名だたる者たちの困窮
「いやあうちの3人曰く、興が乗ったと。」
苦笑いしながら旅人さんと、ニャーサーさんに状況を説明する寂れた錆さんであった。
『そういうことか。』
『別にいいが、こっちもフレンド登録しているプレイヤーからチャットの通知が止まらないニャ。同盟なんだから状況だけでも説明しろと。』
「状況といってもねえ、うちの3人が過去最高難度のトラップゾーンが完成してしまった、だそうだよ。」
2人は同時にため息をついた。
『何が過去最高難度だ。呑気に言うなよ、お前たちが仕掛けた罠のせいで移動できないクランが出ているんだぞ。』
その言葉に3人はハッとしていた。
「?どういうことだい。」
『知らないのか。まあ俺たちも聞いた話だがお前たちが仕掛けたトラップエリアは丁度2つの河に挟まれているみたいになっているらしい。』
「それなら河を泳げばいいだろうに。』
『お前は現場を見ていないのかニャ。』
「見るわけないよ。罠を仕掛けたのは僕じゃないんだ。」
半分あきらめの声で寂れた錆さんは答えていた。
「で、2つの河はどうなっているのかい。」
『2つの河は幅が100メートル以上になっている。とてもじゃないが泳げないぞ。風属性を使っても魔力がもたん。』
「重力属性は。」
『使ったという話は聞いていないぞ。』
「そうかい。使ったという情報を知ったら教えてくれ。あと、河と河の間はどうなっているんだい。」
『あーそれか、大体200メートルらしいぞ。』
「200!?」
寂れた錆さんは3人の方を驚愕の表情を浮かべながら顔を向けた。視線の先の3人は明後日の方向を見ていた。
3人は寂れた錆さんの前に正座させられていた。
「はあ君たちねえ、限度ってものを考えようよ。」
「「「はい。」」」
「まあ一応クラン対抗戦だから良いけどさあ。」
「「「すみませんでした。」」」
「撤去できるか。」
「「「できません。」」」
「はあ、だってさ2人とも。」
『『はあ。』』
ため息をつくと通話先でクランメンバーに何か伝えているようであった。
『阿鼻叫喚なのだが。』
『こっちもニャ。』
「ハハハハハ。」
寂れた錆さんは再び苦笑いを浮かべた。
「仕方ないね。今回は攻略できそうにないみたいだから、爆破属性を使って誘爆して撤去するといいよ。」
『そうだな。』
『そうニャ。それが手っ取り早いニャ。』
嫌な予感がした。
その後2人との通話を終えた寂れた錆さんは近くの木陰に座り込んで、アイテムストレージから本を取り出して読み始めた。
「何もしないのですか。」
思わず聞いてしまった。
「まあね。罠を仕掛けたのは3人だけど、別に僕たちが困っているわけではない。これがあの2人が巻き込まれているならともかく、ただ単にうちと同盟を結んでいるから白羽の矢が立っていたみたいだし。顔すら知らない可能性があるプレイヤーが困っていても助ける気はないよ。」
「でも、フレンドから呼ばれていましたよね。」
「ああ、名前確認してみたけど、全員あそこの住人だったよ。」
「あそこ、ですか。」
「ピンと来ていないみたいだけど、まあ君にももうすぐ連絡が来るかもね。僕はあそこの住人ではないからね、今回はパスさせてもらうよ。状況が動いたら教えてくれ。」
「は、はあ。」
そう言って寂れた錆さんは読書を再開した。この状態の錆さんは意地でも動かないのでそっとその場を離れた。
数分後寂れた錆さんお言うとおりにチャットに通知が来た。
「なるほど、さっきの嫌な予感はこれだったのか。」
引っかかりを解消しながら、チャット欄を開くと、とあるグループチャットにメッセージが届いていた。それを見て錆さんの言っていた意味が理解できた。そしてそこには一言、
『招集。』
と書かれ、そのメッセージの主の現在位置も添付されていた。俺は一言、
「閉じ込められているので行けません。」
と返答した。他のメンバーも行けるや、行けない、脱落しましたなど多様な返事が返ってきた。
そのグループの名はナハトラップ攻略会議。このゲームの攻略掲示板の中で、うちのクランの3人が創ったトラップエリア、通称キルゾーンを攻略するために俺が立てたスレッドに集ったプレイヤーたちが造ったチャットグループである。そして、
『お前は気合で来い。』
と無茶なメッセージが返された。
「内側から攻略するので、勘弁してください。」
すると他のメンバーから同情と激励のメッセージが送られてきた。
「ちなみに過去最高難易度らしいです。」
このメッセージを皮切りにチャット内で会議が始まった。俺はチャット欄をそっと閉じて、位置情報の方向に向かった。
Q.結局絨毯攻撃で罠を破壊しないのか。
A.しようとしたプレイヤーたちはナハトラップ攻略会議のメンバーに止められました。強行しようとした者たちは容赦なく、脱落させられました。理不尽と言うと、勝った方が正義なんだよとどや顔で返答されたとのこと。そしてこの会議のメンバーはキャラ性能はともかく、プレイヤースキルが天井クラスが大半を占めているため、対人戦上位のプレイヤーでないともれなく返り討ちにあいます。




