表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣しか持ちえない少年の英雄譚  作者: 喜怒哀楽
PR
44/66

奪還

捕らえられたエルフたちを前に、教団の精鋭部隊と対峙するザインとエリオン。


息の合った連携。


未知の拘束魔法。


これまでの教団員とは一線を画す敵を相手に、ザインたちは捕虜の奪還へ挑みます。


第44話「奪還」、よろしくお願いします!


「そいつら全員」


ザインは剣を肩へ担いだ。


一歩。


「返してもらうぞ」


森の中。


ザインとエリオンの前に並ぶ、二十人ほどの黒装束。


その後方には、いくつもの檻が並んでいた。


中にいるのはエルフたち。


女性。


子供。


負傷した騎士。


ザインは一度だけ檻へ視線を向ける。


そして。


「エリオン」


「なんだ」


「檻の方、頼める?」


エリオンがザインを見る。


「貴様は?」


ザインは正面を見る。


二十人。


全員が既に武器を構えている。


「こいつら退かしとく」


「……一人でか?」


「その方が早いだろ」


エリオンがザインを見つめる。


数秒。


「……やはり貴様は頭がおかしい」


「よく言われる」


「褒めていない」


「分かってるよ」


ザインが剣を下ろした。


中央に立っていた男が小さく笑う。


「随分と舐められたものですね」


ザインが男を見る。


「別に舐めてないよ」


「では、一人で我々を相手にすると?」


「うん」


「……」


「だから」


ザインが剣を構える。


「さっさと始めようぜ」


男の笑みが消えた。


「殺せ」


その瞬間。


四人。


同時。


「――!」


ザインが地面を蹴った。


正面。


剣。


首を狙ってくる。


身体を傾ける。


回避。


そのまま懐へ。


――ではなかった。


「っ」


右。


槍。


ザインが剣で弾く。


直後。


背後に魔法陣。


炎。


「チッ」


前へ飛ぶ。


そこへ。


既に一人。


剣が待っていた。


「……!」


ザインが身体を捻る。


刃が服を掠める。


着地。


一度距離を取った。


「へぇ」


四人は追ってこない。


元の位置へ戻る。


ザインが目を細めた。


「ちゃんとしてんな」


「何を余裕ぶっている!」


別の四人。


今度はザインから踏み込む。


一人目。


剣。


ザインが弾く。


二人目。


槍。


避ける。


ザインが一人目へ踏み込もうとした瞬間。


三人目。


魔法。


足元。


「っと」


横へ飛ぶ。


四人目。


そこにいる。


剣。


ガァン!


ザインが受け止める。


力で押し返す。


だが。


その間に残り三人が距離を取っている。


ザインも追わない。


「……なるほど」


剣を肩へ。


「一人じゃなくて」


四人を見る。


「四人で一人か」


誰も答えない。


ザインが笑う。


「面白いじゃん」



「ザイン!」


エリオンが叫ぶ。


「こっちは気にすんな!」


ザインは振り返らない。


「早く助けろ!」


「言われなくとも!」


エリオンが檻へ走る。


当然。


敵もそれを見ている。


三人がエリオンの前へ。


「退け」


返事はない。


剣。


エリオンが踏み込む。


速い。


一人目の攻撃。


僅かに身体をずらす。


すれ違う。


剣を一閃。


「ぐっ!」


次。


槍。


エリオンは剣の腹で受け流す。


そのまま一歩。


柄を顔へ叩き込む。


二人目。


最後。


魔術師。


「燃え――」


最後まで言わせない。


エリオンが一気に距離を詰める。


剣先が喉元で止まった。


「……動くな」


魔術師の顔が引きつる。


エリオンが剣の柄で殴り倒した。


檻の中。


エルフたちが目を見開いている。


「エリオン隊長……!」


「待たせた」


エリオンが鍵を見る。


「すぐに出す」


その時。


背後。


気配。


エリオンが振り返る。


剣。


ガァン!


受け止める。


「まだいるか……!」


「エリオン!」


ザインの声。


「そっちは任せた!」


「分かっている!」


エリオンが敵を押し返す。


「貴様こそ死ぬな!」


ザインが笑った。


「誰に言ってんだ!」



ガァン!


