暗殺者と傭兵。
旅人が負けて客席がどよめく中、応援席の3人はそれぞれ施行に耽っていた。狩人たちの長である1人はあの透過ギミックの攻略法を、獣の騎士たちの長である1人は希少な素材を分けることへの損失を、狩人であり暗殺者の称号を持つ1人はあの黒コートの男に勝つための道筋を考えていた。
「おーいスカイ君。もう君の出番だよ。」
寂れた錆さんの声で思考の海から引きずり出された。
「すみません。考え込んでました。」
「彼の持つ武器の攻略法をかい?」
「いえ、奴自身に勝つための道筋を。」
寂れた錆さんは俺の言葉に笑みで返し、
「それは楽しみだね。」
と言ってきた。
「それじゃあ、いってきます。」
「行ってらっしゃい。」
「お前たち、仲がいいな。」
「口調崩れてるぜ。猫助。」
「うるせえ、お前もだろ薄ら笑い野郎。」
スカイウォーカーが居なくなった瞬間に口調を崩して話し出す2人。
「あいつはこのゲームでの俺の弟子みたいなもんだからよ。」
「お前がゲームとはいえ、弟子を持つとはなあ。人生ってわからねえもんだな。」
「そうだな。このゲームでのことも俺たちとは最初描いていたものとは大分異なっているからな。」
「ああ。最初は3人でクラン創ろうとしてたが、旅人は排除派との対立勢の筆頭になってたし、俺は俺で楽しんでいた獣人騎士のロールプレイがガチの奴らに見つかってまさかそいつらの頭に据えられちまったからな。」
「半分はお前の願望だったろ。」
「まあな。」
口調を崩した猫の騎士王は申し訳なさそうに返事をした。
「気にすんなよ。その分俺がクランを創るって言ったときはお前ら2人はすぐにクランメンバーを説得して俺たちと同盟を組んでくれたじゃねえか。あれでチャラにしたかったんだろ。俺からしたら、とてもありがたいことだったんだ。もう気にするなよ。」
「ありがとな。」
「やめろよ、お前に素直に感謝されるとなんだかむず痒いんだからよ。てか、試合観ようぜもう始まるみたいだしよ。」
「ああ、そうだな。」
束の間、昔の悪友に戻った二人は楽しそうに弟子又は後輩の姿を見送った。
俺がステージに着くと黒コートの男は回復薬を飲んで傷を旅人さんとの戦闘で出来た傷を癒していた。
「なんだ意外とダメージ負ってるんだ。」
「意外ですか?」
薬を飲み終えた男からは俺以上に驚いた様子の声が聞こえた。
「透過を攻略されて攻撃をもろに食らった割には余裕があったからさ。そのコート脱いだら?動きにくいでしょ。」
「ああ、気づいていましたか。」
そう言うと、男はコートを脱ぎ捨てた。中は純黒の軍服であった。
「それが正装か?」
「まあ、そんなものです。普段は実力を確かめてから見せるのですが、あなたは彼以上に強いでしょうし。」
あー、なるほど旅人さんへの印象ってそんな感じなんだ。
「お前かなり勘違いしてるけど、戦い方次第じゃ俺は旅人さんに完全にやり込められることだってあるからな。」
「ふむ。続けてください。」
「近距離のヨーイドンと、ゲリラ戦では俺が圧勝だけど、遠距離のステルス戦では完全にあっちが上だ。多分今でも見つけられずに俺は負けるよ。」
「なるほど。つまりさっきの戦いは彼の土俵ではなかったと。」
「確かに真剣勝負で得意も不得意も関係ないが、逆にその真剣勝負で本人の実力が完全に量れる訳ではない。まあ、あくまでも俺の自論なわけだが。」
男は腕を組みなるほどと頷いていた。
「一理ありますね。とまりあなたは強いけどその強さは限った分野の話だと。」
「そうだ。」
「ふむ。とりあえず戦いますか。」
「そうだな。あと、1つ聞いてもいいか?」
「なんでしょうか。」
「お前の名前は?」
「あーはいはい、まあ立場上簡単に名前は明かせないので、今は傭兵とでも呼んでください。」
「じゃあ洋平さん。」
「ん?」
「ん?」
何か致命的なすれ違いを起こした気がしないでもない。
「まあいいや。始めましょう。」
「ええ。」
こうして衆人環視の中、暗殺者と傭兵の真剣勝負が始まった。
ちなみに条件次第では旅人とスカイボーダーの両方を、完封してしまうのが寂れた錆です。




