内陸からの来襲
原子力空母大和戦闘情報センター(CIC)
大和のCICには、わずかな安堵の空気が流れていた。モニターには、台湾東部海岸で水陸機動師団が順調に上陸を進めている様子が映し出されていた。35式戦車が砂浜を力強く走り上がり、36式歩兵戦闘車が次々と橋頭堡を拡大している。
遠征打撃群の支援攻撃と、空母航空隊の制空支援が功を奏し、第一波上陸は計画よりやや早く進行していた。黒崎信一郎大将は、スクリーンを眺めながら小さく息を吐いた。星野瑞穂大佐も、隣でわずかに肩の力を抜いていた。しかし、その安堵は長く続かなかった。
突然、担当士官の緊張した声がCICに響いた。
「航空宇宙軍早期警戒管制機から緊急連絡!!
中華人民共和国内陸部から複数の機体が接近中です!!
高度1万2千、速度マッハ1.8、戦闘攻撃機と思われます!」
CICの空気が、一瞬で引き締まった。
別の担当士官が、即座に叫んだ。
「航空宇宙軍の衛星コンステレーションからの映像です!」
大型液晶モニターの表示が切り替わり、中国本土内陸部の空軍基地から大量の機体が離陸し、台湾方面に向かって飛来している様子が鮮明に映し出された。戦闘攻撃機の群れが、長い隊列を組んで東進している。
星野瑞穂大佐が、映像を凝視しながら分析した。
「沿岸部の基地の機体が疲弊したため、内陸部からわざわざ出撃させたのでしょうか……。
かなりの長距離飛行になります。」
黒崎信一郎大将は、静かに頷いた。
「そうだろう。基地の兵装が枯渇し、補給に追われている。この出撃は時間稼ぎの側面もある。
我々が上陸作戦に集中している隙を突いて、なんとか態勢を立て直そうとしている。」
彼は素早く判断を下した。
「大和空母打撃群と武蔵空母打撃群の総力をあげて迎撃を行う!信濃空母打撃群と大鳳空母打撃群が補給を終えて合流するまで、我々だけで守り抜く!!空母航空隊は台湾上陸支援に専念せよ。
人民解放軍空軍の迎撃は、艦艇だけで行う!」
黒崎大将の命令が下った瞬間、CICは一気に活気づいた。
士官たちが一斉に動き出し、各艦への指示が飛び交う。
リニアカノンの発射準備、SM-9A迎撃ミサイルの待機、5センチレーザー砲のチャージ音が響き始めた。
大和と武蔵の2個空母打撃群だけで、中国本土内陸部から飛来する大量の航空機を迎え撃つ——それは、極めて苛烈な防空戦を意味していた。
星野大佐が、黒崎大将の横で静かに言った。
「これが……我々のジレンマです。
4個空母打撃群を同時に前線に置けない以上、常に2個で戦わなければならない。」
黒崎大将は、モニターに映る中国機の群れを睨みつけながら、力強く答えた。
「それでも、守り抜く。
台湾の同胞を解放するまで……絶対に。」
大和CICは、再び激しい戦闘の渦へと飲み込まれようとしていた。




