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剣しか持ちえない少年の英雄譚  作者: 喜怒哀楽
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攻略の糸口

第34話から続く、第一軍直属部隊とアストラ教団の激闘。


敵の能力が少しずつ明らかになり、戦いは新たな局面へと入っていきます。


それぞれがどのように相手の能力を見抜き、攻略していくのか。


第一軍直属部隊の戦いに、ぜひご注目ください。


それでは、第35話をどうぞ。



森の中に、四つの戦場があった。


誰も援護には入らない。


誰も助けを求めない。


それぞれが、自分の目の前にいる敵だけを見ていた。


そして――。


戦い方が変わり始めていた。


---


「おらぁッ!!」


ガレスの大剣がグランへ迫る。


グランは避けない。


**ギィィン!!**


またしても刃が弾かれた。


「何度やっても同じだ!」


グランが笑う。


だが。


ガレスは笑わなかった。


代わりに、剣を見た。


刃こぼれしている。


それは今までの攻撃でも同じだった。


しかし。


「……ん?」


ガレスの目が細くなる。


刃先。


ほんの僅か。


グランの肩に――。


白い線が入っている。


「……。」


ガレスは何も言わない。


もう一度。


同じ場所を斬る。


**ギィン!!**


グランの肩が僅かに揺れた。


「……チッ。」


今度はグランの顔から笑みが消えた。


ガレスは確信する。


(通った。)


ほんの僅か。


傷と呼べるほどでもない。


だが。


最初は傷一つ付かなかった。


「お前。」


ガレスが笑う。


「ずっと硬いわけじゃねぇな?」


グランの眉が動いた。


「……何を言ってやがる。」


「最初より、ちょっと柔らかくなった。」


グランは黙った。


ガレスは大剣を構え直す。


「じゃあ、もう一回だ。」


グランが舌打ちする。


「……!」


ガレスの口元が吊り上がった。


「図星か。」


---


「はぁ……!」


ダリオの拳がボルグの腹へ叩き込まれる。


**ドゴォン!!**


次の瞬間。


「ぐおっ!」


ダリオの身体が吹き飛んだ。


地面を転がりながら、ダリオは笑う。


「やっぱりだ。」


ボルグが眉をひそめる。


「何がだ?」


ダリオは立ち上がる。


拳を握り直す。


「お前、俺の攻撃をそのまま返してるわけじゃねぇ。」


「……。」


「最初に殴った時より、今の方が返ってくる衝撃が強ぇ。」


ボルグの顔から笑みが消えた。


ダリオは剣を抜く。


「じゃあ試してみるか。」


「今度は軽く斬る。」


ボルグは構える。


ダリオが一歩踏み込む。


剣を振る。


浅い。


本当に浅い一撃。


**キンッ!**


次の瞬間。


ダリオの肩に衝撃が返ってきた。


「……っ!」


しかし。


さっきまでとは明らかに違う。


弱い。


ダリオは笑った。


「やっぱりな。」


ボルグの瞳が鋭くなる。


「……何が分かった?」


ダリオが剣を肩に担ぐ。


「お前は。」


「受けた衝撃を溜めてる。」


「……。」


「しかも。」


ダリオは拳を握る。


「溜められる量には限界がある。」


ボルグの表情が変わった。


「だったらどうする?」


ダリオが笑う。


「簡単だ。」


「全部吐かせる。」


---


シグはまだ動いていなかった。


ジードは苛立っていた。


「いつまでそうしてるつもりだ?」


周囲には無数の残像。


十。


二十。


三十。


どれも同じ姿。


「俺を探してるんだろ?」


ジードが笑う。


「なら、探してみろ!」


一斉に襲い掛かる。


シグは一歩後退する。


右。


左。


背後。


すべてを避ける。


だが。


一体だけ。


シグの肩を掠めた。


「……。」


シグは振り返る。


そこには誰もいない。


(残像は。)


(本体と同じ動きをしている。)


シグは目を閉じた。


音を聞く。


葉が揺れる。


風が吹く。


足音。


一つ。


二つ。


三つ。


その中に――。


僅かに違う音が混じった。


「……。」


シグの目が開く。


「分かった。」


ジードが笑う。


「何が?」


「お前の能力。」


ジードの笑みが止まる。


シグは短剣を構えた。


「残像は俺を騙せる。」


一歩。


「だが。」


もう一歩。


「お前自身の音までは消せない。」


ジードの顔から笑みが消えた。


---


「……。」


リナは周囲を見ていた。


炎で焼けた木。


地面に落ちた葉。


立ち上る煙。


そして。


空気。


(見えない。)


(でも、確かに何かがある。)


エルマが笑う。


「どうしたの?」


「もう魔法を撃たないの?」


リナは答えない。


手のひらに小さな火を灯す。


炎が揺れる。


煙が流れる。


その瞬間。


煙の一部だけが不自然に裂けた。


「……。」


リナの目が細くなる。


「そこ。」


炎を投げる。


エルマが避ける。


「!」


炎はエルマへ向かわない。


その少し手前で爆発した。


熱風が森を走る。


煙が一気に広がる。


その煙の中に――。


細い線が浮かび上がった。


「……やっぱり。」


エルマの表情が変わる。


「気付いたの?」


リナは笑わない。


「魔力糸。」


空間に張り巡らされた無数の糸。


それが炎を逸らし。


攻撃を防ぎ。


時には直接リナを切り裂いていた。


「なるほどね。」


リナは魔力を練る。


「私の魔法を避けてたんじゃない。」


「あなたが。」


「糸で逸らしてた。」


エルマは笑う。


「分かったところで何になるの?」


リナは答えない。


ただ。


今までとは違う魔力の練り方を始めた。


---


四つの戦場。


四人が同時に敵の能力へ手を掛けた。


だが。


敵もまた、それに気付いていた。


グランは肩を押さえながら笑う。


「……バレたか。」


ボルグは拳を握る。


「面白ぇ。」


ジードは残像を消し、一人だけの姿になる。


「なら、ここからだ。」


エルマは無数の魔力糸を張り巡らせる。


「気付いた程度で。」


「勝てると思わないことね。」


四人の敵が笑う。


それに対して。


ガレスは笑った。


ダリオも笑った。


シグは静かに短剣を構えた。


リナは怒りを押し殺しながら、敵を睨みつける。


まだ決着はついていない。


だが。


戦いはもう。


一方的なものではなくなっていた。


今回は、四つの戦場でそれぞれの能力の正体が少しずつ見えてきました。


ですが、まだ誰一人として決着はついていません。


ここからは、ただ能力を見抜くだけではなく、それをどう利用して勝利へ繋げるのかが重要になってきます。


そして次回は、いよいよこの戦いも大きく動きます。


第一軍直属部隊は、この強敵たちを打ち破れるのか。


次回もお楽しみに!


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