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一騎打ち

 


 自軍の歩兵達を左右に割り、両将軍とも自分の優位を見せつけるようにゆっくりと前線に馬を向け、魔王軍バッサムとダイナ国軍ハルダームによる一騎打ちが行われようとしていた。


 ちょうど半円ずつ両軍が両将軍の行方をじっとみている。この時ばかりは敵味方関係なく武器を置き、将軍達を邪魔しないように声援を送る。それが昔からのことわりである。



「死にゆく魔王軍の将軍に名乗る名などないが冥土の土産に教えてやろう。我はダイナ王国軍将軍 ハルダーム・ガラス、お主を地獄に送る者だ。」


 ハルダームも名乗りを上げた青銅色の鎧を身につけた男は馬から降りる。

 だがバッサムがそんな幼稚な挑発になるような馬鹿ではない。冷静に現状を把握する。


「何の真似だ」

「ふん!魔王軍はそんなこともわからんか。一騎打ちでもしようやバッサムとやらよ!」


 ハルダームは下馬しろと挑発をし、黒鎧の魔王軍将軍は相手の土俵でこそ倒し甲斐があるとみて、馬を降りた。「お前は離れておれ」と愛馬の首筋をさすりながら声をかけるとゆっくりと将軍に背を向け仲間の元に戻っていく。


「よかろう。自分の実力も弁えない将軍以上にうるさい存在はない」

「お前も名乗ったらどうだ今生最後の名乗りになるかも知れぬぞ」


「さて、それはどちらか」と小さく呟き、普段押さえ込んでいる威圧感を放出司した。その威圧感だけで一般兵レベルなら失禁するほどの圧力感じる。強さとは見た目だけではなく内面に秘めていると、言われている。


「魔王軍 第八軍将軍 黒曜(こくよう)のバッサム、貴様を地獄に送ってやろう」


 それだけしか言葉を発していないがこの場の空気を完全に自分の手中に収める。


「すごいオーラだ。だがオーラだけデカくても実力が物を言う世界」


 ハルダームは一瞬、その圧力に飲まれかけるが自分の背丈の半分ほどある大剣を抜き構える。

 だが一回でも腰が引けた者が戦線に復帰するのは難しい。


「いつでも来い、バッサム。おれは動かない。ーーうっ!「カランっ」」


 叫んだ瞬間、ハルダームの大剣が弾かれたように地面に落ちる。

 ハルダームが瞬きをする僅か一瞬、バッサムがコンマ0秒の世界を的確に突いて高速魔法で大剣を握っていた指と柄だけを正確に弾き裂いた。


「一つ忘れてた。俺は剣は使わない。」

「っ!……て、テメー!!騙まーー」

「騙したと言いたいのか」


 ハルダームに被せるようにバッサムは声に圧を乗せる。

「何を馬鹿な、別に俺が剣を使うとは一言たりとも言っていないぞ、貴様が勘違いしただけの話だ。」

「き、き、きききき、貴様ッ!」


「あぁ、もう一つ言い忘れておった。剣の腕もお前より上だ。ただ殲滅を目的とするこの戦場は魔法の方が扱いやすいから魔法を使うだけだ。そしてお前は俺の剣術を見せるほどの相手ではない」


「何だと!この野郎!殺してやるッ」

「威勢がいいガキだ。たかだか30年生きた人間が500年以上生きてる魔族に勝てるとでも、もし本当に勝てると思ってならば俺が出てこなくても勝てたな」


 大剣を杖代わりに起き上がり、大剣を引きずるように走り出したハルダームにバッサムの指先に展開された魔法陣が放たれる。


 激昂し怒りで我を忘れ、周りが見えなくなったハルダームは力任せに剣を大振りしバッサムの前に一直線に突っ込んでくるが……


「死ねッ!バッサム!ーーッ!……」


 視野が狭まった今のハルダームではバッサムが高速展開した魔法を避けることなどできず、バッサムの前に着くことなくバッサムの最速魔法が奴の心臓を1発で貫く。


「心臓を打たれてなお、生きているとは、だが先は長く無さそうだな」


 ハルダームは心臓に穴をあけられてもなお生きているが起き上がることはもう2度とない。


「お主、怒りで我を忘れ視野が狭まっている、これ以上の苦しみは意味がないだろう、苦しみを与えたところで反省などせぬしな」


 一騎打ちが終わりバッサムは愛馬を呼び寄せ、これ以上の苦しみに今はないと呟き再度小規模な魔法術式を展開させるとハルダームの血混じりの声が聞こえる。


「な。何故だ!クブュ、何故ここまで、これは極秘ではなかったのか!グライブ!!」


 人間軍将軍の1人が討ち取られる前に喚いた一言である。


「死ね」


 愛馬に跨り動く前にそう呟いた。


 彼はこのあと対峙していた魔王軍将軍黒曜(こくよう)のバッサムに首だけを残し魔法で消し飛ばされることとなる。



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