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剣しか持ちえない少年の英雄譚  作者: 喜怒哀楽
イリス奪還編
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17/102

約束の期日

大洞窟から無事に生還したザインたち。


ようやくいつもの日常へ戻れる――はずだった。


しかし、ギルドを訪れた一人の男によって、三人の日常は突然終わりを告げる。

大洞窟から生還して、数日が経った。魔力を使い果たして倒れたノアもすっかり回復し、ザインたちは久しぶりに三人揃ってギルドを訪れていた。


「……なんか、騒がしくない?」


扉の前で、ザインが首を傾げる。


「ギルドなんていつもこんなものでしょ」


イリスは気にも留めず、扉へ手をかけた。


「とりあえず入りましょう」


ノアもその後に続く。そして、三人がギルドへ足を踏み入れた瞬間。


「おおおおおおお!!」


「……?」


突然、ギルド中から歓声が上がった。


「来たぞ!」


「洞窟帰りの三人組だ!」


「お前ら、本当に生きてたのか!」


「地竜に遭遇したって聞いたぞ!」


あっという間に、三人の周りへ冒険者たちが集まってくる。


「ちょ、ちょっと!」


イリスが顔をしかめる。


「近いんだけど!」


「よく帰ってきたな!」


「深層まで落ちたんだろ!?」


「しかも地竜に追い回されたって?」


「追い回されたっていうか……」


ザインが少し考える。


「まあ、追い回されたね」


「よくそれで生きてんな、お前ら!」


「帰ってきただけなんだけど」


「その帰ってくるのが普通じゃねえんだよ!」


背中を勢いよく叩かれる。


「痛っ」


「地竜から逃げ切った奴がこれで痛がるなよ!」


「痛いものは痛いでしょ」


周囲から笑い声が上がる。


「皆さん、ご心配をおかけしました!」


ノアが深々と頭を下げた。


「なんでノアが代表みたいになってんのよ」


「だって、皆さん心配してくださってたんですよ!」


「そうだけど……」


イリスも、なんだかんだ言いながら、少しだけ笑っていた。


洞窟へ向かう前とは違う。三人を見る冒険者たちの目には、明らかに親しみがあった。冒険者になって約一ヶ月。ザインたちは、いつの間にか、この場所の一員になっていた。


「そういやノア」


「はい?」


「杖は?」


「……。」


ノアの表情が曇る。


「折れました」


「折れた!?」


「洞窟で下層へ落ちた時に……」


「あー……」


冒険者の一人が同情するように肩を叩く。


「そりゃ災難だったな」


「でも杖なしで魔法使ってたよ」


「ザインさん!?」


「え?」


「杖なしで?」


「マジかよ!」


「ちょっと待ってください!」


ノアが慌てて両手を振る。


「一回だけです! 本当に一回だけ!」


「でも使えたじゃん」


「あれは必死だったからです!」


「じゃあ必死になれば使えるんだ」


「そんな簡単な話じゃありません!」


再び、ギルドに笑い声が響く。受付嬢も、カウンターの向こうから楽しそうに三人を見ていた。


いつものギルド。いつもの喧騒。ようやく、日常へ戻ってきた。


――その時だった。


ギィ――。扉が開く。


「――。」


最初に気付いたのは、受付嬢だった。入口へ目を向けた瞬間、その表情が固まる。


「あちゃー……」


額へ手を当てる。


「来ちゃったか……」


「?」


ザインが振り返る。一人の男が立っていた。明らかに冒険者ではない。仕立ての良い衣服。腰には装飾の施された剣。立ち姿。纏う雰囲気。何もかもが、この場所にいる者たちとは違っていた。


