第六回イベント side旅人
熱帯林エリアの一角に30名ほどの集団が陣地を特に構えるというわけでもなく、ひたすら周りの木々を切り倒していた。
「団長、なんで俺ら違法伐採しているんですか。」
集団の中の1人が痺れを切らしてその集団の長に問いかける。
「うるせえな。組んでた拠点がどこの誰かに破壊されてたんだ。口よりも手を動かせ。てか俺らが密猟者みたいに言うなよ。どうせ4時間経ったらもとに戻るんだから。」
返答を返したのはクラン名放浪者の旅団のクランリーダー旅人であった。
「しかしよう、誰だよ俺らの拠点ぶっ壊していったのは。」
「あの壊され方からして、巨大なエネミーが高い速度で通ったんじゃないんですか。破片が広範囲に散らばっていましたし。」
旅人の愚痴の相手に返答したのはさっきの人物と異なり、このクランの副リーダーである流浪者であった。
「しかしルーよ、壊された拠点は俺らが一か月かけて造り上げた傑作だぞ。耐久性もかなり高かったし、あれを壊せるほどのエネミーを俺はあの付近で見たことないぞ。」
そう言いつつ、旅人は樹木を伐り倒していた。
「僕も知りませんよ。でもこのゲームで未発見のエネミーが急に現れるなんて別に珍しいことでもないでしょうに。」
「そうだけどよ。わざわざ人避けに獣除けのお香やら、結界やらを何重にも設置していたのによ。それを無視してあの建物に突っ込むほどフィールドエネミーもバカじゃないだろ。」
「ですね。」
「だな。」
「「ハハハハハ。」」
とある高地の山村にて。
「…チッ。」
「どうしたんだい急に舌打ちなんかして。発情期かい?」
「嚙み千切るわよ。私たちにそんな生物的な機能はないわよ。」
青年は家の庭で瞑想をしていた。黒い獣は横で寝転がっていた。
「じゃあどうしたんだい。」
「いや、何か無性にイラっときて。」
「この間通り過ぎた建物の持ち主が噂しているんじゃないかい、あんなに獣除けのお香や結界が仕掛けてあった場所に突っ込むなんてよほどのバカなんじゃないかって。」
青年は瞑想を一時止めて肩を竦めた。
「本気で噛むわよ。」
黒い獣は白く鋭い犬歯を見せて唸った。
「はは、やめてくれよ。医療部の者たちにまた怒られるのは嫌なんだよ。」
「じゃあ、私に嚙まれないようにすることね。」
「君もあまがみはやめてくれよ。」
「…、ふん。」
「はあ。」
会話を終えると、再び瞑想に入った青年であった。
「あの団長。」
「どうした。」
「このノルマを終えたので、あの大樹を見に行ってもいいですか。」
樹木を伐採し終えたクランメンバーの何人かが旅人に話しかけてきた。
「ああ別に構わないが、そういえばお前たちは考察勢だったな。」
「はい。」
「そうだな。おいルー、お前と前線参加組の何人かを連れてこいつらに付いてやってくれ。」
「別にいいですよ。こっちもちょうど終えましたし。」
伐採を終えた流浪者は伐採に使用していた刃物をストレージに直していた。
「しかし、僕以外の前線組はまだ終えていないやつが多いですよ。あいつら筋力ばっかり上げて、器用を上げていないからうまく樹木を切り倒せないんですよ。」
「ああ?」
旅人が周りを見渡すと、軽装のプレイヤーに比べて、装備の整ったプレイヤーの方が伐採に手間取っていた。
「このクラン、脳筋が多いもんな。」
「運用があなたをの援護狙撃を火力の主軸としてますからね。」
「うーん、お前たちもうちょっと待ってくれるか。」
考察勢の何人かは顔を合わせて、お互いにうなずき、
「大丈夫ですよ。まだイベントが始まって1時間しかたっていないので、そこまで急ぐ必要もありませんし。」
「すまんな。お前らを援護しながら戦闘を行うとなると、伐採を終えた前線組の数に俺を足しても、あと一人は欲しいんだよな。」
どうしたもんかと、旅人は腕を組んだ。
