幕間:創造者たちの感嘆
「あーれはなんだー。」
「おい、モグラ現実を見ろ。というか、あいつらがガトリングくらい作っていることは知っていただろうに。」
「鷹よ、ミニガンレベルは流石に予想していなかったぞ。」
「…そうだな。」
シナリオ担当の店理編木卵と、プロデューサーの城湾英崇はレイド戦闘が予想以上に短期決戦だったことに頭を抱えていた。
2人とは打って変わって、技術班班長の蝮田秀明は特に変わった様子はなく、
「これはプレイヤーたちの装備が強かったというより、第4のボス攻略の時と比べて地形が奴らに有利だったということだろう。」
「言われてみればそうだけどよ、いくら何でもプレイヤー側がプラリザのギミックの理解が早すぎるだろう。」
木卵は顔を上げて、頭に浮かんでいた一番の疑問を述べた。
「それはそうだな。蝮、どうだと思うか。」
「俺はシステムが正常に動いていれば文句はないのだが。そうだな、どう考えても最初にあのトカゲと戦った猫のプレイヤーたちがきっかけだろう。」
「詰まんねー答えだな。」
蝮田秀明はその言葉に堪忍袋の緒が切れそうになった。
「そんなことは分かっているんだよ。問題はあの戦いから得た情報から最適解を導き出すのが早すぎるんだよ。」
「はあ、それじゃあ考えうることを1から検証していったんじゃないのか。それでたまたま試行回数が少ないうちに正解を引き当てたのじゃないか。」
技術班班長はキレつつも再度考え直して、意見を語った。
「それなら別にいいんだが、見ている感じ何か考えついてから試してみて一回で成功してるみたいんだよね。」
「音声は録音していないのか。」
班長は新たに疑問を呈した。
「してはいるけど、戦闘音で一切聞こえない。一応、技術班の奴に音声解析頼んではいるのだけど。どう、何か聞こえた。」
木卵が問いかけると、ヘッドホンを付けていた技術班員が頭を上げて答えた。
「頼まれていた方にプレイヤーの会話音は入っていませんでしたが、古樹の方に仕掛けていたカメラには会話が入っていました。」
「彼有能だね。」
木卵は思わず言葉を零した。
「うちの平の中では一番優秀だよ。てか、あいつを使わないで俺にしろよ。あいつらはあいつらで仕事があるのだから。」
秀明の言葉に木卵はNOを告げた。
「これも含めて彼らの仕事だろう。それに、これからはお前も忙しくなるのだから後進を荒療治でも鍛えておかなくてはだろう。」
「そうだな。まあ俺はいつでも忙しいが。」
「はいはい。すまないね、その音声こっちに回してもらえる。」
「はい。送信は終わっているので、読み込みが終わってから開いてくださいね。」
「あー、うん。」
思わぬ忠告に苦い思い出が脳に過る木卵であった。
それから、木卵はカメラで撮られた映像を見ながら、プレイヤー同士のチャット通話での会話に耳を傾けた。
「なるほど、やはり一発でプラリザのギミック対策の最適解を出していたというわけか。プレイヤー名は確か寂れた錆だったかな。プレイヤー対人大会個人戦の過去の覇者だな。前回は、あれ出ていないぞ。」
「予定が合わなかったのではないか。」
木卵の疑問に英崇が答える。
「いやねえ、彼のログイン履歴を遡ったのだけど、前回の試合の時間にもログインしていたんだよ。」
「何か別用事があったんじゃないのか。」
「まあ、そうなんだろうね。いやしかし、中々の廃人みたいだね、平日と休日のログイン時間があまり変わらないのが気にはなるけど。そうか、彼があの集団でのブレインだったか。」
「他の場所ではどうだったんだ。」
「他の3つの陣営のうち、2つは彼らの戦闘後急に巻き返し始めたから、恐らくは彼らから情報をもらったのだろう。後の1つは、とくに戦闘スタイルの変化が無い状態でプラリザを倒していったから、恐らくは普段の戦闘スタイルがうまくかみ合ったのだろう。流石に陣地を引いて効率よく戦っていた寂れた錆の集団よりは遅く戦闘を終えたけど。」
木卵はモニターを眺めながら、考察をつらつらと語った。
「で、これからはどうするんだ。一応、何種類かのモンスターはフィールドに徘徊させているが。」
「ん-、今回は初心者救済の面を強くしているイベントだからね、あれ以上強いやつだしたら、意味がないんだよね。プラリザも結構最初は渋られたしね。プロデューサー。」
木卵は英崇の方をじっと睨んだ。
「プロデューサーとしては最後まで反対した。だが、お前に根負けしたのと、第4の戦闘との比較で良しとした。」
「比較って何だ。」
秀明はすぐに疑問を口にした。
「第4での戦いは個の強さが秀でている敵との戦闘だっただろう。今回は群の強さが優れている敵との戦い、これを見比べてプレイヤーたちの戦いの向き不向きを調べたかったんだ。結果によってはこれから開催していくイベントの方向性を調整する必要があるからな。」
「まあ、それはこのゲームの本筋をプレイヤーたちが攻略するために必要な工程なのさ。」
プロデューサーはゲームの運営のため、シナリオ担当はあくまで自分の書いた通りにゲームが進行していくためにこの戦いが必要であったと答えた。
「…まあいい。俺はプログラマーだ。自分の生活の安定と、システムの正常な動作に異常ななければ十分だ。」
技術班班長は自分の仕事が問題なくこなせれば充分であった。
そしてその場にいる他の職員は、
「(なんで自己中心的なこの3人で運営がうまくいっているんだ。)」
と同時に思った。
一方3人は不気味な笑い方をしていた。
「そうだ、ボーナス設置しようぜ。そうすれば、上位のプレイヤーたちが潰し合って面白い戦い観れるだろ。」
「いいなそれ、蝮できるか。」
「はあ。そんな簡単に言うなよ、最終ピリオドにしか間に合わねえぞ。」
「十分十分。おっしゃとりあえず上位のプレイヤーの近くに用意していたモンスターを集中して設置だあ。」
何故かハイになっている3人であった。
そしてその様子を観た社員たちは、
「(鬼畜だ。)」
と一堂に思った。