男が、ギルド内を見渡す。そして、ある一点で、視線を止めた。


「……。」


イリスだった。


「……兄様」


「兄様?」


ザインがイリスを見る。先ほどまで笑っていたイリスの表情から、笑みが消えている。


男が、ゆっくりと歩いてくる。周囲の冒険者たちなど、まるで存在していないかのように。


「随分と楽しんでいたようだな、イリス」


「……兄様。なぜここに」


「なぜ?」


男が眉を上げる。


「まさか」


一歩、イリスへ近づく。


「本当に逃げ切れると思っていたのか?」


「……!」


「お前がこの街にいることなど、とうに把握していた」


「……いつからですか」


「最初からだ」


「……。」


イリスの顔が強張る。


「では……なぜ今まで」


「時間を与えてやった」


男は当然のように答えた。


「頭を冷やし、自らの立場を思い出すための時間をな」


「……。」


「考える時間を与えてやったに過ぎないことを忘れるな」


イリスの拳が、強く握られる。男は周囲を見渡した。冒険者。武器。酒場。依頼書。


「それをお前は――」


僅かに眉をひそめる。


「こんな下々の集まる場所に入り浸り、冒険者の真似事とは」


「……。」


ギルドが、静まり返った。


「このような場所に長くいれば、お前まで腐敗してしまうぞ」


「……兄様」


「帰るぞ」


「お断りします」


男の足が止まる。


「何?」


「私は帰りません」


「……。」


「今は冒険者として活動しています」


「冒険者?」


男が、初めて周囲を見た。


「お前が?」


「はい」


「このような者たちに混じって?」


「……はい」


「何を馬鹿な」


「遊びではありません」


イリスの声が、僅かに強くなる。


「私は自分の意思で、ここにいます」


「だから何だ?」


「……。」


「お前の意思など聞いていない」


男がイリスへ手を伸ばす。


「帰るぞ」


「離してください」


「イリス」


「帰りません」


「……まだ分からないのか」


男の目が、細くなる。


「お前は自由になったのではない」


「……。」


「私が自由にさせていただけだ」


「……っ」


「随分と外の空気に当てられたようだな」


男が小さく息を吐く。


「愚かな妹よ」


「……。」


ザインは、そのやり取りを黙って聞いていた。家庭の問題。貴族の事情。自分には分からない。だから、口を出すべきではないと思っていた。でも。


「……ちょっと」


ザインが口を開いた。


「ザイン?」


「言い過ぎなんじゃないか?」


男の視線が、初めてザインへ向く。


「俺にはそっちの家庭問題は知らんけど」


ザインは、男を見る。


「嫌がってんだから、離してやれよ」


「ザイン!」


イリスが叫ぶ。


「ダメよ、離れて!」


「え?」


「これは私の問題よ! あなたは――」


「誰だね、君は」


男が遮る。


「ザイン」


「ザイン……」


男は、ザインを頭から足元まで見る。


「ふむ……」


僅かに眉を寄せた。


「全く魔力を感じないが」


「ああ」


ザインはあっさり頷く。


「魔力ないからな」


「……魔力がない?」


「うん」


「そうか」


男が、小さく頷いた。


「では、なおさら理解できんな」


「何が?」


「なぜ君のような者が」