「まあ、仕方ないでしょ。素直に待った方がいいですよ。焦って変に強いエネミーに遭遇しても面倒ですし。」
「そうだな。」
しかし、次の瞬間クランの魔法職から急な報告があった。
「団長、ここへ急速に接近してくる熱源があります!」
その言葉を聞くとすぐさま武器を構える放浪者の旅団のメンバーたちであった。
「よし、前衛職、防御態勢で接敵に備えろ。魔法職、前衛職絵のバフの後に、攻撃準備。後衛職、各自散らばって各状態異常の準備だ。GO!!」
旅人の言葉で各クランメンバーは配置についた。
「接敵まで、5、4、3、2、1、」
掛け声が終わると同時に、木々の陰から出てきたのは、
「なーんでお前なんだよ。エセラ〇ボー。」
タンクトップを着た男であった。そして男の返答は、
「コマ〇ドーと言ってくれ、戦友。」
「はあ、お前ら状況終了だ。」
旅人がそう言うと、配置についていたメンバーは木の伐採に戻っていった。
「いやあ、君たちだったか旅人。一応気配には気が付いていたが、人数的に中規模だろうから抜けれると思ったので、そのまま突っ込んでみたんだよ。」
笑いながら、経緯を説明する寂れた錆であった。
「そうか、ひとまず戦うつもりで俺たちに突っ込んできたわけじゃないと。」
「そうそう、ま君たちじゃなくても戦うつもりじゃなかったけどね。それで、君たちはなんで環境破壊してるのさ。運営への嫌がらせかい。」
「違うわ。昨日俺らが戦っていた裏でなぜか拠点が壊されていたんで、新しい建物を造るための資材を集めてんだよ。」
寂れた錆は頷きつつも首を傾げた。
「なぜかって、誰も拠点にいなかったのかい。」
「そのときは、全員イベントの準備を終えてあなた達の戦いを見に行っていたのですよ。全員で。」
寂れた錆は声の主の方を向いた。
「君は流浪者君だったっけ。」
「はい、いつもうちの団長がお世話になっています。」
「いやあ、ホントだよ。」
「おい。」
「冗談は置いといて、そんなにあの試合って注目度高かったのか。まあ、わざとそうしたつもりではあったけど。」
旅人の置くなよという突っ込みを無視して寂れた錆は続けた。
「そうですね。実際に行われませんでしたが、接近対人戦トップのプレイヤーの試合が見れるかもしれないということで、少なくともうちのメンバーは注目していましたよ。」
「そ、そうかい。」
「照れるなよ、気持ち悪い。」
旅人は少し不機嫌になった。
「あなたの試合は見れませんでしたが、うちの団長の負け姿という、最高のネタが見れたので良かったですよ。スカイボーダー君に関しては、煙幕でよくわからなかったですが。」
旅人の静止を無視して流浪者は続けた。
「確かに彼の戦いはね、僕も良く観察できなかったよ。まあ、魔力探知で見る限りネタは割れているんだけど。」
「そうなんですか、ぜひ教えてください。」
「いや、駄目だよ。一応、僕たちのクランは対人専門で通してるし。」
「そ、そうですよねえ。」
流浪者はかなり落ち込んでいた。
「ところでよ錆。」
「ん?」
「お前は何のためにこのエリアを爆走していたんだ。」
「ああ、まだ言っていなかったね。」
寂れた錆は軽く目的を説明した。
「それならちょうどいいな。」
「そうですね。」
「何がだい?」
「それがよ、」
旅人もこれからやろうとしていたことを説明した。
「なるほど。いいよ、僕も同行するよ。君たちと行った方が安全だし。」
「ありがとうございます。」
「よし、お前らアレに向かうぞ。」
さっきまで暇を持て余していた面々はすぐさま出発の準備を整え、旅人、流浪者、寂れた錆に加えて数名の急造チームはエリア中央の大樹へと向かった。
「そういや、旅人が情けなく負けた瞬間の写真居る。」
「「「「ぜひお願いします!」」」」
前線組は元気な返事をした。
「お前ら今から脱落させてやろうか。」
流浪者
放浪者の旅団副リーダー
メインジョブ:賢者
サブジョブ:戦略家、妨害者