ザインの剣が弾かれる。


「おっと」


槍。


身体を反らす。


鼻先を通過。


ザインは槍の柄を掴んだ。


引く。


「なっ!」


槍使いが前へ崩れる。


だが。


その瞬間。


ザインは手を離した。


背後。


炎。


爆発。


「くっ!」


煙の中から飛び出す。


剣士。


ザインの脇腹へ剣。


ザインが受ける。


二人目。


背後。


三人目。


横。


「……」


ザインの表情から、少しずつ笑みが消えていく。


何度か。


同じ連携。


何度か。


違う組。


それでも。


基本は同じ。


ザインは剣を振りながら。


見ていた。


一人目が攻撃。


二人目が逃げ道を塞ぐ。


三人目が魔法。


四人目が着地点。


綺麗だ。


無駄がない。


だから。


「――分かった」


ザインが呟いた。


正面。


剣士が来る。


ザインは避けない。


ガァン!


剣で受ける。


右。


槍。


いつもなら避ける。


ザインは。


前へ出た。


「なっ!?」


剣士の胸倉を掴む。


そのまま。


引く。


「お前、そこな」


「何を――」


槍使いが止まれない。


「ぐあっ!」


槍が仲間の肩を掠める。


陣形が崩れる。


魔術師が魔法を撃てない。


ザインが笑った。


「やっぱり」


剣士を投げ飛ばす。


魔術師へ直撃。


「ぐっ!」


ザインが踏み込む。


「連携は綺麗だけどさ」


一人。


剣の腹で殴り飛ばす。


二人目。


蹴り。


三人目。


柄。


最後。


ザインの剣先が首元で止まる。


「綺麗すぎんだよ」


男の顔が引きつった。


ザインが剣を振る。


男が地面を転がる。


「決められた通りに動いてくれるなら」


剣を肩へ。


「逆に読みやすい」


中央。


指揮官の目が細くなる。


「……陣形変更」


その声。


全員が一斉に動いた。


ザインの眉が上がる。


「お」


四人一組だった陣形が崩れる。


前衛。


後衛。


魔術師。


それぞれが別々の位置へ。


「そう来る?」


ザインが笑った。


「いいね」


地面を蹴る。


再び。


戦闘。



「これで最後だ!」


エリオンが剣を振り抜いた。


護衛が倒れる。


すぐに檻へ。


「下がっていろ」


剣を振る。


ガァン!