冷たい視線。


「私とイリスの会話に口を挟んでいる?」


「……。」


「身の程を弁えたまえ」


ザインの眉が動く。


「だから、そういう言い方が――」


「ザイン!!」


イリスが叫んだ。瞬間、男の姿が消えた。


「――え」


腹部。凄まじい衝撃。


「がっ――!」


ザインの身体が宙へ浮く。ドゴォォォン!! ギルドの壁を突き破った。瓦礫と共に外へ吹き飛び、地面を転がる。


「ザイン!!」


「……兄様!」


イリスが男を睨む。


「何をなさるのですか!」


「何を?」


「ザインは関係ありません!」


「関係のない者が口を挟んできたのだろう」


「だからといって――!」


ガラッ。


「……?」


瓦礫が動く。


「いっ……てぇ……」


ザインが、立ち上がった。腹を押さえ、自分が突き破った壁を見る。


「……壁壊れてるじゃん」


「心配するとこそこ!?」


イリスが叫ぶ。


「いや……だって」


ザインが男を見る。


「何だ今の」


「ほう」


男の眉が、僅かに上がった。


「ちゃんと起き上がれて偉いじゃないか」


「……。」


「魔力を持たぬ割には、随分と丈夫らしい」


「褒めてる?」


「褒めているとも」


男が、イリスから手を離す。ザインへ向き直った。


「少しだけ」


僅かに笑う。


「遊ぶかい?」


「兄様!」


「心配するな、イリス」


男は穏やかに答える。


「壊しはしない」


「そういう問題ではありません!」


ザインが、剣を抜いた。


「ザイン! やめなさい!」


「大丈夫」


「何が大丈夫なのよ!」


「今の」


ザインが剣を構える。


「ちょっとムカついた」


「……そうか」


男が、楽しそうに笑った。


「では、来たまえ」


ザインが地面を蹴る。一気に間合いへ。横薙ぎ。


「遅いな」


「……!」


避けられる。二撃。三撃。ザインが次々と剣を振るう。だが、一度も届かない。


「素直だな」


手首を掴まれる。


「え――」


身体が回る。ドンッ!!


「ぐっ!」


地面へ、叩きつけられた。


「ザイン!」


「まだ!」


すぐに立つ。


「ほう」


男が笑う。


「いいね」


ザインが再び踏み込む。突き。避けられる。そのまま横薙ぎ。いない。


「……!」


「後ろだ」


「っ!」


振り返る。遅い。ドッ!!


「がっ!」


拳が腹部へ入る。身体が浮く。続けて蹴り。


「――っ!」


ザインが吹き飛ぶ。


「ザイン! もうやめなさい!」


「……まだ」


「無理よ!」


「まだ分かんないだろ」


「分かるわよ!」


ザインは、剣を地面へ突き立て、再び立つ。


「あなたじゃ兄様には勝てない!」


「……。」


ザインが、一瞬イリスを見る。


「余所見はいけないな」


「――っ!」


目の前。男がいた。ザインが咄嗟に剣を振る。空を切る。


「力はある」


ドッ!


「ぐっ!」


脇腹。


「速さも悪くない」


ザインが振り返る。拳。


「っ!」


頬。


「反応も」


ザインが剣を振り下ろす。手首を掴まれる。


「平民にしては上等だ」


「……っ」


「だが」


ザインの身体が引き寄せられる。膝。腹部。


「がっ……!」


「私に届くには――」


そのまま、投げ飛ばす。ドォン!!


