容赦なき追撃
日本海軍連合艦隊は、再び容赦なく牙を剥いた。
黒崎信一郎大将の命令が、全艦に響き渡った。
「第二波攻撃開始。
空母艦載機は再出撃。
巡洋艦・駆逐艦はリニアカノンによる砲撃を継続せよ。」
まず、原子力空母大和級の飛行甲板が、再び炎を噴いた。
着艦し、急遽補給を受けた烈風2型と桜嵐が、次々と電磁カタパルトから射出される。
艦載機による第二波攻撃は、苛烈を極めていた。
黒崎司令官は「弾薬庫を全て空にせよ」という容赦のない命令を下していた。
これは、戦闘終了後に高速戦闘支援艦摩周級による補給を前提とした、文字通りの総力戦だった。
烈風2型と桜嵐の混合編隊は、低空を高速で突き進み、疾風極超音速空対艦ミサイルを一斉に放った。
その直後、水上艦艇が動き出した。
イージス巡洋艦長門級、イージス駆逐艦雪風級、ミサイル駆逐艦黒姫級が、一斉にリニアカノンを発射した。
155mm電磁加速改良型レールガンが、毎分12発の高速弾を吐き出す。
初速マッハ7.5という異常な速さのため、砲弾はほとんど即命中といえる精度で中国艦隊に突き刺さった。
第二次世界大戦以来の本格的な砲撃戦とは程遠い、現代の技術がもたらした一方的な殲滅戦だった。
人民解放軍海軍は、対処に追われた。
中国側は数こそ圧倒的だったが、艦隊防空の統合運用経験が浅く、混乱が拡大していた。
日本側の複合攻撃(航空攻撃+リニアカノン砲撃)は、中国の防空網を次々と突破した。
駆逐艦やフリゲートの艦橋や甲板上の構造物が、次々と大破・炎上していく。
その最中、大和のCICで黒崎信一郎大将が静かに命じた。
「全艦、通信回線を開け。
人民解放軍海軍全艦艇に対して、一方的な最後通牒を送る。」
数秒後、日本海軍連合艦隊の全艦から、暗号化された通信が人民解放軍海軍の全艦艇に向かって発信された。
大和のCICに座る黒崎大将の姿が、中国艦隊のモニターに映し出された。
彼は、冷徹な視線でカメラを見つめ、はっきりとした声で語りかけた。
「こちらは日本海軍連合艦隊大和空母打撃群司令官、黒崎信一郎大将である。
貴艦達には、既に対地対艦兼用巡航ミサイル『神風巡航ミサイル』がロックオンされている。
即座に撤退せよ。
さもなくば、一斉に発射する。
弾頭は通常にあらず。
繰り返す。
弾頭は通常にあらず。
貴艦達の、懸命なる判断を願う。」
通信は一方的に切られた。
その瞬間、人民解放軍海軍の艦隊は、凍りついた。
特に『弾頭は通常にあらず』という言葉が、すべての艦長と乗員に重くのしかかった。
神風巡航ミサイルの弾頭は、戦略級FAE多弾頭システム(燃料気化爆弾MIRV)——現実的に利用可能な大量破壊兵器だった。
一発が命中すれば、艦艇の内部を高熱と爆圧と酸素欠乏で焼き尽くし、乗員を瞬時に絶命させる恐ろしい兵器である。
中国艦隊のCICでは、将校たちが青ざめた顔で互いを見合わせた。
ある駆逐艦の艦長は、震える声で呟いた。
「……燃料気化爆弾……MIRV……?
本気で……そんなものを……?」
人民解放軍海軍は、完全に動きを止めた。
数では勝っていたはずの彼らは、今や、ただの標的と化していた。
一方、大和のCICでは、黒崎大将が静かに息を吐いた。
星野瑞穂大佐が、隣で小さく言った。
「これで……少しは、考え直す時間ができるはずです。」
日本海軍連合艦隊は、静かに、しかし確実に、次の行動を待っていた。
灰色の鋼鉄の龍は、まだ牙を完全に剥いていなかった。