鍵が壊れる。


扉を開けた。


「出ろ!」


「ありがとうございます!」


「動ける者は負傷者を支えろ!」


エルフたちが次々と外へ。


エリオンが次の檻へ向かう。


その時。


「そこまでです」


声。


エリオンが止まった。


指揮官。


いつの間にか。


檻の一つ。


その前に立っている。


中には。


小さなエルフの少女。


指揮官の手には魔法。


少女へ向けられていた。


「動かないでください」


エリオンの顔が険しくなる。


「貴様……」


ザインも戦闘の中で気付いた。


「……」


笑みが消える。


指揮官がザインを見る。


「剣を捨てなさい」


ザインは動かない。


「聞こえませんでしたか?」


少女が震えている。


ザインが見る。


そして。


剣から手を離した。


カラン。


地面へ落ちる。


エリオンが目を見開く。


「ザイン!?」


ザインは両手を上げた。


「分かったよ」


指揮官が僅かに笑う。


「賢明です」


「降参する」


「……」


「だから、その子は離せ」


エリオンがザインを見る。


何を考えている。


分からない。


ザインが指揮官を見る。


「ほら」


一歩。


「剣も捨てた」


「止まりなさい」


ザインが止まる。


指揮官の視線。


ザインへ集中する。


「……今」


小さな声。


エリオンの耳が動いた。


一瞬。


理解。


地面を蹴る。


「なっ!?」


エリオンが指揮官の腕へ剣を振る。


指揮官が反応。


少女から手を離す。


魔法がエリオンへ。


その瞬間。


ザインも動いた。


「遅い!」


素手。


指揮官の腕を掴む。


そのまま引き寄せる。


「ぐっ!」


エリオンが檻を開ける。


少女を抱き上げる。


「もう大丈夫だ」


「う……うぅ……」


指揮官がザインを睨む。


「貴様……!」


ザインが笑う。


「悪い」


腕を離す。


「降参やめた」


指揮官が距離を取る。


「殺せ!」


残った精鋭がザインへ向かう。


ザインも地面の剣を拾う。


「第二ラウンド?」


その瞬間。


指揮官の両手に魔力が集まった。


「――《縫界》」


「……?」


ザインの身体が止まった。


完全に。


「……は?」


右腕。


動かない。


脚。


動かない。


指。


動かない。


ザインが目だけを動かす。


「何これ」


指揮官がゆっくり歩いてくる。


「対象の肉体を、魔力によって空間そのものへ固定する拘束術です」


ザインが自分の腕を見る。


「へぇ」


「どれほど速かろうと」


指揮官が笑う。


「動けなければ意味はない」


エリオンがザインを見る。


「ザイン!」


「来るな!」


ザインが即座に叫んだ。


エリオンが止まる。


「でも――」


「捕虜守っとけ!」


ザインは指揮官を見る。


そして。


腕に力を込めた。


「……?」


指揮官の眉が動く。


ザインの腕。


僅かに。


震えた。


「何をしている?」


「何って」


ザインが歯を食いしばる。


ギチッ。


空間が軋むような音。


「動こうとしてんだけど」


指揮官の表情が止まった。


「……は?」


ザインがさらに力を込める。


ギギギギギ――!


魔力が震える。


右腕。


ほんの少し。


前へ。


「なっ……」


指揮官が両手へ力を込める。


「馬鹿な……!」


ザインの足が。


僅かに動く。


「止まれ!」


ザインの額に血管が浮かぶ。


「だから……」


ギギギ――!


一歩。


「無茶……言うなって!」


ズッ。


右足が。


地面を擦りながら前へ出た。


「……!」


指揮官の右腕が震えた。


「ぐっ……!?」


ザインがそれを見る。


「あ?」


指揮官が腕を押さえる。


だが。


術は解除しない。


「止まれ……!」


ザインの口元が上がる。


「もしかして」


さらに一歩。


「これ」


ギチギチギチ――!


「お前にも負担掛かってんの?」


「黙れ!」


指揮官の額から汗。


ザインを固定する魔力。


その一本一本が。


限界まで引き伸ばされている。


エリオンが言葉を失っていた。


「……何をしているんだ、あいつは」


捕虜のエルフも。


精鋭たちも。


全員がザインを見る。


本来。


動けるはずがない。


術式を解除するか。


術者を倒すか。


それ以外に。


この拘束から逃れる方法などない。


なのに。


ザインは。


ただ。


力だけで。


歩いている。


「ぐっ……!」


ザインが顔を歪める。


さすがに。


重い。


全身を無数の鎖で縛られているような感覚。


それでも。


止まらない。


「結構……」


一歩。


「強ぇな……!」


指揮官の腕がさらに震える。


「やめろ……!」


ザインが顔を上げる。


「嫌だね」


踏み込む。


「止まれぇぇぇ!!」


指揮官が魔力を最大まで流し込んだ。


ザインの身体が再び止まりかける。


「……っ!」


一瞬。


ザインの動きが止まる。


だが。


「おおおおっ!!」


力。


純粋な。


肉体の力。


ザインが右腕を。


無理やり。


振り抜いた。


ブチンッ!!


何かが。


切れた。


魔力の拘束。


一本。


二本。


次々と。


ブチッ!


ブチンッ!


ザインを固定していた術式が破断していく。


「馬鹿な……!」


指揮官が目を見開く。


最後。


ザインが一歩。


強く踏み出した。


バキンッ!!


《縫界》。


完全破壊。


同時。


「――ぐぁっ!!」


指揮官の身体が大きく仰け反った。


右腕。


術式の反動が一気に返る。


鈍い音。


指揮官が腕を押さえ、その場へ膝をついた。


「ぐっ……ぁ……!」


腕は力なく垂れ下がっていた。


ザインは。


「……っはぁ」


大きく息を吐いた。


肩を回す。


「……危な」


腕。


脚。


動く。


「もう一回は食らいたくねぇな、これ」


エリオンはザインを見る。


「…………」


ザインが気付く。


「何?」


「いや」


エリオンが首を振る。


「もう貴様について考えるのはやめようと思ってな」


「なんだそれ」


「そのままの意味だ」


ザインが首を傾げる。


「変な奴」


「貴様だけには言われたくない!」


ザインが笑った。


そして。


前を見る。


残った精鋭。


誰も。


すぐには動かない。


指揮官の拘束魔法。


彼らも知っていた。


捕らえた時点で。


終わり。


そういう魔法だった。


それを。


目の前の人間は。


力だけで。


引き千切った。


ザインは地面に落ちていた剣を拾う。


軽く振る。


そして。


肩へ担いだ。


一人。


二人。


三人。


残った精鋭を順番に見る。


ザインの口元が上がった。


「さて」


一歩。


「次は誰がお披露目するのかな?」


誰も答えない。


ザインが笑う。


「来ないなら」


剣を下ろす。


「こっちから行くぞ」


地面が弾けた。


「――ッ!」


ザインが消える。


「散開!」


精鋭たちが一斉に動く。


一人。


ザインの剣が迫る。


防御。


ガァン!