「少々早すぎるな」


地面へ、叩きつけられる。剣が、ザインの手から離れた。


「……っ」


「まだ立つのか?」


「……当たり前……だろ」


ザインが、地面へ手をつく。ゆっくりと、立ち上がる。


「……。」


男は、そんなザインを見て、僅かに目を細めた。ザインが、剣を拾う。


「まだ……」


「ザイン!」


イリスが叫ぶ。


「もうやめなさい!」


「……。」


「あなたじゃ兄様には――」


ザインが、一瞬イリスを見る。


「終わりだ」


「――!」


ドッ――。拳が、ザインの腹部へ深く入った。


「……っ」


息が、止まる。膝が落ちる。


「よく頑張った」


「……。」


「魔力も持たず、私を相手にここまで立っていられたのだ」


ザインの視界が、揺れる。


「誇っていい」


「……まだ……」


「もういい」


カラン――。剣が落ちた。


「……イ……リス……」


「ザイン!」


その声を最後に、ザインの意識は途切れた。


     ◇


「ザイン!!」


イリスが駆け出そうとする。


「さて」


男が、イリスへ向き直った。


「遊びは終わりだ」


「……兄様」


イリスの周囲に、炎が浮かぶ。


「私は帰りません」


「まだ言うか」


「何度でも申し上げます!」


炎が、燃え上がる。


「私は――」


男が消えた。


「……!」


「少し眠っていなさい」


「兄さ――」


トン。首元へ、手が触れる。


「……。」


イリスの身体から、力が抜けた。炎が消える。男が、倒れるイリスを受け止めた。


「……まったく」


眠る妹を見る。


「手のかかる妹だ」


「イリスさん!」


ノアが一歩踏み出す。その瞬間、男が、ノアを見た。


「――っ」


ただ、それだけ。何も言わない。何もしていない。なのに、ノアの足が止まった。身体が動かない。


ザインが、何もできなかった。何度立ち上がっても、何度剣を振っても、一度として届かなかった。その男が、今、自分を見ている。


「……っ」


怖い。イリスを助けなければ。そう思っているのに、足が動かない。


男は、やがてノアから視線を外した。


「……はっ」


ノアが、ようやく息を吐く。


男は、気を失ったイリスを抱き上げた。そして、出口へ向かう。誰も、止められない。


やがて、男が足を止めた。ギルドの奥。そこには、ギルド長が立っていた。


「……。」


「……。」


二人の視線が交わる。


「邪魔したな、ギルド長よ」


ギルド長は、何も答えない。


「壁の修繕費は後ほど届けさせよう」


それだけ言って、男は、イリスを連れ、ギルドを出ていった。扉が、閉じる。


「……。」


静まり返ったギルド。ノアは、ようやくザインへ駆け寄った。


「ザインさん!」


返事は、なかった。


     ◇


「……っ」


ザインが、目を開ける。見慣れない天井。


「……ここ」


「ザインさん!」


横から声がする。


「……ノア?」


「よかった……!」


ノアが大きく息を吐いた。ザインは身体を起こそうとする。


「いっ……!」


「まだ寝ててください!」


「……。」


身体中が痛む。そして、記憶が戻る。


「……イリスは?」


「……。」


ノアが、俯いた。


「……連れてかれた?」


「……はい」


「そっか」


ザインは、天井を見る。


「ザイン君」


受付嬢が、部屋の隅に立っていた。


「大丈夫?」


「痛い」


「でしょうね」


「でも大丈夫」


「どっちなのよ……」


受付嬢がため息をつく。


「ザイン君」


「ん?」


「イリスちゃんから、自分の家について聞いたことある?」


「……貴族ってことくらい」


「やっぱり」


「そんなにすごい家なの?」


「すごいなんてもんじゃないわ」


受付嬢の表情が、真剣になる。


「イリス・フォン・アルヴェイン」


「……。」


「それが、あの子のフルネーム」


「アルヴェイン……」


「アルヴェイン公爵家。この国で知らない人を探す方が難しいほどの名門よ」


「そんなに?」


「王家との繋がりも深い。国政にも大きな影響力を持ってる」


「……。」


「特に魔法の分野では、アルヴェインの名を知らない者はいないと言っていい」


ザインは、黙って聞いている。


「そして」


受付嬢が続ける。


「さっきイリスちゃんを連れていった人」


「……あの人」


「レオンハルト・フォン・アルヴェイン」


「レオンハルト……」


「イリスちゃんのお兄さん。そして、アルヴェイン公爵家の嫡男よ」


「……。」


ザインが、自分の腹を見る。まだ、あの拳の感触が残っているような気がした。


「強かった」


「……でしょうね」


受付嬢が、小さく息を吐く。


「それで」


「?」


「イリスちゃんが家を出た理由」


少しだけ、間を置く。


「結婚よ」


「……結婚?」


「イリスちゃん、十六歳になったでしょ」


「うん」


