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開戦初日

 

「ラキナ、あとは頼んだ」

「はい。お兄様、ご武運を」

「あぁ、ラキナ。くれぐれも戦場に遊びに来るなよ」


 魔王の妹ラキナはいつも通り魔王ラクヤに一言声をかけ、戦場に向かう兄を見送る。



 ⚫️



 人間領バグラム グラム平原 


 魔王領と接しながらもこの100年平和を保ってきたこの地は戦場となる。


 人間軍は宣戦布告なしに突如として魔王領最西の都市のアガッペ侵攻を目論み、総勢10万の連合国結成し、自軍の兵を自軍の将軍が率いる形で、侵略を開始した。



 だがしかし 『MTB』魔王軍諜報部隊は間者からの報告でこの情報を開戦の1週間前に捕捉し魔王軍の召集を軍部に進言していた。

 そのおかげで後手に回る事なく開戦に向けて準備を整えるとこが出来た。

 



 開戦初日 平原の左後方 黒曜(こくよう)のバッサム率いる魔王軍第八軍3万とダイナ国将軍ハルダーム・ガラスを将軍とした3万のほぼ同数の兵がが平原に並ぶ。



 戦場特有の砂煙が鎧に当たりカラカラと音を立てる。

 嵐の前の静かさといって間違いのない静かな戦場に生暖かい風が兵士達の間を駆け抜ける。



 開戦の狼煙が両軍の大本陣から上がり各将軍たちは動き出す。


 その中でも1番最初に動いたダイナ国軍5千は最初こそ魔王軍相手に優勢に戦っていたが開戦から半日ほどが経ち太陽が真上に登ってきた頃には両軍の攻め方がわかり始めたせいか膠着状態になっている。


 そして間抜けなことに連合国軍は魔王討伐だけを目標にしたせいで各国軍の連携なんて存在しない。


 ハルダーム将軍は膠着状態に陥った戦場に飽きていた。

 普通の将軍であれば1日や2日の膠着であればじっと待つ派が多いがハルダームはずっと動いてないとイライラが溜まる将軍であった。

 さっきからずっと貧乏ゆすりをし何回も茶を入れたコップが倒れている。


「膠着状態だな……」

「将軍、ここは待つことも必要かと」


 ハルダームは部下達の方を見る事なく土煙が上がる前線に視線を向けたまま低い圧のある声で呟く。


「うるさい。黙ってろ」


 ハルダームに対し進言した副官に対してもこの態度であり、すぐにでも内部から自滅しそうな雰囲気が本陣に蔓延している。


「であれば、将軍自ら敵将バッサムを討ち取れば宜しいかと。そうすれば将軍のストレスも減り、人員の損失も防げるかと」


 部下達の信用も信頼も失いかけ始め、いつの間にかハルダームの事を本気で守る者すらいなくなった。だがその事にハルダームは気づいていないのか……それとも気づいているが部下などうるさいハエほどの存在だと認識しているのか、部下達もまたわかっていなかった。

 がしかし自分にとって都合のいい発言がなされた事によってハルダームはその巨大を上げ、部下達を見下す。


「そうであるな、忘れておったな、俺自ら敵将を殺せばここでの戦は終わり魔王城は一番乗りができる!」

「……テーブルが……はぁ、」


 馬鹿力で叩きつけられたテーブルは粉々に粉砕され、副官の無言の批判がこの場の空気を示しているがハルダームは気にせず愛馬に乗り込んだ。


「俺は行く!見送りは不要だ」


 それだけ言うと馬の脇腹を蹴り前進を促す。

 ハルダームが前線に向かい馬を走り出させ、その巨体が見えなくなってくると副官は自分の部下達に指示を出す。


「お前達、撤退の準備だ。ハルダーム将軍はここで死ぬ。ダイナ王国軍はこれ以上の損失を避けるためハルダーム将軍が殿を務めると立候補してくれた、全軍に伝えよ!我々はこの戦線から離脱する」


 副官の発言に疑問を持つ部下がいないとこからハルダールの嫌われ具合が容易に推測されるほどハルダームに対して不信感があったと言う事だろう。



「副官。各国への説明は?」

「魔王の力は強大だったと伝えとけ、大本陣は撤退途中で合流するだろうその時に説明する。」

「は!」


 本陣に居る副官を含めた全員が撤退の準備に入り、撤退の情報は少ししてから戦場へ伝えられた。


 自軍から見捨てられたハルダームは本陣がそんなことになっているとは露知らず呑気に戦場ど真ん中に向かっていた。


 敵将の首を取り武功を挙げようと向かってきた魔王軍の雑魚をバッサバッサと切り裂き、ハルダームの青銅色の鎧は赤く染まり始め、調子に乗っていた頃バッサム本陣にハルダーム出現の情報が入り、ハルダームの狙いが読めたバッサムが出陣することにした。


「将軍自らですか?」

「あぁ、ハルダームは馬鹿だ」

「馬鹿?」


 突然、脈絡のない単語が出てきてバッサムの副官をヨウムのように復唱する。


「そうだあいつは思い込みが激しい性格だ。戦況が膠着状態になって、早速飽きたんだろうな、だから将軍自ら出てきたんだろ。普通であればこの程度の膠着じっと待つのが鉄則だ、まぁ鉄則に絡まれ過ぎると動けなくなるからみきわけが重要だがな」

「そ、そんな理由でですか?」


 副官はバッサムの説明に頷けないところがあるのか歯切れが悪い。

 飽きてきたら将軍自ら前線に出てきて戦況をひっくり返そうとするなど愚の骨頂である。副官はそう言いたいのであろう。


 知らない奴にとったら奴の動きは読めないが、動きは実なら単純なんだ『面白いところに向かう』ただそれだけだ。


 実力のある将軍であれば将軍自ら前線で部下達の士気向上を目的とした出陣はよくある。俺自身必要とあれば前線にだって出る。だがあいつは自分が楽しみたいからと言う馬鹿な男だ。将軍の器ではないが敵を倒した功績がある。奴は戦略上、仕方なく将軍に昇進させられた将軍だろう、本来であれば奴は武将というタイプより自由に暴れ回させた方がいいタイプだろ、それほどまでにダイナ王国は将軍不足なのか、殺処分の為に送り込まれたのか……」


 バッサムは表情を変えることなく淡々と立ち上がり副官に馬を用意しろと命じ、立ち上がり、愛刀山斬を持ち上げる。


「ご武運を将軍」


「あぁ、俺がいない間の指揮はお前に任せる。」

「は!任されました!」


 本陣にいる時はいつも着ている黒いマントを副官に任せ、愛馬の背中に跨る。部下達が左右に割れ馬が倒れるほどの花道が出来る。


 これが信頼されている将軍と信頼されず部下からも見捨てられた将軍の格の違いだ。そしてこの格の違いがこの先行われるであろう一騎打ちにもろ影響する事になるとに

 ハルダールは知らず

 バッサムは知っていた。



 黒曜のバッサム出陣。



 部下達に見送られ戦場ど真ん中向かったバッサム

 部下達に見捨てられ勝手に本陣撤退を選択されたハルダーム


 これだけで両者の求心力の違いが目に見えてわかるだろう。


 バッサム軍は将軍が戦場に入ったことにより兵達の士気が上がる一方ハルダームに至っては誰にも見送られる事なく兵達も死にたくないから歓迎しているせいかその声は暗い。だかハルダームは『がはは!俺の時代が到来したな!』と馬鹿なことをほざきながら意気揚々とバッサムが待つ戦場に馬を向かわす。




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