思考と試行
ナハトラップ攻略会議の掟
1、無闇に罠を起動しない
1、無闇に進まない
1、途中離脱は攻略会議で重罪である
歩き始めて数分、明らかに土の様子が切り替わっている場所に到着した。おそらくここからがあの3人が仕掛けた罠地帯であろう。人によってはこれのことを迷宮と呼称するプレイヤーもいる。
3人のキルゾーンは初見のプレイヤーが見ると特定の場所に罠が仕掛けられているように見える。しかし、実際にはそれはブラフであったり、中身のない落とし穴だったり、即死の罠だったりと様々である。
それだけならまだいいが、何も変哲のない地面には必ずと言っていいほど、地雷が存在する。その中身は爆破属性か、毒属性である。その二つの属性による連鎖反応を引き起こした時は、その付近は更地になる。もちろん即死である。
実は攻略会議の中では定石となっている攻略法が存在する。一つは魔力探知による罠の位置の特定。もう一つは反響定位での罠の位置の特定。この二つである。
「と、試してみたら見事に罠が発動したと。」
「いや、どうにか発動を抑えたよ。」
暇になったのかハンドインデッドが俺攻略を見ながらお茶を飲んでいた。
「おい、一口よこせ。」
「はいはい。」
ハンドインデッドからお茶を受け取ると一気に飲み干した。
「麦茶か。」
「応。」
「折角のゲームだろ、いつもとは違うものを飲めよ。」
「だからめったに飲まない麦茶を飲むんだろう。」
そうだった。こいつらいいとこの坊ちゃんだった。
「で、何しに来たんだ。」
「流石にヒントでもあげようとおもってな。」
「うそつけ。」
俺が鼻で笑いながら言うと。
「バレたか。」
ハンドインデッドは半笑いで答えた。
「まあ、ある程度対策法は分かった。」
「ほう、聞こうか。」
「まずいつもの攻略法を二つとも試した。」
「で、罠は無事に発動したと。」
「そうだ。だが、魔封石でどうにかしたさ。」
「まあた高いものをこんなことに使って。」
ハンドインデッドはため息をつきながら呆れていた。
「俺が潜って手に入れたんだ。別にいいだろ。」
「まあ、お前のやることに水は差さんよ。しかし、攻略組や対人勢が見たら憤死するだろうな。なんだって属性の組み合わせがものを言わせるこのゲームで、属性を生ませるための魔力を封じるアイテムなんだから。」
「なんだ、長い説明でこのアイテムの希少性を俺に感じろってか。」
「ご名答。」
「はあ、俺が戦闘、特に対人戦でこれを使ったらむそうゲームが始まるだろう。」
ハンドインデッドは怪訝な顔をしながら、
「何言ってんだよ。寝ぼけてんのか。」
と、妙に腹が立つ返答をしてきた。
「一発殴っていいか。」
「逆にお前を一発殴って、頭を直してやろうか。」
「はあ、俺には他のプレイヤーのほとんどが持っていない有利なものってなーんだ。」
「終わったら起こしてくれ。」
ハンドインデッドは寝転がっていた。とりあえず一発殴っておいた。
「いってえな。」
「まあ聞け。俺の職業専用特技の加速はメインとサブを含めて三重のボーナスがある。」
「あーはいはい。それで他のプレイヤーがどんなに素早さを特化させていても、素の素早さで勝てる奴はいない。そして魔封石を用いれば属性による強化も無効にすると。」
「イエス。」
「はあ。」
ハンドインデッドは退屈していた。
「理屈は分かったけどよ、問題はそのアイテムが毎回の戦闘で使えるほどの量を集めれないところだろ。てか、今いくつ持っているんだよ。」
俺はアイテムストレージを確認した。
「ざっと50。」
「ハア!?」
ハンドインデッドは驚愕した。
「なんでそんなに。あの血掟の兵団でも総数30程度だろう。個人が持つ量じゃないだろ。」
「ん-、説明が長くなるからこのイベントが終わってからでいいか。」
「待てねえよ。」
「じゃあこれの攻略が終わってから。」
「よし。さっさと終わらせろ。」
「お前も原因の一つだけどな。」
「それはいわないお約束だろ。」
ハンドインデッドは肩を竦めつつ、陣地に戻っていった。
その後魔力探知を展開しつつ、反響定位を行った。反響定位の振動で、罠が発動するのを魔封石で抑えつつ、罠の位置を少しずつ特定してトラップゾーンを進んでいった。半分を超えたところで、外側から攻略していたメンバーと合流した。そうしてどうにか今回も攻略できた。
結局トラップゾーンは絨毯攻撃で片づけた。3人は血の涙を流していた。
「しかし、よおく圧力探知型と魔力探知型の区別がついたねえ。」
片付けが終わって通せん坊を食らっていたプレイヤーたちが通り終わり休んでいると、ドールメーカーさんが感心したよと話しかけてきた。
「俺は魔力探知の練度が高くないので、魔力探知での識別はしていませんよ。」
「じゃあ、どうやっていつもの反響定位じゃ上手くはいかないようにしたんだけどねえ。」
「それであのアイテムですよ。」
「それは聞いたよお。」
彼女は腕を組みながら顔を覗き込んできた。正直怖い。
「音波に魔力を纏わせて、その魔力に反応して発動した罠をあれで抑えたんですよ。」
「それじゃあ、かなり時間がかかっただろう。あの石の効果範囲は5メートルしかないからね。しかも罠の発動に気が付いてもアイテム使用には間に合わないだろう。」
「そのための魔力探知ですよ。罠の発動直前に魔力の起こり、上手くは言えませんが波のようなものがあるので、魔力探知でそれを探知してアイテムを使ったのですよ。5メートル以内ならどうにか間に合うので。
「まさか、それを繰り返したのかい。全部。」
「ええ、10何回か。」
「うわあ。」
ドールメーカーさんはドン引きしていた。
「酷くないですか。」
「いや、あの罠の起動時間は3か4フレームくらいしかなかったと思うんだけどさあ。」
「タイミングは分かり切っていたので、敵の攻撃を同じフレーム数で避けるよりは楽でしたよ。」
「変態だね。」
ストレートに言われると、さすがに傷つく。そして、
「あんただけには言われたくないですね。」
「そうかねえ。」
ドールメーカーさんとの話を終えると、次はハンドインデッドが近づいてきた。
魔力探知型罠は踏むだけであったら発動はしません。




