作戦会議・続
積みあがった小説を読もうとしてますが、中々読み進めることが出来ません。
「その排除派のアジトがこの街の西側の森の洞窟にあるそうです。」
「意外だニャ。」
俺も同じ感想を思った。
「どうしてでしょうか?」
「排除派によるプレイヤーへの攻撃は、最近ではクエスト帰りの物資が不足しているところと聞いていたのでな、前線のある東側にあるのかと思っていたニャ。ところで旅団は調べていなかったのかニャ。」
旅人さんは肩をすくめた。
「当時はともかく、最近は襲撃されたところをそのまま返り討ちにしているから、装備を取られるという事があまりなくてよ、まったくやってこなかったさ。あと基本ソロプレイなんで、素材集めに時間がかかって調査どころじゃないんでね。」
「まあ、2人とも。それでは、そのアジトに襲撃を掛けるという事でいいかな。」
険悪なのかよくわからない2人のやり取りの間に入った寂れた錆さんが問いかけた。
「我は別にいいニャ。」
ニャーサーさんは承諾してくれた。一方の旅人さんはというと、
「それはだめだろう。」
「え、なぜでしょうか。」
丁寧な口調が崩れかけるほど局長は動揺した。
「ああいう手合いは表立って動いていないときは大体こちらが仕掛けてくるのを待っている。そしてこちらが攻撃した途端に現地人にプレイヤーが無抵抗な自分たちに攻撃してきたなどと流布するに決まっている。」
「じゃ、じゃあどうすれば。」
「さきにヴェニスを叩けばいいだろう。そうすれば、自ずとレッドギルドの奴らも出てくるよ。」
「なぜです?」
思わずつぶやいてしまった。
「考えてもみろ。排除派の奴らがその対象のやつらとてを組んでいるのかを。」
「傭兵ですか。」
寂れた錆さんは考え付いたようだが、その二文字ではわからない。どういうことだろうか。
「そうだ。まあ、あくまで推測だがヴェニスは金で奴らを雇ってこの薬品ギルドの関係者を脅す又は、いざというときに襲わせる役をやらせるのだろう。そして、レッドギルドの奴らは雇い主が潰されては儲けが出なくなるから結果としてごえいをおこなわなくてはいけない。だからヴェニスを潰そうとすれば、奴らも出てくるってわけ。」
俺含めて四人はなるほどと納得した。
「しかし、どうやって両方をおびき出すのですか。」
「そこはな、狩りバカどもの特権を使うんだよ。」
特権には心当たりがあるが、狩りバカといわれる覚えはなかった。
「なるほど、強制戦闘権ですか。」
寂れた錆さんは特に気にする様子もなく、話をつづけた。
「ああ、あれは本来逃走の可能性があるレア敵との戦闘を確実に行うためのものだが、その対象はプレイヤーにも適応される。それを対クラン戦で使用したら少なくともヴェニスの奴らは俺たちとの戦闘を行わなければならない。」
「じゃあ、まずはクラン戦をあちらに申し込みますね。」
そう言って彼はアイテム「挑戦状」を取り出した。
「待て。」
「どうしましたか。」
「俺も連名しよう。俺のクランからは俺だけの参加となるが、上位クランが名を連ねてクラン戦を申し込むんだ他のプレイヤーも注目するだろう。」
「なるほど、この話題を多くの者に知ってもらうという事ですか。いや待てよ、まさか多くの人数巻き込んで戦う相手を増やしたいだけでは?」
「そんなことはない。」
「((((絶対嘘だ。))))」
四人で目を合わせた。
「はあ、仕方ないニャ。我々のクランも連盟しよう。しかし、参加者は我1人になるぞ。」
「ありがとうございます。」
話がまとまり、3人の名が書かれた挑戦状がヴェニスのクランハウスに送られた。
「しかし、この戦いでこの件が片付くのでしょうか。」
挑戦状を送った後に局長が恐る恐る聞いてきた。
「まあ、クラン戦はあくまでヴェニスと排除派のおこなっていることを広げることが目的ですからね。」
「俺としては、ここで徹底的に潰しておくことであいつらじゃ俺らには勝てないという印象を植え付けておきたいんだよな。」
「我としても、ここの高品質の薬品には世話になっているのでなここに手を出す奴には容赦はしないつもりニャ。」
「はあ、それはありがたいのですが、今回が初めてですよね、プレイヤーがギルドを襲おうとするなんて。」
