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人生100年時代だっていっただろうが! 〜母という異世界生物観察記録〜  作者: 目立拓奶


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第84話 看護師の推し

「あぁ、あの……えっと……」


私は言葉に詰まった。


どうしよう。


このままでは、あの黄色い包みの正体を追及されてしまう。


何とかして話題を変えなければ。


「あっ、佐藤さん! 佐藤さんって、ひょっとして……推しのアイドルとかいるんですか?」


「えっ!? わ、わかります!?」


「わかりますよー! 誰なんですか?」


「雪男ですー! ピンクの……」


「あっ、わかりますよ! 佐久前くんですよね!」


「えっ、そうです! そうです!」


よし。


話題が変わった。


母は置き去りになっている。


そのまま、私は佐藤さんとの会話を続けた。


「お母さんは、何か好きな人とかいるの?」


佐藤さんが母に尋ねた。


「男性アイドルはあんまり興味がなくて、ノンノンの桃井ちゃんが好きだったなー」


私と佐藤さんは、思わず目を見合わせた。


……え?


今、なんて?


少し鳥肌が立った。


「あの……その人、今話していた私の推しのお母さんなんですよ……」


「えーーー!! 桃井ちゃん、お母さんになったの!?」


そこかー。そこなのかー。


そりゃあ、60代だったら子どもがいてもおかしくないだろう。


私と佐藤さんは、もう一度顔を見合わせた。


「すごい奇跡的ですね!」


母は感動している。


うん。


奇跡的ではあるけれども。


そのとき、点滴のあたりから音が鳴った。


ピーッ、ピーッ。


何か異常を知らせるような音だ。


「なんだ、これ?」


「ちょっと見てみますね」


佐藤さんが点滴を確認する。


「……あ、気泡が入ってますね。大丈夫です。もうほとんど終わってますし……」


両方の意味で一安心だ。


「あっ、佐藤さん引き止めちゃってごめんなさい!またお願いします!」


半ば強引に話を終わらせて、看護師さんは推しの話ができたなんだかホクホクした顔をしていた。


よかった…。あの箱は危険物だ。なるべく視界に入らない場所に移動させなければならない。


自分で買ってきた大人のおもちゃがここまで厄介な代物だとは思いもしなかった。


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