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撤退

 


「カイザン。この連合軍の実質的なトップか?それともこの戦場に出てきているのか……いずれにせよ、アレクザウラー報告する必要があるか」



『撤退だ!ハルダーム将軍が殿を務める!』


 先ほどハルダームの副官が発した撤退の命令が今になってようやくこの戦場に届くと目の前で将軍を失ったダイナ国軍の兵士達は伝令と目の前で見た光景の齟齬など耳に入らないのか武器をポロポロと落としていく。


「将軍」

「あぁ!ここでの戦は終わりだ!両軍のこれ以上の負傷者を出すことは許さん!」


 バッサムは拳を天高く突き上げ、一騎打ちが終わった事をこの場にいる全兵士達に目に見える形で宣言する。


「ハルダーム将軍の首は?」

「捨ておけ、俺は首に興味はない。正確なことは物がなくても立証される。この場にいる全員がこの一騎打ちを見届けた証人だ!」


 バッサム軍が一気に沸きたつ。


「監視の兵100を後ろから尾行させよう、ギザムの奴に伝えろ、敵の撤退を確認したら戻ってこいと」


 伝令兵が走り去ったのを見てバッサムは馬を自陣へ向ける。


「あやつ、力にさえ溺れずしっかり鍛錬を積んでいれば俺を退けられただろうに、勿体無い奴だ」

「将軍を退けられる?、あの者にそのような力が?」


 バッサムの独り言に副官が答える。


「あぁ、単純に剣の腕前だけであればだけどな、魔法込みなら俺が勝つ」

「将軍にそこまで言わせる実力者……ですか。周りの者があやつを正しい道は導いていれば、将軍の首も危なかったと……」


 ハルダームがしっかり鍛錬を積み、部下のことを信用していたらここに立っていたのがバッサムではなくハルダームだと想像してしまうと寒気が全身を襲う。だがバッサム将軍はそんな小さな事は気にしてない様子だ。


「そうとも言えるな」

「選択の違いがその先を分ける。タラレバに意味はありませんが、あの時、その時、ですね。」

「そうだ。だから決断を迫られた時には全力で悩み、そのあと後悔しないか何回も何回も考えなければならない。選択一つで未来は変わる。」


 大きくとも、小さくとも、決断をすれば世界は必ず変わる。たとえそれが見える世界だろうが見えない世界だろうが。自分でもわからないうちに。


 こうして戦場最右翼の魔王軍バッサム対ダイナ王国軍の戦いは開戦から1日もせずにダイナ王国軍将軍ハルダーム討死という形で決着が付き、ダイナ王国軍は前線からの撤退を選択することとなった。


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