへ。


突き出す。


「最後まで!!」


剣。


ヴァルドの胸へ。


押しつける。


「てめぇで責任取れ!!」


「……」


ヴァルドが。


剣を見る。


「悔やむのも!」


「泣くのも!」


「謝るのも!」


一拍。


「全部!!」


ギーファの目。


ヴァルドを見る。


「こいつら追い出してからにしろ!!」


「……」


ヴァルドの手。


震えている。


ギーファが。


睨む。


「立て」


「……」


「ヴァルド」


ヴァルドが。


ゆっくり。


顔を上げる。


「俺たちの村だろ」


「……」


涙。


まだ。


流れている。


ヴァルドが。


腕で。


乱暴に拭う。


剣。


握る。


「……ああ」


ギーファの表情。


僅かに。


緩む。


ヴァルド。


もう一度。


涙を拭く。


敵を見る。


「……悪かった」


「だから謝んなっつってんだろ」


「違う」


ヴァルドが。


剣を構える。


「今ので最後」


「……」


「次に謝るのは」


一歩。


前へ。


「全部終わってからにする」


ギーファが。


鼻を鳴らす。


「そうしろ」


敵兵。


迫る。


ヴァルド。


横を見る。


「ギーファ」


「あ?」


「手伝ってくれる?」


「……」


ギーファが。


剣を構える。


「誰に言ってんだ」


二人。


並ぶ。


「行くぞ」


「ああ!」


走る。


敵兵。


五人。


ギーファ。


正面。


ヴァルド。


右。


一人目。


ギーファが。


剣を弾く。


「ヴァルド!」


「分かってる!」


ヴァルド。


横から。


斬る。


二人目。


ヴァルドへ。


「右!」


「見えてる!」


受ける。


ギーファ。


仕留める。


三人。


四人。


五人。


二人。


止まらない。


「三人行った!」


ヴァルドが叫ぶ。


「そっちは!?」


「五人!」


「代わる!?」


「舐めんな!!」


「ははっ!」


ヴァルドが。


笑う。


目。


まだ赤い。


それでも。


笑う。


「やっぱ!」


敵の剣。


受ける。


「お前と戦うと!」


押し返す。


「楽だわ!!」


「喋ってねぇで動け!!」


「はいはい!」


背中。


合わせる。


何度。


こうして。


戦ったか。


分からない。


考え方は。


違った。


何度も。


喧嘩した。


今回だって。


最後まで。


意見は合わなかった。


それでも。


戦場で。


背中を預ける相手だけは。


昔から。


変わらなかった。



「撃て!!」


魔法陣。


複数。


展開。


火。


雷。


風。


飛ぶ。


「散れ!」


ギーファ。


右。


ヴァルド。


左。


火球。


ギーファ。


身体を沈める。


頭上。


通過。


風刃。


剣。


逸らす。


雷。


「っ!」


肩。


掠める。


「ギーファ!」


「平気だ!」


走る。


魔法使い。


目の前。


「ひっ――」


剣。


振る。


敵兵。


倒れる。


ヴァルド。


二人。


相手。


一人。


弾く。


もう一人。


斬る。


「はっ……!」


呼吸。


苦しい。


身体。


限界。


それでも。


前へ。


「きゃああああ!!」


声。


ヴァルドが。


振り返る。


「……!」


村。


奥。


子供。


数人。


逃げている。


後ろ。


エルグラン兵。


「ギーファ!」


「あ!?」


「あっち頼む!」


「おい!」


ヴァルド。


走る。


「ガキが残ってる!」


「ヴァルド!」


「すぐ戻る!」


「待て!」


聞かない。


「クソ!」


ギーファ。


目の前。


敵。


斬る。


「おい!」


仲間へ。


「ここ頼む!」


「ああ!」


ギーファも。


走る。



「走れ!!」


ヴァルドが。


叫ぶ。


「振り返んな!!」


子供たち。


泣きながら。


走る。


敵兵。


前。


ヴァルド。


一人。


「……」


剣。


構える。


息。


荒い。


脚。


重い。


でも。


後ろ。


子供。


「……通さねぇよ」


敵兵。


走る。


ヴァルド。


踏み込む。


一人。


斬る。


二人目。


剣。


受ける。


「ぐっ!」


三人目。


横。


蹴る。


四人目。


槍。


「……っ!」


避けきれない。


脇腹。


傷。


それでも。


踏み込む。


斬る。


「このっ!」


剣。


迫る。


ヴァルド。


受ける。


押される。


膝。


地面。


「……まだ」


立つ。


「まだだ……!」


子供たち。


遠ざかる。


あと少し。


「走れ!!」


敵兵。


三人。


ヴァルドへ。


「来いよ……!」


剣。


握る。


「俺が」


息。


吸う。


苦しい。


「全部」


一歩。


「追い出してやる!!」



「ヴァルド!!」


ギーファ。


走る。


敵兵。


倒れている。


一人。


二人。


三人。


その先。


最後の敵。


ヴァルドの剣。


敵兵。


倒す。


「……はっ」


ヴァルド。


振り返る。


「……ギーファ」


「馬鹿!」


ギーファが。


走る。


「一人で――」


ヴァルドの身体。


揺れる。