吹き飛ぶ。


二人目。


魔法。


ザインは走りながら避ける。


三人目。


槍。


掴む。


引く。


膝。


「ぐっ!」


四人目。


剣。


ザインが受ける。


蹴り飛ばす。


先ほどまで。


ザインを攻略しようとしていた陣形。


今は。


違う。


崩されている。


「右だ!」


「分かっている!」


「魔法を――」


遅い。


ザインが懐へ。


柄。


一人。


回転。


蹴り。


二人。


背後。


ザインは振り返らない。


剣を後ろへ。


ガァン!


「なっ!」


ザインが振り向く。


「そこ」


敵の顔が引きつる。


「さっきもいたよな?」


剣の腹。


吹き飛ばす。


一人。


また一人。


精鋭が倒れていく。


そして。


最後。


「くっ……!」


一人の剣士が後退する。


ザインが前。


エリオンが後ろ。


逃げ場はない。


ザインが剣を肩へ担ぐ。


「終わり?」


男が剣を落とした。


「……降参する」


ザインが止まる。


「そう」


剣を下ろす。


「じゃあ座ってて」


「……?」


「変なことしたら斬るから」


男は黙って地面へ座った。


ザインが周囲を見る。


終わった。


エリオンが檻から最後のエルフを出す。


「これで全員だ」


ザインが近づく。


「怪我人は?」


「いる。だが、命に関わる者はいない」


「そっか」


ザインが息を吐いた。


「よかった」


その時。


「……まだです」


ザインが振り返る。


指揮官。


地面へ膝をついたまま。


折れた腕を押さえている。


それでも。


笑っていた。


「何?」


ザインが近づく。


指揮官が檻の中にいたエルフたちを見る。


「我々が……ここで捕らえた者が」


笑う。


「全員だとでも?」


ザインの表情が変わった。


エリオンも。


「……何?」


指揮官が笑う。


「既に」


一呼吸。


「何人も運び出していますよ」


エリオンが男へ掴みかかる。


「どこへ連れて行った!」


「さあ」


「答えろ!」


ザインがエリオンの肩を掴む。


「待て」


「だが!」


ザインが男の前へしゃがむ。


目線を合わせる。


「一個聞きたいんだけど」


指揮官がザインを見る。


「獣王国でも」


ザインの声が低くなる。


「獣人を攫ってた」


「……」


「今度はエルフ」


沈黙。


ザインが続ける。


「何が目的?」


指揮官は。


笑った。


「……より優れた素材が必要なのですよ」


ザインの眉が動く。


「素材?」


「獣人は」


男がゆっくり言う。


「身体」


エリオンの表情が険しくなる。


そして。


男の視線がエルフたちへ。


「エルフは」


笑み。


「魔力」


ザインから表情が消えた。


「……」


獣人。


身体。


エルフ。


魔力。


頭の中。


繋がる。


あの洞窟。


人の形を失った獣人たち。


あの子供。


最後に。


目の前で――。


ザインの手が僅かに握られた。


「……そういうことか」


「ザイン?」


ザインが立ち上がる。


「こいつ」


指揮官を見る。


「生かして連れて帰ろう」


エリオンも頷く。


「当然だ」


「知ってること全部吐かせる」


指揮官は。


それでも笑っていた。


ザインはその顔を一度だけ見る。


「……気に入らねぇ」


その時。


森の向こう。


足音。


ザインたちが一斉に構える。


「副団長ー!!」


聞き覚えのある声。


ザインが剣を下ろす。


「……ガレスか」


木々の向こうから。


ガレス。


その隣。


ロディス。


さらに。


リナとセリス。


ジグ。


ダリオ。


アルト。


そして獣王国の騎士たち。


全員が姿を現した。


「副団長!」


ガレスが手を上げる。


「無事でしたか!」


ザインが周囲を見る。


「見りゃ分かるだろ」


「ですよね!」


ガレスの隣。


ロディスがザインを見る。


「お前がザインか!」


ザインも見る。


「誰?」


ガレスがロディスの肩を叩く。


「俺の新しい友達!」


「友達とは言ってない!」


「仲良いじゃん」


ザインが言う。


「だろ?」


「違うと言っている!」


