第六回イベント side:ニャーサー
熱帯林に響く怒号。声を掛け合い巨大生物に攻撃を加える者達。このイベントが始まって最初の遭遇戦が勃発していた。
「ニャーリン、回復を頼む。各自、一旦攻撃を止めてバフを掛け直せ。ニャラハット、俺と一緒に時間を稼ぐぞ。」
指令を行っているのはこのクランの王であり、プレイヤー間で猫騎士王と呼ばれているニャーサーであった。
「了解した、王よ。」
ニャーサーに追随する純白の盾を持ったプレイヤーは通称白盾騎士と呼ばれているニャラハットであった。
巨大生物がニャーサーを狙い、それをニャーサーはどうにか捌いた。がら空きになった生物の横腹にニャラハットがシールドバッシュを決める。
「Ga!?」
生物の標的が純白の盾を持った騎士に切り替わった。
「G,Guaaaaa!!」
生物が叫び、白盾騎士の方を向き直したとき、何かが目を覆い、生物の眼球の損傷を与えた。
「GuGaaaaa!?」
生物の眼球を強襲したのはニャーサーとニャラハットが投げたそれぞれの両手剣と大盾であった。二人は投げた装備の代わりを取り出した。ニャラハットは変わらず大盾を装備したが、ニャーサーが装備したのは槍であった。
「総員、準備を終えたものから攻勢に加われ。ニャーリン、やつの足元に水を頼む。」
「全く君は人使いが荒いなあ。」
騎士たちの後方に待機しているぐんじょうのローブをまとったプレイヤーは愚痴をこぼした。そして両手に持った杖をそれぞれ起用に使いこなしながら、味方への回復にバフ、加えて敵へのデバフを行っていた。その者の名はニャ―リン、このニャイツ・オブ・ラウンズのサブリーダーである。
ニャ―リンが放った大粒の水の玉は敵の足元に着弾し、すでに湿気によりある程度ぬかるんでいた地面の状態をさらに悪化させた。そして敵は足を滑らせるもどうにか持ちこたえた。しかし、持ちこたえるために攻撃の手を緩めてしまった。
「各自、ツーマンセルで同じ部位に攻撃を加えろ。下手に属性攻撃を使うな。物理で良い、確実に敵にダメージを与えろ。」
「「「「「承知。」」」」
ニャーサーの号令とともに、騎士たちは迅速に2人組になり、首、前足、胴、後ろ脚、尾に攻撃を加えようと武器を構え、目標に接近した。
ツヨキモノタチダ。
スゴク。
ハヤク、オモク、タエマナイ。
トクニアノオオキナヤイバヲモツモノ、ヤツハツヨイ。
アノモノタチノナカデモットモワレニソンガイヲアタエテキタ。
シカシドウジニホカノモノエノシレイモ。
ヤツヲツブサネバ、ツブサネバ。
ドコダ、マエガミエナイ。
シニタクナイ、シニタクナイ、シニタクナイ!
騎士たちは各自、各部位に攻撃を加えた。攻撃を加えられた部位からダメージエフェクトがあふれ出し、巨大生物も呻き声を上げた。
「そのまま押し込め!」
「「「「「おう!」」」」」
10人の攻撃はさらに苛烈を極めた。その攻撃を援護するニャ―リン加えて猫騎士王にバフをかけた。そして猫騎士王は、
「ニャーサー、ジャスト5秒だ。」
「了解。」
回復を終えたニャーサーは騎士たちと、巨大生物に向かって駆け出した。駆けだすと同時に己にバフをかけ始めた。筋力強化、器用強化、素早さ強化、加えて会心強化。これらの強化を終えた時点で、3秒。
残り2秒。ニャーサーは地面を強く踏み込み、空中の跳び上がる。
残り1秒。上昇が止まり、下降が始まり、加速度的に下降速度が上昇していく。
残り0秒。敵の脳天に目掛けて両手剣を振りかざした。
衝撃により周辺の地面がえぐれ、騎士たちも吹き飛んだ。ニャーサーは巨大生物の生命活動を止め、先に目に刺していた両手剣を回収し頭から降りた。
「ご苦労だった諸君。…てかこれ普通にレイドだよね。」
他の11人は頷いた。
「まあいいや。さてと、とれるかわからないけど素材の剥ぎ取りでも行いますか。」
騎士たちが武器を直し、剥ぎ取り用のナイフを取り出して以外に向かった。以外の頭はつぶれてゲーム用の規制がなければ、R-18Gのスプラッタの現場になっていたほどの惨状であった。
12人が遺骸に近づき、ナイフを滑らせようとした瞬間、
「GAAAAAA!」
およそ生物から発せられてはいけない音が発せられた。それは熱帯林エリア全域に駆け巡り、眠っていたもの、彷徨っていたものの耳にも届いた。ニャイツ・オブ・ラウンズの面々が倒した巨大生物の同胞が声の発生源へと駆け出した。同胞の仇討のために。
この時、騎士たちの戦いは熱帯林エリアの一角で行われていた遭遇戦から、周辺クランを巻き込むレイドへと変貌した。
一方、寂れた錆と放浪者の旅団の精鋭一行は大樹の上からニャイツ・オブ・ラウンズの戦いを観察していた。
「あいつ落下星習得したんだな。」
「そうだね。」
「で、どうする。各地からヤバいのが集まって気いるけど。」
「レイドだね。」
「そうだな。」
「ちょっと待って。」
そう言うと、寂れた錆はUIからクランメンバーに連絡をした。直後に信号弾を打ち上げた。
連絡を受けたスカイボーダーたちは、信号弾を目標に熱帯林エリアを進み始めた。
「さあ、楽しませてくれよ、プレイヤーども。」




