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極東の守護神〜日本再軍備〜  作者: 007


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聖域なきスパイ狩り

中央指揮所の空気が、再び少しだけ変わった。

ドアが静かに開き、一人の女性が入ってきた。

国家特務情報庁長官、藤原ふじわら みお

大野田喜美総理と同い年の52歳。

鋭い目と、静かな威圧感をまとった彼女は、指揮所に入るなり軽く頭を下げた。

「総理、お待たせしました。

中国諜報機関のスパイを取り締まる緊急命令を出しており、遅れました。」

大野田総理は、静かに頷いた。

「構いません、長官。

状況を教えてください。」

藤原長官は、指揮所の中央卓に近づきながら、淡々とした声で語り始めた。

「はい。

私ども国家特務情報庁は、台湾有事以降、我が国が『普通の国』になる過程で、最も大きな変革を遂げた機関の一つです。

特に、憲法改正と再軍備に伴うスパイ防止法の完全強化は、歴史的なものでした。」

彼女は少し間を置いて、過去を振り返るように続けた。

「台湾有事前に我が国は当時の中市早苗美総理が主導して、スパイ防止法を何とか成立させましたが、取り締まりや摘発は極めて緩やかでした。

しかし、2027年の台湾侵攻で我が国が本土にミサイルを受け、827名の死傷者を出した後、事態は一変しました。

憲法改正と再軍備が始まると同時に、国家情報局は『国家特務情報庁』へと大幅改編され、スパイ防止法は実効性のあるものへと生まれ変わりました。

それ以降、我が国は『聖域なきスパイ狩り』と呼ばれる大規模な摘発を敢行しました。

対象は与野党を問わず、政党・省庁官僚・マスコミ・教育機関・法曹界と、多岐に及びました。」

指揮所にいる全員が、静かに耳を傾けていた。

藤原長官は、淡々と、しかし生々しく事実を並べていった。

「政治家に対する摘発は、特に容赦ありませんでした。

与党である民自党からも複数の議員が逮捕され、党内で大きな衝撃が走りました。

野党に至っては、逮捕者総数が凄まじく、一部の政党は事実上消滅するほどの打撃を受けました。

省庁官僚のスパイ狩りも徹底的でした。

その副産物として、独立行政法人や天下り構造がほぼ廃止され、省庁のスリム化が急速に進みました。

多くの官僚が国外追放または実刑判決を受け、行政機関の体質が根本から変わりました。

マスコミへの影響も甚大でした。

スパイ狩りの対象となった新聞社や放送局は数十社に及び、廃刊・停波処分が相次ぎました。

その結果、電波オークション制度が導入され、放送免許も5年更新制となり、業界の体質改善が進みました。

教育機関と法曹界も例外ではありませんでした。

大学を中心に、廃校処分が下された学校は数百校に及びました。

弁護士事務所の廃業も続出し、裁判官・検察官に対しては思想調査が徹底的に行われました。

あまりにも過激な摘発に、世界中のリベラル派からは『人権侵害』『時代錯誤』という批判が殺到しました。

しかし、彼らの多くは、自分たちに火の粉が及ぶことを恐れ、批判は低調に終わりました。

ある意味で、『憲法違反だ』と騒ぎ立てる行為自体が、自分がスパイであることを自白しているようなものだったのです。」

藤原長官はそこで一旦言葉を切り、大野田総理を見た。

「これが、我が国が『普通の国』になった証です。

国民世論もスパイ狩りに賛成するばかりか、逆に遅すぎるとの批判しました。

そして聖域なきスパイ狩りにより、内部の腐敗と中国の影響力を大幅に排除した結果、私たちは今日、中国に対して最後通牒を発し、連合艦隊を出港させることができました。

大野田総理は、静かに目を細めた。

「ありがとう、長官。

あなたの庁が支えてくれたからこそ、私たちはここまで来られた。」

藤原澪長官は、軽く頭を下げた。

指揮所に、再び静かな緊張が戻った。

13年前の屈辱をバネに、日本は内部の敵をも徹底的に排除し、『普通の国』としてここまで歩んできた。

大野田総理は、モニターに映る連合艦隊の光点を見つめながら、心の中で静かに繰り返した。

——もう、誰にも裏切られない。

私たちは、自らの手で守る。

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