「……あ」


膝。


落ちる。


「ヴァルド!」


ギーファが。


受け止める。


「おい」


返事。


ない。


「おい!」


ヴァルドの目。


僅かに。


開く。


「……うるせぇな」


「喋んな」


「どっちだよ……」


「黙ってろ」


ギーファが。


身体を見る。


傷。


多い。


「そんな顔……すんなよ」


「してねぇ」


「してるって……」


ヴァルドが。


小さく笑う。


「……ガキ」


「?」


「逃げた?」


ギーファが。


後ろを見る。


遠く。


子供たち。


走っている。


「……ああ」


「逃げた」


ヴァルドが。


笑う。


「……そっか」


「よかった」


「喋んな」


「なぁ……」


「黙れって」


「ギーファ」


「……」


ヴァルドの声。


弱い。


「俺……」


少し。


間。


「大間違いだったな」


ギーファの目。


ヴァルドへ。


「……」


「お前が……正しかった」


「……」


ギーファは。


少し。


黙る。


そして。


「ああ」


ヴァルドの目が。


僅かに。


動く。


「お前は大間違いだ」


「……はは」


「とんでもねぇ馬鹿野郎だよ」


ヴァルドが。


少し笑う。


「そこまで……言うかよ」


「言うだろ」


ギーファが。


ヴァルドを抱える腕に。


力を込める。


「人を信じすぎなんだよ」


「……そうかもな」


「ああ」


「……」


「だから」


ギーファが言う。


「来世では」


一拍。


「もう少し人を疑え」


ヴァルドが。


小さく。


笑う。


「……来世か」


「ああ」


「じゃあ……」


ヴァルドが。


ギーファを見る。


「お前は……」


「?」


「もう少し……人を信じろよ」


ギーファが。


止まる。


「……余計なお世話だ」


「はは……」


小さな。


笑い声。


「それじゃ……」


息。


細い。


「また……喧嘩になるな」


「その時も俺が勝つ」


「いや……」


ヴァルドの目。


ゆっくり。


閉じていく。


「次は……俺が……」


「無理だろ」


「……言ってろ」


それが。


最後だった。


「……」


ギーファは。


何も言わない。


腕の中。


ヴァルド。


動かない。


遠く。


剣。


ぶつかる音。


叫び。


魔法。


爆発。


戦場。


なのに。


ギーファの周りだけ。


何も。


聞こえない。


「……ヴァルド」


返事はない。


一滴。


地面へ。


落ちる。


「……馬鹿野郎」


ギーファは。


ヴァルドを。


静かに。


地面へ寝かせる。


剣。


握る。


立つ。


「……」


敵兵。


迫る。


「いたぞ!」


「ギーファだ!」


「囲め!」


ギーファが。


顔を上げる。


目。


見開かれている。


呼吸。


荒い。


「撃て!!」


火球。


飛ぶ。


ギーファ。


首。


傾ける。


通過。


風刃。


身体。


捻る。


避ける。


雷。


「――っ!」


直撃。


爆発。


「やった!」


煙。


敵兵。


安堵。


一歩。


音。


「……?」


煙。


中。


人影。


ギーファ。


出てくる。


肩。


焼けている。


血。


流れている。


それでも。


止まらない。


「な……」


敵兵。


後退。


「なんで……」


ギーファ。


走る。


「来るぞ!!」


一人。


斬る。


二人。


三人。


「距離取れ!!」


魔法。


飛ぶ。


避ける。


当たる。


転ぶ。


立つ。


走る。


斬る。


「なんだよ……!」


兵士が叫ぶ。


「なんなんだよこいつ!!」


ギーファ。


答えない。


呼吸。


荒い。


「……ッ」


目。


血走っている。


痛み。


ある。


身体。


限界。


そんなもの。


もう。


どうでもいい。


敵。


倒す。


次。


敵。


倒す。


次。


それだけ。


「魔法隊!!」


指揮官が叫ぶ。


「一斉に撃て!!」


複数。


魔法陣。


展開。


「放て!!」


炎。


雷。


風。


ギーファへ。


飛ぶ。


一歩。


踏み込む。


炎。


避ける。


雷。


横。


風。


肩。


裂く。


止まらない。


炎。


身体。


掠める。


止まらない。


「なんでだ……」


魔法使い。


震える。


「なんで止まらない……!」


ギーファ。


目の前。


「ひっ――」


剣。


振る。


次。


「退け!!」


指揮官。


叫ぶ。


「距離を取れ!!」


兵士たち。


後退。


一人。


剣。


落とす。


カラン。


「……無理だ」


「何してる!」


「無理だ……!」


「拾え!」


「無理だ!!」


ギーファが。


歩いてくる。


「来るぞ!」


「構えろ!」


「嫌だ!」


兵士。


後退。


「勝てるわけねぇだろ!!」


「相手は一人だぞ!!」


「一人だから何だ!!」


兵士が。


叫び返す。


「見ろよ!!」


ギーファ。


傷。


血。


荒い呼吸。


それでも。


こちらへ。


来る。


「何発当てたと思ってんだ!!」


「なんで!!」


声。


震える。


「なんでまだこっちに来るんだよ!!」


一人。


