暗殺者と管理人
「それで、どうやってあの量の魔封石を手に入れたんだ。」
ハンドインデッドは対面に座るとさっき話していた話の続きを始めた。
「どうやっても何も、現在のところはあの火山地帯でしか採掘できないのは知っているだろう。」
「それは知っているさ。でも、魔封石の採掘に限らずあのエリアで一定時間を超えて滞在していると、レアエネミーのあいつが出てくるだろ。名前は確か、」
「ミネラリーン。通称鉱床の管理人。」
「そうそう、あの管理人。あいつ相当強かったんだと思うんだけど。」
「そうだな。奴の図体は俺たちプレイヤーとの差はあまりないが、体力、防御力、各種耐性が今まで戦ってきたどのボスよりも高い。加えて、奴自身リジェネスキルを保持しているからな。」
「で、あれだろ、血掟の兵団が第四開拓地解放前に40名の精鋭でレイド戦闘を行ったけど、削り切れずにジリ貧で負けったってやつ。それと相対してどうやってあんな数の魔封石を採掘できたんだよ。」
俺は自慢げに事の詳細を語ることにした。
「そもそも火山での目的は魔封石や鉱石の採掘、ましてや管理人の討伐なんかじゃなかったんだ。」
するとハンドインデッドは怪訝な表情を浮かべた。
「それだったら何のために火山エリアなんかに居たんだよ。」
「対人戦の練習だよ。」
「そんなの錆さんに手伝ってもらえばいいだろうに。」
「いやあ、これを始めたのはこのゲームを始めてまだ一ヶ月くらいの時えだからさ、自分の職業ボーナスにれるためにあまりプレイヤーが寄り付かない火山で練習していたんだ。」
「それでその相手があの管理人と。」
「そうそう。」
ハンドインデッドは呆れてため息をついた。
「で、どうやって管理人を倒したんだよ。」
「倒してないよ。」
「どういうことだ。」
「だから倒していないんだって、あいつが撤退するのまで延々と鬼ごっこしてたんだよ。」
ハンドインデッドは両手を顔に当てて考え始めた。
「じゃあ、お前は奴に攻撃を加えてないんだな。」
「ヘイトを稼ぐために適度に攻撃を加えてはいたけど、全くと言っていいほどダメージは追っていないと思う。俺もまだ初期の方の装備だったし。」
ハンドインデッドはさらに頭を抱えた。
「どういうことだ。」
「俺にもそれは分からん。」
「そうか。」
2人の間に数秒の沈黙が流れた。
「というわけで、俺は火山エリアに入って鉱石を採掘しながら一定時間そのエリアに対峙して、管理人と遭遇した。」
「うん。」
「そして、数時間の奴との鬼ごっこを経てあいつが撤退した後、採掘を再開しようと思ったら、奴の攻撃が命中した場所に魔封石がドロップしていたというわけ。」
ハンドインデッドは頷きながら、
「奴の攻撃が筋力の高いプレイヤーのつるはしによる採掘と同じ判定となった頭いうわけか。」
「それだけじゃなく、魔封石の採掘には特定の材料で作成されたつるはしが必要だろ。おそらくだが、あいつを構成している成分がその鉱物たちと同じなんだと思う。」
「その推測が正しいかどうかは置いておいて、お前がその量の魔封石を所持している仕組みがわかって良かったよ。」
ハンドインデッドは立ち上がった。
「今度一緒にやってみるか。」
ふと思い立って誘ってみた。ハンドインデッドのことだから、夜・ウィッチも一緒にって乗ってくるかと思ったが、
「やめておくよ。」
返事はNOであった。
「意外だな。」
「そりゃあ、40名のレイドでも勝てなかったあいてに、戦いを挑もうなんて思わないよ。それにこのイベントが終わったらやることが出来たしな。」
「何をやるんだ。」
するとハンドインデッドは俺を指さして、
「お前に勝つための修行だ。」
と言ってきた。
「俺とお前の対人成績ってお前の方がよいだろうに。」
俺と、ハンドインデッドが共通してはまっているこの分野ではあいつの方が軍配が上がっていたので、不思議に思った。
「そういうことじゃねえよ。」
ハンドインデッドは再びため息をついた。
「まあいいか。取り合えずお前のおかしな鬼ごっこには付き合えないってことだ。」