「それを機に、家から縁談を言い渡された」


「……。」


「家同士の繋がりを強めるための、政略結婚」


「相手は?」


受付嬢が、ザインを見る。


「あなた、本当に何も知らないのね」


「?」


「国中に張り紙が出てるわよ」


「そうなの?」


「そうなの? じゃないわよ……」


受付嬢が額に手を当てる。


「王都じゃ今、その話で持ちきりよ」


「へえ」


「へえって……」


「ザインさんらしいですね……」


ノアが苦笑する。


「相手はユリウス・フォン・ヴァルハイト」


「……。」


「ヴァルハイト公爵家の嫡男」


「有名なの?」


「超が付くほどね」


受付嬢が答える。


「アルヴェイン家と同じく、国政に大きな影響力を持つ大貴族よ」


「……。」


「その二つの公爵家が、婚姻によって結びつく」


ザインも、ようやく話の大きさを理解し始める。


「だから国中で騒がれてるのか」


「そういうこと」


「でも」


ザインが聞く。


「イリスは嫌だった?」


「……そうね」


受付嬢は少し考える。


「結婚そのものというより」


「?」


「自分の人生を、勝手に決められることが嫌だったんだと思う」


「……。」


「誰と結婚するか」


「どこで暮らすか」


「これから何をするか」


「全部、家が決める」


ザインは、何も言わない。


「それが嫌で」


「家を出た」


「そういうこと」


「……。」


「でも」


受付嬢の声が、少し低くなる。


「逃げられてなんかなかった」


「……。」


「レオンハルト様が言ってた通り。イリスちゃんがこの街にいることは、最初からアルヴェイン家に知られてた」


「ギルドも?」


「知ってた」


「……だから」


「うん」


受付嬢が苦笑する。


「入ってきた時、とうとう来たかって思ったのよ」


「……そっか」


ザインは、しばらく黙る。そして。


「いつ?」


「え?」


「イリスの結婚」


受付嬢を見る。


「いつ行われるんだ?」


「……ザイン君」


「教えて」


受付嬢は、ザインの目を見る。少し迷い、答えた。


「二週間後よ」


「……二週間」


「王都の大広間で行われる」


「大広間?」


「国の式典にも使われる場所」


「……。」


「王族や有力貴族も大勢出席する予定よ」


受付嬢が、真剣な表情になる。


「これは、ただの結婚式じゃない」


「……。」


「国中が注目する、大貴族同士の婚姻よ」


「二週間……」


ザインが、もう一度呟く。


「ザイン君」


「ん?」


「まさかとは思うけど」


受付嬢が、ザインを見る。


「何かしようなんて考えてないでしょうね」


「……。」


「今日ので分かったでしょ?」


「うん」


ザインは、自分の手を見る。何度、剣を振った。何度、立ち上がった。でも、一度も届かなかった。


「今のあなたじゃ、何をしても同じ」


「……うん」


「それに、これは強いとか弱いとかだけの問題じゃない」


受付嬢が続ける。


「国が絡むほどの家同士の婚姻よ」


「……。」


「一介の冒険者が首を突っ込んで、どうにかできる話じゃない」


「分かってる」


「だったら――」


「だから」


ザインが、身体を起こす。


「ザインさん?」


ベッドから足を下ろす。


「ちょっと! 何してるの!」


「立つ」


「見れば分かるわよ!」


ザインが、ゆっくり立ち上がる。


「いっ……」


「ほら!」


「大丈夫」


「絶対大丈夫じゃないですよ!」


「二週間」


「……?」


ザインが、呟く。


「二週間あるんだよね」


受付嬢が、ザインを見る。


「……ザイン君」


「今の俺じゃ」


ザインは、拳を握る。


「あの人には勝てない」


「……。」


ノアも、何も言わなかった。ザイン自身が、一番よく分かっている。力。速さ。技術。何もかも、足りなかった。


「だから」


床に置かれていた、自分の剣を取る。


「強くなる」


「……二週間で?」


「うん」


「無茶よ」


「そうかも」


剣を、腰へ差す。


「でも」


ザインが、扉へ向かう。


「イリス」


足を止める。


「帰りたくないって言ってたから」


「……。」


「だったら」


ザインは、静かに言った。


「二週間後までに、迎えに行けるくらいにはならないと」


受付嬢も、ノアも、何も言えなかった。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


ついに明らかになったイリスの素性と、家を飛び出した理由。


そして、ザインの剣が初めて全く届かなかった相手――レオンハルト。


残された時間は二週間。


ここからザインにとって、大きな転機となる時間が始まります。


次話もよろしくお願いします!

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