確かにそうだ。これまでは排除派のギルドがプレイヤーに対して攻撃してきたことはあったが、その逆は反撃以外で行われることはなかった。
「たしかに、何か変化が起こっていることは否定できませんね。」
寂れた錆さんが発言した後に、俺と各クランの長は頷いた。
「ひとまず、このことの考察は奴らとの戦いが終わってからにしましょう。」
「はい。」
「了解だニャ。」
「分かった。」
そうして会議はお開きになった。
クランハウスに戻ると、寂れた錆さんは俺に質問を投げかけてきた。
「なあ君は今回の変化についてどう考えるかい?」
「そうですね、単純に第四未開拓地、今は第四開拓地になった場所の開放によって、このゲームのシナリオが進んだと思うんですけど。」
「けど?」
「錆さんは前に時間経過で進行してしまうクエストがあったのを覚えていますか?」
「ああ、それなら覚えているよ。ユニークの中でも最も発生させやすいアイアンだったかな。そのクエスト自体の難易度は簡単だったし、僕もすぐにクリアしたんだけど、期間限定か時限式のクエストを受注した半分近くのプレイヤーがクエストのシナリオ進行が不可能になった事件だったよね。」
「はい。荒れるに荒れたので公式が緊急で生放送を行った事件です。その時にシナリオライターが出てきて、すべて1人で書いてることが判明してそれも話題になりましたよね。」
寂れた錆さんは思い出しながらうなずいた。
「そうそう。その直後にこのゲームの舞台は異世界として創っているから時間で物語が進んでいくのは当たり前だとといってさらに荒れたよね。」
「はい。その後に緊急メンテはいって、サ終かと騒がれましたよね。」
「そうだね。その時のプレイヤー人口は明らかに減っていたからね。」
2人で懐かしんでいた。ちなみにこれは俺がこのゲームを始めた直後のことだったりする。
「今回だけの特別処置という事がアナウンスされて、あのクエストが復刻されて、人口が少し戻ってきたよね。もちろんそれも時限式だったんだけど。まあそれからは時限式クエストにはすべて残り時間が表示されるようになったから、起こって良かったといわれているよね。で、そのことと今回の異変に何が関係あるんだい。」
脱線しかけていた話を彼は強引に戻した。
「結論から言うと、この世界のシナリオも時間とともに進んでいる考えれるんですよ。」
「ほうほう、続けて。」
「要はソシャゲや、MMORPGではありえなかったルート分岐がこのゲームでは起こっているんじゃないかと思うんですよ。」
「もしかして現実世界で異なる出来事が同時進行で起こってそれによって情勢が変わっていくという事を、このゲームで再現しているという事かい?それも一人の人間が書いたシナリオで?」
「はい。」
彼は疑いの目を向けつつも、完全に否定している様子はなかった。
「まあ、シナリオライターがアレだしな。」
「そうですね。」
そうこのゲームのシナリオライターはかつて長編の小説シリーズを同時に10本も抱えて各シリーズの新刊を必ず同じタイミングで発売していたことがある。
「しかも、伏線や他のシリーズとのつながりを仄めかす文書が絶妙だって評判がすごかったもんな。」
この世界の言わば創造神とも呼べる人物の天才・変態加減に頭を悩ませながら、このゲームの考察を行う2人であった。そしてそのとき2人は公式から突如全プレイヤーあてに送られてきたお知らせに驚き、目を合わせた。そこには、第二回公式生放送の予告が書いてあった。
店理編 木卵:カラクション創立メンバー。サンクチュアリ・リメインズの唯一のシナリオライター。かつては世界一著作物が売れた作家として世界的人気のある人物であった。数年前に自身が書いていた長編の小説シリーズを完結させてからは音沙汰がなく、ファンからは引退が囁かれていたが二年前にこのゲームにシナリオ担当として参加すると判明した時に、ファンの間ではお祭り騒ぎになった。ちなみに現在のゲームのプレイヤーでこの人物のファンの割合は、半分以上である。まごうことなき天才であり、変人である。ちなみにこのゲームのプログラムの責任者とはこのゲームについてかなり衝突しており、これによってゲームの発売は半年遅れてしまった。