「了解。まあ、強くなったらまた戦おうぜ、個人戦の大会で。」
「ああ。ところで、話を戻すが管理人と寂れた錆さんではどっちがつよいとおもうか。」
ハンドインデッドは面倒くさい質問を突然ぶつけてきた。
「あーーー、強さの方向性が異なるから一概にどっちの方が強いとは言えないな。強いて言うなら、管理人の方は止めを刺すことが出来ない。対して寂れた錆さんは、逃げることが出来ないって感じだな。」
「それはどう違うんだ、要はどちらにも勝てないってことだろ。」
どうやら説明が大雑把すぎたらしい。
噛み砕いて説明するために、頭の中でハンドインデッドに説明するための文章を再考した。
「まず、管理人の場合は血掟の兵団と同じように、奴を倒すための決定打が無いということだ。だが、奴の攻撃速度は俺の反応と動きの速度で十分対応できて、なおかつ奴はその場での俺の行動に汰する攻撃しかしてこない。」
「ほうほう。」
自分でも早口化と思ったがどうにかハンドインデッドは理解しているようだ。
「一方で、寂れた錆さんの場合は、現在の俺の装備やスキルでも十分に致命症を与えることが出来るほどの耐久力だ。加えて、俺の最高速度は彼のそれを超えている。だけど、彼の場合は俺の行動を予測して全て捌いている。避ける、弾くなんでもいいがとりあえず攻撃が当たらない。そして、俺が逃げようとしても、逃げの動作に入る前にその動作を潰すための最適解を行う。仮に逃げの動作が成功しても、確実に逃走ルートをふさいでくる。というか、今の俺じゃあの人の本気に対して1分も持たない。」
語り終えると、喋っていなはずのハンドインデッドの方がげっそりしていた。
「なるほど、お前の中では寂れた錆さんの方が恐怖の対象だということがよくわかったよ。」
今の説明はそういう意味ではないのだが。
「とりあえずスカイがどうやってあの量の魔封石を手に入れたかはわかったよ。それを対人戦で使わないことも。」
もったいないとばかりの肩を竦めるハンドインデッドだった。
「どうせ対人戦に使わないのだったら、それを素材に装備でも作ってみたらどうだ。」
「その手があったか。」
「いや、それだけ持っていたら、思いついても良いだろ。」
対人沼に嵌りすぎて戦闘用アイテムとしか捉えてなかったなんて、言えるわけもなく、
「最近忙しかったからね、すっかり忘れていたよ。」
と誤魔化した。
「なんか口調変だぞ。」
「そうかい。」
「…、」
ハンドインデッドはこちらの顔を覗いてきた。
「まあいいか。明日にでも鍛冶屋にもっていけよ。」
その提案は今の俺にとっては気乗りしないものであった。
「人族の鍛冶屋はとりあえずいいかな。」
「でも、最初の町以外に鍛冶屋なんてあったか。鍛冶師クランを頼るわけでもないだろうに。」
「ドワーフ。」
「ああ。」
俺の返答にハンドインデッドも納得していた。
「奴らに頼めば、オリハルコンと合わせて良い装備を製作してくれるよ。多分。」
「設定的には外れの鍛冶師はいないだろ。問題はどうやってドワーフの国に入るかだが。」
「そろそろ一人くらい入国報告があってもいいんじゃないか。」
「それがないみたいなんだよ。」
第四開拓地の開放から一週間が経過していた。これは原作者に想定していた進行度より進みが遅いといわれている現状でも珍しいことであった。
ミネラリーン:プレイヤー間では鉱床の管理人と呼ばれている。運営的には比較的初期のエリアである火山の採掘エリアを一部のプレイヤーが独占しないように設置したエネミー。ゲーム設定では、長年火山に住み着いて鉱物を主食とすることで身体がの構成成分が9割以上鉱石になった粘性生物。残りの一割の粘性の成分でどうにか体を変形させている。人型の姿をしているのは生涯に一度だけ殺されかけたことがあり、その相手を強く記憶して模倣しているため。魔力がエネルギー源で、そのほとんどを体内の鉱石成分から補っている。しかし、鉱石から魔力を取り出せるまで鉱石を分解するには結構な熱量が必要なため、火山の熱を利用している。周辺の熱がなくなると、別の熱源を求めてさまよう。