逃げる。


二人。


続く。


「戻れ!!」


「逃げるな!!」


戦列。


崩れる。


ギーファ。


追う。


敵兵。


転ぶ。


「……っ!」


振り返る。


ギーファ。


目の前。


「ま、待て!」


剣。


捨てる。


「降伏する!」


ギーファ。


止まらない。


「もう戦わない!」


一歩。


「頼む……!」


一歩。


「助けてくれ!!」


命乞い。


ギーファの耳には。


もう。


届いていなかった。


剣。


振る。


声。


途切れる。


「……」


別の兵士。


それを見る。


顔。


青ざめる。


「……悪魔」


ギーファが。


ゆっくり。


顔を向ける。


兵士。


震える。


「あれは……」


一歩。


後退。


「悪魔だ……」


その言葉が。


伝わる。


一人。


また一人。


「悪魔……」


「来るぞ!」


「逃げろ!!」


エルグラン兵。


たった一人の男から。


逃げ始めた。



エルグラン王国。


王宮。


「……」


エドガーは。


窓の外を見ていた。


今朝。


父。


国王は。


城を出た。


『少し視察へ出る』


それだけ。


どこへ。


何のために。


聞いても。


曖昧だった。


「……」


胸。


騒ぐ。


何か。


おかしい。


エドガーが。


立ち上がる。


「誰か!」


騎士。


入る。


「はっ」


「アルヴァ周辺へ配置した部隊」


「……」


「連絡は取れるか?」


騎士の表情。


僅かに。


変わる。


エドガーが。


それを見逃さない。


「……何だ」


「いえ」


「何か知ってるのか」


「……」


「答えろ」


騎士。


黙る。


エドガーの顔から。


血の気。


引く。


「……まさか」


走る。


「殿下!」


「馬を出せ!!」



「殿下!」


馬。


走る。


「お待ちください!」


エドガー。


止まらない。


アルヴァ。


近づく。


その途中。


兵。


道。


塞ぐ。


「殿下!」


「止まってください!」


エドガーが。


馬を止める。


「退け」


「ここから先は立入禁止です!」


「誰の命令だ」


「……」


「誰の命令だ!!」


兵士。


俯く。


「国王……陛下です」


エドガーの目。


見開かれる。


「……退け」


「殿下」


「退け!!」


「できません!」


エドガー。


馬。


走らせる。


「殿下!!」


突破。


アルヴァへ。


近づく。


煙。


見える。


「……」


エドガーの顔。


強張る。


「嘘だろ……」


さらに。


進む。


村。


見える。


戦場。


エルグラン兵。


剣。


アルヴァ。


逃げる人々。


燃える建物。


「……なんだよ」


馬。


止める。


降りる。


「なんだよ……」


声。


震える。


「これ……」


涙。


滲む。


「何なんだよ!!」


その時。


子供。


走る。


後ろ。


エルグラン兵。


「待て!」


兵士。


剣。


振り上げる。


「やめろ!!」


エドガー。


間。


入る。


剣。


受ける。


「……殿下!?」


兵士。


固まる。


エドガーが。


睨む。


「何をしている」


「しかし!」


「何をしていると聞いている!!」


「これは国王陛下の――」


「黙れ!!」


エドガー。


自国の兵へ。


剣。


向ける。


「この者たちに」


声。


震える。


「手を出すな!!」


兵士。


動けない。


エドガー。


子供たちへ。


振り返る。


「逃げろ!」


子供。


固まっている。


「早く!!」


「でも……」


「いいから!」


エドガーが叫ぶ。


「逃げろ!!」


子供たち。


走る。


エドガーは。


周囲を見る。


「ヴァルド……」


走る。


「ギーファ!」


戦場。


進む。


「ヴァルド!!」


返事。


ない。


「どこだ!!」


涙。


流れる。


「ギーファ!!」


その時。


兵士たち。


逃げてくる。


「逃げろ!」


「悪魔だ!」


「来るぞ!!」


エドガーが。


止まる。


「……?」


兵士たちの向こう。


一人。


歩いてくる。


全身。


傷。


血。


剣。


握っている。


ギーファ。


そして。


その腕。


一人。


抱えている。


エドガーの目が。


大きくなる。


「……」


足。


動かない。


見覚え。


ある。


髪。


服。


顔。


何度も。


話した。


何度も。


笑った。


男。


「……ヴァルド?」


ギーファが。


止まる。


ゆっくり。


顔を上げる。


二人。


目が合った。

信じることで未来を変えようとしたヴァルド。


最後まで疑うことで仲間を守ろうとしたギーファ。


考え方は正反対で、何度もぶつかった二人でした。


それでも最後まで、背中を預ける相手だけは変わらなかった。


「来世では、もう少し人を疑え」


「じゃあ、お前はもう少し人を信じろよ」


そして、ヴァルドを失ったギーファは止まらない。


そんな戦場へ、何も知らなかったエドガーが辿り着きました。


次回、アルヴァの戦いは最後の局面へ。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