ロディスの声が響く。


ザインが少し笑った。


その後ろ。


「だからあなたの火力だけじゃ――」


「あなたが細かすぎるのよ!」


リナ。


セリス。


まだ何か言い争っている。


ザインがそちらを見る。


「……何か楽しそうだなお前ら」


「どこがですか!」


リナが即答。


「仲良くなった?」


「なってません!」


セリスも同時。


「なってないわ!」


ザインが笑う。


「息ぴったりじゃん」


「副団長!」


さらに後ろ。


ジグ。


ダリオ。


アルト。


ザインがアルトを見る。


「そっちは?」


ダリオが答える。


「なんかジグと気が合うエルフ」


アルトが眉を寄せる。


「なんかとは何だ」


ジグがザインを見る。


「非常に合理的な戦い方をする方です」


「お前が言うなら相当だな」


「はい」


ダリオが頭を抱える。


「また始まった……」


ザインは。


少しだけ周囲を見た。


人間。


エルフ。


獣人。


つい数時間前まで。


互いのことすらほとんど知らなかった者たち。


それが。


今は。


同じ場所に立っている。


「……そっちも終わったみたいだな」


ガレスが頷く。


「はい!」


セリスも答える。


「王都周辺の敵はほぼ排除したわ」


その時。


エリオンの通信石が光った。


『――エリオン隊長。応答せよ』


エリオンが取り出す。


「こちらエリオン」


『東部地区、敵部隊撤退!』


別の声。


『西部、制圧完了!』


さらに。


『王宮区画、安全を確保!』


そして。


数秒後。


『確認された敵勢力が撤退を開始しています!』


静寂。


エリオンが。


大きく息を吐いた。


「……終わったか」


ザインが横を見る。


「いや」


エリオンがザインを見る。


ザインは。


捕らえた指揮官へ視線を向けていた。


「まだだろ」


「……」


「連れて行かれた奴がいる」


ザインは続ける。


「そいつら取り返すまで」


剣を鞘へ。


「終わりじゃない」


エリオンはザインを見る。


そして。


小さく頷いた。


「ああ」


再び。


通信石。


『エリオン隊長』


「なんだ」


『王女殿下より命令です』


全員が静かになる。


『援軍を率い、王城へ帰還せよとのこと』


エリオンが答える。


「承知した」


通信が切れる。


ザインがエリオンを見る。


「援軍って」


「貴様らだ」


「俺らも?」


「当然だ」


ザインが露骨に嫌そうな顔をした。


「マジか……」


「なんだその顔は」


ザインは腹を押さえる。


「いや」


少し考える。


「飯出る?」


「貴様はこの状況で飯の心配か!?」


ガレスが手を上げる。


「俺も気になってました!」


「お前もか!」


ロディスが豪快に笑う。


「ガハハ! 安心しろ! 王城の飯は美味いぞ!」


ザインとガレスが同時に振り返る。


「マジ?」


「本当か!?」


リナが頭を抱えた。


「もう……」


セリスが呆れた顔でザインを見る。


「これが人間の騎士団なの?」


リナが少し考える。


「……否定できません」


「おい」


ザインが振り返る。


小さな笑い声。


エルフ。


人間。


獣人。


誰からともなく。


笑っていた。


つい先ほどまで。


国中で戦っていたというのに。


ザインは頭を掻く。


「……じゃ」


王城の方向を見る。


「行くか」


誰も異論はなかった。


戦いは。


ひとまず終わった。


だが。


ザインたちはまだ知らない。


この国へ来たことが。


そして。


この国でザインが剣を振るったことが。


彼自身すら知らなかった過去へと。


繋がっていることを。


「獣人は身体。エルフは魔力。」


教団の口から語られた、種族を“素材”として扱う目的の一端。


王都を守ることには成功しましたが、既に連れ去られてしまった者たちも残されています。


そして、つい先ほどまで距離のあった人間、獣人、エルフたちも、共に戦ったことで少しずつ戦友へ。


ひとまず戦いを終え、ザインたちはエルフ王城へ向かいます。


そこで待っているのは――。


次回もよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